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大人気ゲームのヒロインは友人キャラが大好きです

作者: 月龍蛇

試し読み用です

本編は別にあります。

『ひっく…ひっく…。』


 その日、使用人達の目を盗んで屋敷を抜け出した私は、ふとした拍子に転んでしまいました。

 膝を擦りむいて出てきた血を見て泣いてしまったのです。今、思うと痛みよりも驚きの方が大きかったのかもしれません。

 身体が弱く、ずっと屋敷の中で過ごしてきた私は、外の世界を見たかった。ちょっとした好奇心でした。


『大丈夫?。膝、痛い?。』


 声の主はいつの間にか目の前に立っていた男の子でした。

 泣いていた私を心配そうに見つめています。


『ひっく…痛い…よぉ。』


 男の子はポケットに手を入れると2枚のハンカチを取り出す。

 その時の男の子の表情は何とも言えない哀しさを感じました。

 何かを決心するように頷く男の子は2枚あるハンカチの内の1枚を私の擦りむいた膝に巻いてくれました。


『大丈夫。これで痛くないよ。』

『…うん。ありがとう。』

『そのハンカチね。僕のパパとママが持ってたんだ。すっごく仲良しのパパとママだったんだけど、この前事故で死んじゃったの。』


 男の子は泣きそうな顔で私に辛いことを教えてくれました。


『このハンカチは僕の大切な宝物なんだけど。1枚、君にあげるよ。』

『…いいの?。大事な…宝物…。』

『うん。君が大事にしてくれるならね。』

『…うん。うん!。大切にする。』

『けど…その代わりに…。』

『なぁに?。』

『僕のお友達になって欲しいな?。』

『お友達?。』

『うん。』


 身体が弱く、部屋に閉じ籠っていた私に出来た初めてのお友達。


『私で…良いの?。』

『うん。一緒に遊ぼっ!。』

『っ!。うんっ!。私お友達になるっ!。遊ぶっ!。』


 日が暮れ、侍女役のアンリと執事のガウスが私を探しに来るまで遊びました。

 急に居なくなったことで凄く怒られたけど、大切な…生まれて初めてのお友達が出来たから後悔はしていません。

 結局、強制的にお屋敷に連れ戻されてしまい。彼とは強引な、さようなら になってしまったことが心残りです。


 初めてのお友達との楽しかった出会いは、1日だけのお友達となってしまいました。


 次の日。

 外交官である父のお仕事の都合で海外へ引っ越すことになった私は、ハンカチをくれた男の子にお別れすら言えなかったのです。


 それが私の唯一の後悔です。

 何せ、お別れも…名前すらも聞けなかったのですから…。


 今にして思えば、彼がハンカチをくれたあの日から…いいえ。もっとずっと昔… 前世 の時から私は彼のことが大好きでした。


ーーー

ーーーあれから十数年。


 私、【レティア・シル・フィーナ】は16歳となり、【エンパシス魔法学園】に主席で入学。

 容姿端麗、成績優秀、品行方正…学園始まって以来の才女として皆さんから恥ずかしながら【聖女】と呼ばれています。


 この世界には【魔法】という技術が存在します。

 【魔法】が発見されたのが100年程前。

 今までは【超能力】や【異能】と呼ばれていたモノが科学的に徐々に解明されたことで、人間の…いえ、生物が生まれながらに持つ特殊なエネルギーだということが判明。それを総称して【魔法】と呼ばれるようになりました。

 【魔法】とは、人間の中にある潜在エネルギーを能力、現象として具現化する技術です。属性と呼ばれる【火、水、風、土、雷、光、闇、無】の8つの系統に分類されています。

 私はその中でも世界規模で特に珍しいとされる【光】の属性を発現させたことが【聖女】と呼ばれる所以になったようです。

 

 後に正真正銘の【聖女】と呼ばれ隣国の王妃となる運命もあるとかないとか。

 まぁ。それは【主人公】と 結ばれなかった 場合の未来の1つなのだけど…。


 魔力を【魔法】という体系で技術化し、それを人々に広め、学ばせ、生活の一部に組み込むことを目的として建設されたのが【物語】の舞台となる世界初の【魔法学園】、【エンパシス魔法学園】です。


 まぁ…世界観の話は以上ですね。

 【設定】としてはありがちですし…生活に関しては元の世界と大差ありません…人間以外の【亜人】と呼ばれる方々や【獣人】と呼ばれる方々が普通に生活しているファンタジー世界ですから…。

