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アツいココロのナいボクら  作者: 東野 千介
第3章 防鬼庁
32/39

31 拒否

 対策部退魔第十課の明智十郎は戸惑っていた。


 明智は十代、二十代の多い防鬼庁の中では珍しく三十代前半の男で、十年前の『大災禍』にも参戦していた経験もある。


 その頃は『広域結界』が無かったため、文字通り命懸けで鬼と戦ったものだが、今は少なくとも死ぬ心配はない。


 「平和な時代になったものです。昔と比べると本当にいい時代になりました」


 明智はまるで戦時中に生きてきたおじいさんの様な事をよく口にしているが、それを口にするだけの経験をしてきたのだ。


 そんな修羅場を乗り越えてきた数少ない現役の退魔法師にして、最年長の退魔課長なので自然とまとめ役の様な形になっている。


 元々のん気な性格で人当たりもいいので直属の部下だけでなくほとんどの職員に慕われている。そんな明智が珍しく今はある女性に責められている。


 「どうして断ってくれなかったんですか。明智さんが拒否してくれれば私だって断れたのに…」


 同じ課長でありながら二課長の筒井刹那が明智に敬語を使っているのは、筒井が訓練生時代に明智が指導していた名残だ。


 筒井が課長になった時に明智は「敬語はやめていい」と言ったのだが、年齢が上なのもあって筒井はそのままにしているのだ。


 「何を怒っているんだ、筒井」


 開口一番、怒ってきた筒井に対して、明智が改めてその怒りの理由を聞いている。


 「明智さんが嫌だって言えば、あの『鬼殺し』を私は連れて行かなくてすむんです」


 (ああ、そのことか)


 と明智はようやく合点がいく。筒井は年の割に大人の女性と周りからは思われているが、明智に対しては子供っぽい態度をとることが多いので困惑することがあるのだ。


 「そんな事を言われても…困る。丸山部長から正式に命令された事なんだから仕方ないだろう」


 対策部長の命令なのに文句を言われてもどうしようもない、と明智はもっともな反論する。


 だが、筒井はその言葉を素直に受け取らないで更に追及する。


 「明智さんって丸山部長派ですよね。やっぱり『大災禍』の時に助けられたからですか?」


 『大災禍』の際に丸山が多くの退魔法師たちを助けたことは有名な話だ。実力的には緒方や朝倉よりも劣るが、『大災禍』という鬼の大量発生した事態で他の退魔法師たちを助けるだけの余裕があった手練(てだ)れの一人なのだ。


 「それもあるけど、俺は丸山部長の考えも理解できるからだよ。緒方長官は退魔法師の理想である『一般人の安全』を一番にしているけど、丸山部長は『退魔法師第一主義』だ。俺は防鬼庁においてあの人が一定の勢力を持つことに反対はしないな」


 明智は丸山派であることを否定しない、丸山への支持を明確に表明している数少ない職員だ。


 若い職員が中心の防鬼庁ではやはり伝説的な強さを誇る緒方や、口は悪いがやはり桁外れの能力を持つ朝倉への人気が高い。実際のところ丸山派はかなり押されているといっていいのだ。少なくとも表立って支持している職員は若手には少ない。

 

  だからこそ丸山は『鬼殺し』という若者が食いつきそうな熱王人をいち早く取り込んだのだ。


 筒井にしてみたら丸山のそういう姑息なところも気にくわない。


 「緒方長官だって退魔法師をないがしろにしているわけじゃあないですよ。ただ、一般人を大事にしないと…」


 「防鬼庁が国の支援が受けれないから、だろ。俺だってそれはわかってる。だから緒方長官にだって逆らう気はないよ」


 「…そういう言い方はずるいですよ」


 明智と話をしていると筒井は自分だけが子供じみたわがままを言っているような気分になってくる。


 「大人はずるいのさ。まあ、そんなに心配するなよ。俺の十課も同行するんだから『鬼殺し』がいてもどうにかなるさ」


 根拠のない事を言う明智だが、なぜだか筒井はその言葉に安心するのだった。

次回は 32 初任務 です。

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