表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アツいココロのナいボクら  作者: 東野 千介
第2章 対策部退魔二課
13/39

12 神崎熱王人

 熱王人が鬼を倒した時に使われた莫大な法力の消費の負担を結界班のメンバーは例外なく感じている。本来結界内では使われるはずがない異常な法力が一度に使われていたのは間違いなかった。


 正直なところを言えば毎回こんなに消耗することになるなら普通の結界班ならばとてもではないがもたないだろう。


 今日の反省会では結界班としてはこの点を強く主張するつもりだ。


 そのために二課の中でも結界班の者達は早く集まって反省会前に意見をまとめるつもりだったのが、戦闘班のあやが早く来てしまったためにそれができなくなってしまったのだ。


 結界班の三人の少女はあやと談笑しながらも宗次を横目で見る。


 (わかってる。みんなの言いたいことは僕が主張する)


 もともと対策部の各課がローテーションで仕事をしているのも、鬼と直に戦う戦闘班の怪我の治療や力の回復をするためのものではなく、結界班の疲労回復を待つためのものだ。


 なにしろ広域結界方式がとられてから戦闘班は怪我どころか疲労することすらなくなっているのだ。


 (『鬼殺し』の存在は広域結界方式を根底から覆すものだ。疲労しない戦闘班は絶対に勘違いするだろう。『鬼殺し』がいれば鬼を追い払うのではなく鬼を倒す事を対策部の仕事、戦闘班の仕事にできる、と)


 宗次は危惧をいだく。


 いつも鬼を追い払うだけで鬼を殺すことができなかった無念さは、後方にいる結界班よりも実際に鬼と戦う戦闘班のほうがおおきかっただろう。


 だから戦闘班長の野村などは前回の作戦で『上は鬼殺しを考えてる』というような希望とも妄想ともつかないことを言っていたのだ。


 (下手をしたらあの『鬼殺し』を防鬼庁に即戦力として取り入れようなんていうくだらない考えも思いつかれてしまうかもしれない。あの力は魅力的だが即戦力は無理だ。あんな無茶な法力の使い方をしていたら結界班がもたない。それだけは避けるように反省会を誘導しなければ)


 宗次は二課の反省会をうまく誘導できる自信があった。何しろ二課長である筒井刹那と事前に話ができており、筒井の考えも宗次と全く同じである事を確認できていたからだ。


 宗次はあらゆる最悪の状態を想定して反省会での発言内容を考えていた。


 しかし、事態はその最悪の状態すらも凌駕していた。


 そう、対策部長丸山(まるやま)義彦(よしひこ)が一人の少年をともなって反省会にやってきたことによって。


 「彼には対策部退魔二課戦闘班に入ってもらうわよ」


 二課の反省会が行われている部屋に予告なしに入ってくると丸山はいきなりそう言った。


 丸山は若年者の多い防鬼庁では数少ない中年の男だが、対策部の部長を任されているだけあって退魔法師としての能力はかなり高いが、尊大な男でもある。


 そんな丸山は少年が誰なのか一切説明せずにただ、「二課に入ってもらうわ」と言った。


 しかし、みんなそれが誰なのかわかった。


 同世代の者よりも少し背の低い、髪を金髪に染めて左耳に髑髏のピアスをした少年。


 この反省会で話されている先日の『鬼払い』の任務中に出会った少年だ。


 「彼の名前は神崎熱王人君。あなた達にはもうわかっていると思うけど彼には力があるのよ。そう『鬼殺し』という力がね。神崎君の希望もあって君達二課に所属してもらうことになったわ。よろしく頼むわよ」


 丸山は誇らしげな笑みを浮かべているが、紹介されている熱王人はあまり嬉しそうじゃない。むしろ不機嫌そうだ。


 宗次は二課長の筒井に視線を送る。


 筒井は宗次に答えるようにゆっくりと首を振る。


(やはり筒井課長も知らなかったのか。丸山部長の独断か)


 だが、こうなってしまっては熱王人の防鬼庁、しかも対策部退魔二課入りを阻止することはできないだろう。なにしろ対策部長の丸山の肝いりだ。逆らえるはずもない。


 しかし、筒井の返事は意外なものだった。


 「おことわりします。二課に彼は必要ありません」


 筒井はいつものやわらかい物言いではなく、毅然とした態度で言うが、


 「筒井君。あなたに断る権限はないの。この件については緒方長官も了承しているのよ」


 丸山は意に介さないで答える。


 「緒方長官が?緒方長官は彼を防鬼庁にいれないと・・・」


 「あ~ら、あなたも緒方長官に彼の事を報告していたのね。まあ、あなたの課が対応したのだから当然よね。しかし、事情が変わったのよ。疑うなら確認してみるといいわ。緒方長官は神崎君の防鬼庁入りをはっきりと認めたのよ」


 防鬼庁の最高権力者である緒方の名前を出されては筒井も黙るしかない。


 というよりも筒井はあらかじめ緒方に熱王を防鬼庁入れないように進言していたのだが、どうやら丸山の工作によってそれが駄目になったのがわかったのだ。


 この後の反省会はあっさり終わった。


 今回の反省会で重要事項だった熱王人の扱いが決まってしまったからだ。


 丸山たちが現れるまでは、


 戦闘班の者たちは熱王人を『鬼殺し』の英雄として。


 結界班の者たちは熱王人を『J』(邪魔者)として。


 それぞれの立場から意見を出していた。


 そして二課長の筒井は中立を保つように見せかけて結界班の意見が通るように誘導していたが、丸山が熱王人を連れて来たことによって『英雄』として扱わざるえないことを認めるしかなくなったのだった。


次回は 13 すわ です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