 

 突然ですが、私には前世の記憶があります。


 あれは私が6歳になった時のこと。


 この世界では6歳になると魔法の適性試験を受けることが義務付けられています。

 簡単な話、不思議な水晶に魔力を込めて、その輝きと色によって内に秘めた魔力の系統と量を調べることが目的です。

 

 そこで、私は真っ白な純白の輝きで教会内を包み込んでしまいました。

 適性は【光】系統。

 それも歴代でトップクラスの質と量が計測された。只でさえ稀にしか現れない【光】属性なのにその魔力の強さたるや神話や伝説の領域なのだから一大ニュースにもなるよね。


 けど、私はそんなこと 知っていたん だ。


 水晶から放たれた輝きは同時に私の中で眠っていた 記憶 まで蘇らせたのだ。


 そう、こことは違う世界の 日本 という国で生活していた時の記憶。

 私はそこで女子高生でした。不慮の事故で命を散らすまではパパとママ、そして、弟と一緒に楽しくて平和で穏やかな…少し退屈な毎日を暮らしていたの。


 そして、私は…前世で生きていた時に、この世界のことを知ったのです。


『見て。レティア様よ。今日も美しいわ。』

『レティア様。ご機嫌麗しゅうございます。』

『っ!。…ご、ごきげんよう…。』


 登校時、学園の敷地に足を踏み入れた途端に聞こえる歓喜と挨拶の言葉。

 無視するのも何だし、適当に返しておきましょう。


 この世界は、【魔法】が生活に組み込まれ活用されている。日本のような科学と異世界のファンタジーの中にあった魔法が絶妙に混ざり合い人々の生活を豊かにしている。そんな世界。

 全ての人間が【魔力】と呼ばれる生命エネルギーを利用したオーラのようなモノを扱え、その性質によって様々なことが出来るようになった。


 うん。まぁ。それは良いわ。

 良くある設定だもの。そんな世界もあって良いじゃない?。便利だしね?。けど…。まさか… あの 世界に【転生】するなんて思わないじゃない?。


『ふぁぁぁ。おはよう。レティア。』

『っ!。お、おはようございます。ヤマト君。』


 欠伸をしながら肩に鞄を掛けた寝癖の目立つ青年が私に近付いて来た。

 隣には可愛らしい女の子を2人も侍らせて。

 2人は彼の幼馴染みの同級生【スズナ】さんと、青年の妹【アンナ】さん。


 そして…来たわね。【主人公】。貴方の思い通りになんてならないわ。


 そう。【ヤマト センリ】。

 この世界…いや、この【ゲーム】の主人公だ。


 ゲーム【エンパシス・ガーデン】。

 私のいた世界に存在したゲームの名前だ。

 私はそのゲームの登場キャラクターに 転生 してしまったのだ。


 うん。それは良いわ。

 ゲームの世界のキャラクターに転生するなんてなかなか出来る体験じゃないもの。とてもドキドキするわ。うん。 普通 のゲームなら。


 前世の記憶を取り戻した日の夜。

 自室の姿見の前で頭を抱えた。


 自分の容姿。

 金髪碧眼。整った顔立ちと美しく輝く髪。抜群のスタイルには男女共に羨望の眼差しを向けることでしょう。


 ゲーム【エンパシス・ガーデン】のメインヒロインであり、パッケージの中央を飾るキャラ。作品中最も人気を博したキャラクターである【レティア・シル・フィーナ】に転生したのだから。


 けど…問題はそこじゃない。

 この世界は…あのゲームは…弟の部屋からちゃっかり借りた…R18…18禁…アダルトゲーム…俗に言う…エロゲの世界なのだぁぁぁあああ。


 エロゲの世界。

 それは【主人公】を中心に回ると言っても過言ではないご都合主義な世界。

 ヒロインは主人公の為に存在し、主人公の都合の良いように心を…肉体を…操られて結ばれて幸せを手にする。

 つまりは、主人公に選ばれればハッピーエンドに導かれるということ。そこに、自分の意思は存在しない。選択肢などヒロインには見えていないし、予め用意されたエンディングに向かって進む世界なのだから。


『私は…どうなっちゃうのぉぉぉおおおおお。』


 このゲームは、何度もプレイした。

 恥ずかしい話だが前世の私はエロゲを趣味にしていたくらい大好きだったのだ。

 このゲームも素晴らしいエンディングを幾つも用意された大ボリュームでやり応え抜群のゲームでとても面白かった…。

 ヒロインは10人を超え、各キャラに3つ以上のハッピーなエンディングが用意されていた。ユーザーのニーズに応えヒロインの色んな素顔が強調されたエンディングの数々…面白かった…のは、認めるけど。


