義兄との対面
サブタイトルを間違えて送信したため、修正しました。
その日は、ブランドン家の応接室での対面となった。
いつもは子供部屋で乳母と遊ぶクリスティーナ嬢に少し離れたところから一方的に俺が話しかける、という形だったが今日はチャールズ殿も一緒だ。
大きなテーブルを挟むように、乳母に抱かれたクリスティーナ嬢と、隣に座るチャールズ殿という配置になっている。
いつもと少し違う様子と、テーブルがあるとはいえ俺を正面に対するのはまだ不安が大きいようで、クリスティーナ嬢は乳母にしがみついてこちらを見ることはない。
チャールズ殿は妹を守るように、俺を睨みつけるように座っている。
「応接室ですが茶を出せぬ無礼をお許しください、メイフィールド閣下。」
形ばかりの礼をとり、チャールズ殿が挨拶をする。
「問題ありません。この先家族となるのです。ぜひ、私のことはリチャードと。」
ピリピリとした空気に怯えるクリスティーナ嬢を安心させたいが、この状態では難しいだろう。
「クリスティーナ嬢、今日はあまりお話ができませんが贈り物として菓子をお持ちしました。ゆっくりお部屋でおくつろぎください。」
退室しても構わないと乳母に促すと、黙ってうなずいたクリスティーナ嬢は部屋に戻った。
「閣下、今日は僕にお話があるとか。」
リチャードとは呼んでくれないらしい。クリスティーナ嬢が退室したところで、今回の訪問理由をさっさと終わらせてしまおうという魂胆か。
「そうだな。ざっくばらんに話をしたいと思っているよ。この場では不敬は問わない。そもそも俺もすでに臣籍降下した身だ。君との立場もほぼ同一と考えて良い。」
少しの沈黙の後、怒涛のように話し始めた。
妹を傷つけたものへの怒り、大人たちの事情はわかるものの許せない気持ちを俺に訴える。
それでも大きな声を出さないよう気をつけているのは妹への配慮だろう。
興奮しながら勢いよく話す彼の言葉が一旦落ち着いたところで、話しかける。
「すまなかった。俺がそばにいたのに守ってやれなかった。君に殴られても文句は言えない。」
「閣下を殴っても、妹の傷は治らない。それに、悪いのは殿下だ。」
「エドワード殿下を殴りたいかい?」
「ああ、ボコボコにしてやりたい。許せるはずがない。それなのに、側近なんて・・・妹を傷つけた奴に頭を下げて生きていくなんて、妹が知ったらどう思うか。」
そうか。自分が嫌だ、というより妹を傷つけることが辛いのか。なんて良い兄なんだ。
「君は、妹が、とても大切なんだね。」
「あたりまえだ!妹が生まれた時誓ったんだ。俺はティーナの騎士になるって。あの子が、もう、わらって、笑ってくれなっ・・・」
泣き出してしまったチャールズの隣にそっと移り、頭を撫でる。
エドワードより2つ年上とはいえ、政治的な判断を呑み込むには心がついていかないだろう。
ゆっくりとクリスティーナと同じ金の髪を撫でながら、少し思いついたことを言ってみる。
「エドワード殿下に謝ってほしいかい?」
「・・・王族は謝ったりしない、って父様が言っていた。閣下はさっき謝ってたけど。」
「そうだね。俺はもう王族ではないから頭を下げるけど、殿下は王族だから難しいだろうね。でも、謝らせることはできるよ。」
「そうなの?」
「公式には無理だけどね。殿下も本当は謝りたい、って言ってた。」
「殿下が・・・」
「クリスティーナ嬢は怖がって会いたくないだろうから無理だけど、君やブランドン侯爵には、できるかもしれない。」
「ティーナに会わせたりなんてしない!」
「だろう?ちょっと俺に任せてくれないか。エドワード殿下と君も、話をした方が良いと思う。側近になるかどうかは、そのあと考えるので良いと思う。そこは王太子殿下にも話をつけてみよう。」
しばらく考えたあと、チャールズが口を開く。
「・・・お願いします。」
さて、ここからは俺の仕事だ。
「よし、じゃあエドワード殿下に決闘を申し込もう。」