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アツいココロのナいボクら  作者: 東野 千介
第1章 鬼殺し誕生
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10 朝倉憲剛

 『鬼を殺す者が現れた』その事実が起こった日は現場で働く退魔課の職員だけでなく、生態研究局の職員にとっても忘れられない日になっていた。


  「これ見てくださいよ!まだ、血が(したた)ってる!」


  「凄いな。死んだばかりの鬼は身体はまだ生きているみたいだ」


  「それが鬼の生命力なのだろう」


  生態研究局員たちは興奮を隠さないで熱王人が倒した鬼の死体を取り囲んでいる。


  そんな興奮に冷や水を浴びせる者がいる。


  「こんなザコ鬼を見たところで今更なんの役にも立たんなあ」


 つまらなそうに両手をポケットにつっこんだまま現れたのは生態研究局長の朝倉憲剛(あさくらけんごう)だ。朝倉は十代、二十代前半の職員がほとんどの防鬼庁では珍しい三十台後半の男で、俳優だと言われてもおかしくないほど顔が整っている。


 ただ、その整った顔からは想像できないほど行動は粗野で言葉は荒い。


  「局長は見たことがあるでしょうけど、私たちは鬼の死体を見るのは初めてなんですから。この死体を解析すると鬼の弱点がわかるかも知れませんよ」


  生体研究局技術開発部の船堂多磨子(せんどうたまこ)が反論するが、


  「あほう。四種程度のザコ鬼なんぞ、倒す方法を見つけるまでもないと言っているのだ。ザコ鬼なんぞ倒せて当然。仮にも退魔法師を名乗るなら最低でも三種以下は瞬殺できないようなら話にならんな」


  「それは『広域結界』外の話でしょう?」


  船堂のもっともな指摘に、


  「わしならどこでもできる」


  朝倉はいとも簡単に言い放つ。その様子に虚勢は見られない。ごく当たり前の事だと本気で思っているのだ。


  朝倉は普段は研究室にこもって戦闘に出ないから船堂は失念してしまいがちだが、その実力は折り紙付きだ。


  「それは局長はできるでしょうけど・・・」


 二課戦闘班長の野村と宗次の会話の中で出たように朝倉憲剛は生態研究局長という研究職のトップであるにも(かかわ)らず、長官である緒方と共に広域結界内でも鬼を殺せると目されている退魔庁有数の実力者だ。

 

  「そんな事よりも〔はぐれ鬼〕が二匹も出たようだな?」


 広域結界内で鬼を殺した事実をそんな事呼ばわりする朝倉にそれ以上船堂も反論しない。この人に議論をしかけても勝てるわけがないとあきらめて返事をする。


  「はい。六種と、四種が一匹ずつ。時間と場所も少しずれていたようですね」


  船堂の言葉に朝倉は少し考えるように目線を落とすと、


  「なんか、最近〔はぐれ鬼〕の出る割合が増えてねーか。後で楽島(がくしま)に確認しておけ」


  「楽島部長じゃなくても治癒部予見課に問い合わせればよろしいのでは?」


  〔はぐれ鬼〕の割合を調べるだけなら治癒部長である楽島にわざわざきかなくても、出現した鬼の統計を取っている治癒部予見課にきけば十分だろう。


  「楽島だ」


  朝倉は余計な事を言うなとばかりに一言で答える。


  「楽島部長ですか・・・」


  「なんだ?不満そうだな?」


  「私、楽島さん苦手なんですよね・・・」

 

  船堂は眉間にしわをよせる。決して悪い人ではないのだが楽島はある意味朝倉よりもくせがあるのだ。


  「何が気に入らないんだ。楽島は俺よりいい奴だろうが」


  局長に比べればたいていの人はいい人になりますが。船堂はその言葉を飲み込んで「楽島部長に問い合わせます」と答えるのだった。

次は 11 対策部退魔第二課結界班 です。

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