『私…このゲームの主人公。嫌いなのよね。』


 何度も何度もプレイした。

 けど、ヒロインは可愛いし他の男キャラも格好良いのが多かった。それなのにどうしても主人公だけが好きになれなかったのだ。

 別に優柔不断の最低野郎とかそんなんじゃなかった。何となく合わなかったのだ。


 私がこのゲームで大好きだった推しキャラ。

 それは…。


『よっ。センリ。今日も眠そうだな。』


 あっ…。噂をすれば…。彼が来た!。


『ん?。ああ。ヤクモか?。お早う。昨日ゲームしてたら、いつの間にか朝になっててさ。ビックリしたぜ。』

『徹夜は程々にな。』


 自然な仕草で鞄から栄養ドリンクを取り出しセンリさんに渡すヤクモさん。


 主人公であるセンリさんの親友キャラです。

 はぁ…然り気無い心遣いが彼らしい。自然に人のフォローが出来るのに、それを自慢したり恩に着せたりしない優しい方。

 ゲームの時と全く同じ姿と声…それに性格。

 私の大好きなキャラのまま。


『お、おはよう…ございます。ヤクモさん。』

『うん。おはよう。レティアさん。今日も綺麗だね。』

『~~~~~。お口がお上手です…。』

『ああ。レティアは綺麗だよな。毎日輝いて見えるし。』


 むっ。私とヤクモさんの間に割って入ってくるヤマト君。

 くっそ~。私とヤクモさんの挨拶の邪魔をしないでください!。

 ヤクモさんとの会話が遮られてしまったのは残念ですがここは去りましょう。


『それでは皆さん。私は先に教室に向かいます。後程。』


 私を睨む。スズナさんとアンナさん。

 彼女達はヤマト君が大好きですから…。私に彼を取られると思っているようなのです。

 そんなに睨まなくても、彼に興味はありません。どうぞ。お好きにお付き合いでも何でもしていただいて結構ですよ~。


 ヤクモさん…。

 彼との出会いは1年前のことです。

 私達が学園に入学し1ヶ月が経過した頃のこと。

 学園生活にも慣れ始めた、ある日のこと。


 メイドのアンリと共に中庭で昼食のお弁当を食べ終わった時、突然聞こえた複数の男性の罵声。

 何事かと思った私とアンリは、その場所に急ぎました。

 ゲームでは無かったイベント。いえ、ゲーム自体が学園入学から1年後、2年生になってから開始されるのでそれより前の出来事は回想で1部分しか語られない断片的なものでした。

