プロローグ
〔鬼〕。そう呼ばれる生物が地球上に現れてから十年。未だに鬼について確実な対策とらていないのが現状だ。
いや、現れてから十年というのは正確ではない。鬼が世間に現実にいるものと一般的に認識されるようになってから十年というべきか。
人を襲う鬼は古来から少数ながら世界各地にいた。そしてそれを追う者もいた。日本では陰陽師、祈祷師、対魔僧、祓い屋など呼ばれていた者たちだ。
鬼は様々な形態を持っており、妖怪、幽霊、吸血鬼、化け物、悪魔など様々な呼称をで呼ばれていたが、それらは全て実在しない想像上の生き物だと思われていた。
絶対数が少ない上、それを狩る者たちが迅速に対応していたからほとんど世間の人の目に出ることがなかったのだ。
しかし、現在では鬼は実在する物として、太陽が存在する事と同じようにその存在は当たり前に受け入れられている。
十年前、突如として鬼が地球規模で大量発生した『大災禍』によって世間その存在が知られたのだ。
もっとも鬼がどこから現れてどこへ去っていくのか、鬼が人間を襲う目的が何なのか、なぜ大量発生してしまったのかそれはわからない。
わかっているのは『大災禍』が収束した後も定期的に発生する鬼によって人類が受ける被害が飛躍的に増加しているという事だ。
鬼に対抗するために各国は対応策を練り、日本政府も対抗する機関を作った。それまで民間で行われていた鬼狩りを組織的に行うために作られた公的組織が防鬼庁だ。
防鬼庁の仕事は大きく別けて三つある。
まず、鬼の大量発生の原因および鬼が人間を襲う理由を研究している生態研究部。
次に、鬼に襲われた人間の治療を主に請け負っている治癒部。
そして最も予算と人員を割いていて防鬼庁の花形ともいえるのが発生する鬼に対して戦いを挑む戦闘部隊である対策部だ。
もっとも、鬼と戦うといっても対策部がしているのは出現した鬼をその場から追い払う事と、鬼に襲われた被害者をその現場から救出すること。この二点のみで、諸悪の根源である鬼を殺すことはできなかった。
鬼を殺さないで、被害者を救い出す。
それがついこの間までの対策部の仕事だった。
〔鬼殺し〕と呼ばれる少年が現れる前までの。
新連載始めました。前作『勇者の考えは全部筒抜けになっている事を勇者は知らない』に比べて少しシリアスよりですが、そのうち崩れてきます、たぶん。
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