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アツいココロのナいボクら  作者: 東野 千介
第3章 防鬼庁
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036 法具

 「つーわけで俺は法具を出したってわけよ」


 熱王人は自分の中学校で取り巻き連中を集めて『鬼払い』の自慢していた。


 「それで、どうなったんですか?」


 興味津々で『鬼殺し』の話をきこうとしてくるクラスメイトに


 「おっと、これ以上は言えねえなあ。一応、機密事項だからな」


 熱王人はうまく胡麻化しているが、実際にはこれ以上は何も言う事がないのが実情なのだ。


 何しろ熱王人の法具の制御レべルは『非戦闘時に法具を出し続ける事ができる』の第一段階だ。戦闘に加わるなどまだまだ先の話なのだ。戦闘行動などの余計な動きをすればすぐに集中が切れて、法具を維持できないのが今の熱王人なのだ。


 そのため『鬼払い』の任務に同行していても、『鬼がいる状況でも集中を切らさない練習のため』に法具を出すことは許可されているだけで未だに戦闘には参加できていないのだ。


 肝心なところがきけないクラスメイト達は当然不満の声を上げるが、それを黙らせるために熱王人は自分の子分の男子に目くばせをする。


 目くばせに気付いた子分は用意していた質問をさも今思いついたかのようにする。


 「そう言えばあの優等生はなにやってんですか?あいつも防鬼庁にいるんでしょう?」


 「ああ、あいつは…」


 熱王人は意味ありげに離れた場所にいる宗次の方を見やると、


 「法具が出せないから雑用ばっかりやってるよ。まあ仕方ないよなあ。『法具』が出せないんだから」


 「ええっっ?防鬼庁って『法具』が出せなくても入れるんですか?それって俺たちと同じ普通の人間って事ですよねぇ?!つーか、雑用係なんて必要なんですか?」


 知っていたくせにわざとらしく聞き返す男子に熱王人は初めは神妙な顔で、


 「いやいや、雑用も大事な仕事だから。まあ…誰でもできる事ではあるけどな!」


 と答えているが、最後は何が面白いのか笑い飛ばしている。 


 「えー、わざわざ防鬼庁に入って雑用ですかあ?よっぽど目立ちたいんでしょー!」


 同じクラスにいる宗次に聞こえよがしに子分は騒いでいる。


 しかし、宗次は反応しない。もちろん聞こえていないわけではなくて、うるさいくらいに聞こえているが反応しても熱王人を喜ばせるだけだとわかっているからだ。


 さすがにそんな事に付き合ってやる義理はない。


 そもそも熱王人の行動は単純に宗次に対する攻撃だけではなく、『鬼払い』の任務で何もしていない自分の事を尋ねられる気まずさからきているとわかっているからだ。


 (そんなに現状を言いにくいなら初めから任務の話をしなければいいのだが)


 と宗次は思うが、それは熱王人という少年の事をわかっていない。


 というか急に英雄になった普通の少年の心理がわかっていないのだろう。


 一度英雄としてチヤホヤされてしまったら、その快感が忘れられないのが普通なのだ。


 『鬼殺し』として注目される前は不良仲間たち以外からは無関心の対象、関わり合いを持ちたくない存在に過ぎなかった熱王人が一般の生徒からも英雄として扱われる事に喜悦して、増長してしまっても仕方ない事だろう。


 おかしいのは「熱王人は『鬼払い』任務で法具を出す練習をしているだけで特に役割はない。そして自分は雑用ではなく『広域結界』を張るという役割がある」という事実を話さない宗次だ。


 (これを言えば神崎君も立場がないだろう)

 

 こんな事を本気で考えているのだ。


 そんな物分かりの良い宗次は英雄になれない。


 英雄になるには自分本位で、夢ばかり語る、そして英雄に仕立て上げている者たちの事など考えない、そんな図々しさが必要なのだから。

次回は 037 取材 です。

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