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アツいココロのナいボクら  作者: 東野 千介
第2章 対策部退魔二課
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11 対策部対魔第二課結界班


 冬月宗次は防鬼庁対策部退魔第二課結界班の班長だ。


 結界班は退魔課の中でも戦闘班よりも退魔能力の劣ったものが配属される。


 防鬼庁に属するものは通常、退魔法師の家系の者が退魔訓練所に入りそこで1年間の訓練を受けてからの入庁となる。(例外あり)


 そして退魔訓練所での訓練期間が終了し、適正試験で一定のランクに達しなかった者は生態研究局もしくは治癒部にまわされる。


 残った者はもっとも人員を多く配置させる対策部に所属することになるが、その中で鬼との戦闘に耐えうる強力な法力を持つものは退魔課戦闘班に、鬼と戦うのは難しいが現場に赴いて自分の身を守るくらいのことが出来るものが結界班に所属することになる。


 宗次は自分は当然戦闘班に選ばれると思っていた。


 実際に訓練生の中でも宗次の戦闘技術は格段に優れていたし、周りの状況を感知する五感も異常なほど発達していた。


 ただ鬼を倒すための法力に関しては訓練で出来るのはそれを制御するための精神を鍛えることぐらいしかできなかったが、その精神面においても宗次は群をぬいていた。


 その精神力の高さは宗次の完璧な結界の張り方からもわかる。

 

 そして宗次の両親は共に対魔法師として『大災禍』を戦い、姉も兄も優れた対魔師だったので血統としても鬼と戦う力があると思われていた。


 しかし選別試験の結果、宗次は戦闘班ではなく結界班に配属されることになった。


 宗次は退魔法師として絶対に必要な物、『法具』を具現化する事ができなかったのだ。いくら高い戦闘技術を持っていても『法具』がなければ対鬼の戦闘に出る事はできない。


 (あの時は我ながら動揺したな)


 宗次は過去を思い出して苦笑する。


 (だが、今は…)


 「どうしたんですか、班長。真剣な顔して」


 愛くるしい顔をしたセミロングの少女が宗次の顔を覗き込んでくる。


 対策部退魔第二課結界班所属の桃井(はな)だ。宗次の直属の部下になる。


 「いや、なんでもない。全員そろってどうしたんだ」


 桃井花の後ろに同じ結界班の千葉(りん)と斉藤(まい)が並んでいるのが見える。


 この三人は全員宗次よりも一つ下の十四歳の女の子達だ。


 広域結界は基本的に四人一組で行う。結界班が班長一名に班員三名で構成されているのはそのためだ。


 「どうしたって、今日はこの前の作戦の反省会じゃないですか。忘れたんですか?班長はいつも本部に来てるから公私のけじめがなくなって忘れちゃうんですよ。やっぱり休日は休んだほうがいいですよ。今度の休みはあたしとデートですね!」


 千葉凛がポニーテールを揺らして宗次の腕に抱きついてくる。


 桃井花がそれを鬼のような形相(ぎょうそう)でそれをにらむが宗次に気づかれる前にすぐに笑顔に戻す。


 斉藤舞は何を考えているのかわからないがストレートロングの黒髪を少しのゆらぎもなくいつものように黙っている。


 三者三様のあり方に宗次は苦笑する。


 (いいチームだ。あんなことがあってもいつもどおりにしている。悩んでいるのがバカバカしくなるよ)


 そんな二課結界班のわきあいあいとした雰囲気の中に一人の少女が割って入ってくる。


 「あ~ら、ずいぶんと仲がよろしいこと」


 『こと』に強いアクセントを加えて現れたのは七瀬あやだ。


 きれいな顔をゆがませているその態度はほとんど意地悪な小姑だ。


 「あや、いつものことだろ」


 宗次はあまり相手にしないで冷静に答えている。


 「へえ~、いつものこと!」


 その態度がさらにあやを逆上させる。今度は語尾が震えている。


 「そうなんですよ。いつもこんな感じでふざけあっていますけど、たいした意味はないんですよ。凛ちゃんたら本当にいたずら好きで困ってるんです」


 花が凛を宗次から引き離しながら宗次のそっけなさをなんとかフォローしようとする。


 (もう、班長のバカバカ。どうしてここまで女心がわからないのよ。わたしにこんなフォローさせるなんてほんっとうに最低なんだから!)


 花は怒りながらも宗次には笑顔をむけている。


 しかし、引き離す凛の腕をぎゅっとにぎりしめながら、


 (それにしても凛ちゃんはいつもいつも・・・)


 花がトラブルメイカーの友人をにらむが当の本人は平気な顔をしている。


 「まあ、いいわ。今日の反省会はどうせ『鬼殺し』のことでしょ。すごかったよね~。本当に鬼が消滅したもの。あたし見ていて鳥肌がたっちゃった」


 あやは(ほほ)を紅くして興奮した口調だ。


 「『鬼殺し』か」


 宗次は静かにつぶやく。


 戦闘班の一員であるあやは『鬼殺し』にたいして興奮さめやまぬようだが、結界班のメンバーはそう単純ではない。


 熱王人が鬼を倒したときに感じた疲労はいまだ記憶にあたらしいのだ。


 対策部二課長である筒井の戦闘規律は厳格で二課では今まで規定時間をオーバーして戦ったことがなかった。


 そのため二課の結界班は結界を張ったことによる疲労を任務後にもちこすということがなかった。


 たまに他の課の結界班から任務後の疲労に関して愚痴を聞くことがあったが、二課の結界班に関してはその経験が誰一人無かったのだ。


 しかし、熱王人が鬼を倒した日に初めてその疲労を感じることが出来た。


 結界班の疲労はすなわちそのときの戦闘において力が使われ過ぎたことを示している。


 防鬼庁が現在採用している広域結界方式とは戦闘班の使用する法力を結界班が肩代わりしていると考えてよい。


 もちろん戦闘班が使う法力を戦闘班よりも法力が劣っているはずの職員が集められた結界班の人間が肩代わりできているのには理由がある。


 それが広域結界という特殊な結界を張る方法だ。この結界は四人一組で心を静めた状態で精神を同調させて結界を張ることにより効率的な法力の運用と結界内では身体的なダメージを受けないという安全性を可能にしている。


 そしてそのおかげで戦闘班はあまり疲労を感じずに法力を使用して戦えているのだ。

次回は 12 神崎熱王人 です。

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