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ワンチャンあるかな、って転生先で推しにアタックしてるのがこちらの令嬢です  作者: 山口三


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9 誕生日パーティーへ潜入


「いやあ、本当に助かったよジーナちゃん。本当なら休日なのに悪かったね」

「私も丁度よかったんです」


 そうそう、助かったのは私の方なんです、バートレットさん。


 王宮で開かれるジェリコの誕生日パーティー。そこでクレアとジェリコの親密度が高まるイベントを阻止すべく、王宮に乗り込むチャンスをもらえたんだから!


 手伝いを申し出た私とバートレットさんは、大きな荷馬車で受注したパンと菓子を王宮のキッチンまで搬入した。私も王宮の内部まで入る事に成功したのだ! 搬入が終われば速やかに出ていかなければいけないのだけど、バートレットさんには嘘をついてしまった。この後、ジェリコのパーティーに私も呼ばれていると。


 門番にもジェリコの婚約者だった私の顔を覚えている者がいる。彼らも私がパーティーに呼ばれているという嘘を信じてくれた。これでバートレットさんが帰りは一人でも不審に思われない。どうか婚約破棄された令嬢がパーティーに呼ばれる不自然さに、気づきませんように。 


 さて、次はパーティー会場に忍び込む為の変装をしなくちゃ。


 王宮内に入る事は出来たけれど私には招待状がないから、パーティー会場である紫水晶の大広間に入れない。それを悩んでいるとアロイスがこう言って来た。


「商人が搬入用に使うキッチンの入り口の左側に食料品の倉庫が二つある。その小さい方に王宮メイドの服を隠しておくよ」


「え? アロイスはどうやって王宮へ入るつもりなの? それに王宮メイドの服なんてどこから…」


「王宮へ入る方法は俺も考えてあったんだ。メイドの服なんて似たような物はどこにでもあるさ」


 アロイスがどんな方法を使って王宮に忍び込むのかは教えてくれなかった。でも言われた通りに小さな倉庫に入ると、黒っぽい包みの中にメイドの服が一式入っていた。


 パーティーの準備で大わらわのキッチンでは、メイドや使用人たちが入り乱れている。私に注意を向ける者はいない。


「ちょっと、そのグラスが乗ったワゴンを広間に持って行って。1個でも割ったら承知しないよ!」


 メイド服に着替えてキッチンに入った私に、さっそく指示が飛んできた。クリコット家で給仕は毎日やっている。私は慣れた手つきでワゴンを押して広間に向かった。ジェリコの婚約者時代に王宮へは何度も来ている。キッチンから広間への道は分かっているわ。


 紫水晶の大広間。国の公的な行事や王家が主催するパーティーなどで使用される、王宮で二番目に大きい広間だ。ブルーと紫を基調としたインテリアで装飾され、天井にはアメジストで作られた豪奢なシャンデリアが光り輝いている。豪華さで行くと王宮一と言っていい。


 招待客は高位貴族から要職に就くお偉方、軍人、高名な学者やアカデミー関係の人もちらほら見える。ついこの間までジェリコの婚約者だった私は、何度もここでジェリコの誕生日を祝った。この中に私の顔を知っている人間は沢山いる。一応、お母様の化粧道具を拝借してメイクで変装の仕上げをしておいた。よ~く見なければ気づかれないはず…。


「クリコット伯爵令嬢…でしたわね」


 ドキーーン! 嘘でしょ、もうばれちゃったの?!


「そうそう、ジェリコ殿下の元婚約者。派手好きの、なんとも品の無いご令嬢でしたわねぇ」


 は、違った、ばれてない。良かったわ、いや良くないわ! 派手で品の無い令嬢だなんて失礼しちゃう。ジーナの見た目はゲームの悪役令嬢という設定のせいよ。自分で言うのもなんだけど、飾り立てない素のジーナは美少女じゃないけど可愛らしい顔をしているわ! 


「ほら、あれをご覧なさい。ジェリコ殿下はもう別のお相手を見つけているようですぞ」


 傍に立っている、いかつい軍人らしい人物が、噂好きのご婦人方に目で合図した。


「殿下と踊っていらっしゃるのはどなたかしら?」

「あら、ご存じありませんでした? あの方はアカデミーに留学してらっしゃる隣国の聖女クレア様ですわ」


「優れた神聖力をお持ちと噂の…まぁあの方がそうなんですの。クレア様がお相手ともなれば、ジェリコ殿下が王太子になるという噂に真実味が増しますわね」


「そうですな。我が国とシュタイアータ皇国の親睦が深まる事は間違いないでしょう。それを度外視してもあの清楚な美しさですから、殿下が見初めるのも無理はありませんな」


 周囲もやっぱりそういう反応なのね。クレアがこの国に嫁入りしてくれるのは歓迎だけど相手があの、外面がいいだけのジェリコじゃクレアが可哀想。それにジェリコが国王になるなんて、国にはマイナスにしかならないと思う。ジェリコの本性は金遣いの荒い、女好きの怠け者だもの。


 私はグラスにお酒を注ぎ、ワゴンを押しながら広間の奥へ進んだ。どうやら二曲目のワルツが終わった所らしく、ジェリコがクレアの手を引き、会場奥の国王夫妻のもとへ向かっている。


 いけない! 会場に入るのが遅すぎたかも。


 このジェリコの誕生日パーティーイベントではスリリングな展開が待っている。


 ジェリコがクレアを国王夫妻に紹介していると、国王陛下を狙う刺客が突然バルコニーから現れ、それを阻止しようとしたジェリコが負傷する。かなりの深手を負ったジェリコを聖女の神聖力で見事癒すと、国王夫妻の好感度が爆上がりし、ジェリコとの親密度も更にアップするのだ。


 親密度アップを阻止する為に来たのに、二人はもう国王夫妻がいるステージへの階段を上り始めた。私は一番近くにいた近衛騎士に駆け寄って小声で訴えた。


「一番奥のバルコニーに不審な人物が見えました。どうか確認をお願いします」


 大声をあげて会場がパニックになったらまずい。近衛騎士も急いで奥へ向かっているが、ジェリコはもう国王夫妻の前まで来ている。


 遠くてよく見えないが少しだけバルコニーの扉が開いた気がする…と、国王陛下が突然立ち上がりジェリコを突き飛ばした。


「ジェリコ、危ない!」


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