 よって、この状況は私も知らない出来事。

 私は声のした方へ走りました。


『この貧乏人の化け物が。俺達と一緒の授業を受けていることが気に喰わねぇ!。』

『どうせ。きたねぇ手段で入学したに決まってんだろ!。』

『闇系統の化け物が!。』


 3人の男子生徒に壁際まで押し込まれている1人の生徒。


 あっ…。彼は…。

 一目見て気付きました。

 前世から大好きだったキャラ…。入学式では名前だけしか見付けられませんでしたが…やっと出会えました。


 【クルギ ヤクモ】さん。


 大好きなキャラが目に前に…。

 そんな彼の頬を男子生徒の1人の拳が…。


『ぐあっ!?。』


 彼は抵抗しないまま殴り飛ばされました。

 それを見た私は一気に頭に血が上り…。


『何をしているのですかっ!。貴方達っ!。』


 私の怒り声に反応した男子生徒達。


『なっ!?。レティア…聖女!?。』

『何でこんなところに!?。』


 私の存在に気付いた男子生徒達が血相を変えて逃げ去って行きました。

 ですが、逃がす気はありません。

 私の大好きな人を傷付けたのですから許しません!。


『アンリ。彼等の素性を調べ上げ今回のことを学園側に報告を。』

『畏まりました。』


 忍者のように姿を消すアンリ。

 見慣れた光景なので突っ込みは入れません。

 そんなことより…。


『大丈夫ですか!。』

『え?。レティアさん?。』


 ヤクモさんに駆け寄る。

 頬を殴られ口の端を切ったようで血が出てる。

 私は拭くものを探しポケットに手を入れました。


『あ…。』


 取り出したのは、幼い頃に初めて出来たお友達から貰った私の大切な宝物。使わずにずっと持ち歩いていた大事なモノだけど…。


『動かないで下さい。』


 目の前の…大好きな彼に使うなら、きっと、お友達も許してくれる筈…。

 ヤクモさんの口の端の血を拭う。


『この…ハンカチ…は?。』

『…大切な…お友達から貰った私の宝物です。ですが、貴方になら使っても大丈夫な気がしました!。』


 こんな説明、彼にしても困惑するだけでしょうに、その時の私は相当テンパっていたみたいですね…。


『そんな大切なハンカチを汚しちゃってごめんね。』

『気にしないで下さい。私が勝手にやったことです。』

『そう。ありがとね。』

『いいえ。貴方のためなら…。』


 今回の件。

 ヤクモさんの魔法の系統が原因で発生したようです。

 私の【光】系統と対をなす【闇】系統を授かったヤクモさん。【光】系統と同じく珍しい系統ですが、まだ短い魔法の歴史において犯罪者の首謀者の多くがこの【闇】系統の魔法を有していたことで社会的に畏怖の対象になっているのが原因だったようです。

 更に、ヤクモさんの両親は彼の幼い頃に事故で亡くなり母方の祖父と祖母に引き取られた。その2人も既に他界しており今は1人暮らしをしている。苦学生なのです。


 その日からです。

 彼が私のことを少しずつ気に掛けてくれるようになったは。

 嬉しい。彼との繋がりが出来たのです。

 ハンカチを使ってしまったことに後悔はありません。お友達もきっと許してくれます。

 困っている人を助けたのですから!。


 あの日から早いもので1年が過ぎました。


 ヤクモさんには親友と呼べる存在に【主人公】ことヤマト君が出来ました。

 結構自由な性格のヤマト君のフォローを陰ながらしているヤクモさん。

 時々、他のヒロイン達に下ネタでふざけたり、からかったりして白い目で見られる彼。

 ヤマト君にヒロインの好感度や居場所など情報を教えてあげたり、攻略のヒントをあげたりするところはゲームの時と一緒ですね。


 だけど…。

 

 ヤマト君がヒロイン達と楽しげに過ごしている間。彼は…ヤクモ君はずっと1人なんです。

 孤独な彼の顔はとても儚く見えて…。


『ヤクモさん。』

『ん?。ああ。レティアさん。まだ、帰らないのかい?。』

『もう帰るところですよ。ヤマトさん。もし、ご迷惑でなければ…一緒に帰りませんか?。』


 彼を誘うんです。


 それが、この1年の出来事です。

 

 2年生になり、ついにゲーム本編が動き出した頃からその影響が出始めました。

 まず、目に見えて現れた変化は…。


『よ。レティア。また、会ったな。』


 私の行く先々で待ち受ける…いえ、後から現れることもあるストーカー。【主人公】であるヤマト君とのエンカウント率。

 【運命】と言わんばかりに起こるゲームで見たイベントの数々は私の意思を無視して発生してしまいます。

 そのどれもが大なり小なりのエッチな要素を含んだモノであり、その度に私は…あられもない姿を皆さんの前に晒すことになるのです。

 何で、こんな男がモテるんですか?。

 愚痴も言いたくなるくらいの頻度で発生するイベントは毎日のように発生するのです。


 【主人公】の【運命力】とでも言うのでしょうか?。


 私を悩ませているのは、ある出来事が切っ掛けでした。


 その日の私は先生に頼まれた資料を運んでいたところでした。


『レティア。重そうだな。俺が持ってやるよ。』


 私に話し掛けてくるヤマト君。


『いいえ。結構です。お気になさらず。』


 階段を上っていく私の後を追ってくるヤマト君。しつこいですね。

 ん?。待って下さい?。この状況…見覚え?。いえ…既視感を感じます?。


 あっ…。


 これって…このイベントは…。


『きゃっ!?。』

『うわっ!?。』


 気付いた時には既に遅かったようです。

 階段を踏み外した私の身体はヤマトさんを巻き込み転げ落ちました。


『いてて…。ん?。何だ?。この柔らかいの!?。』

『んっ!?。』


 胸に感じる圧迫感…いえ、揉まれてる感覚。しかも、直接にです。鷲掴みですよ!?。

 私の上に覆い被さったヤマト君の手は私の胸をダイレクトに掴んでいます。

 

『き、きゃぁぁぁぁぁあああああ!!!。』

『がっ!?。』


 私は彼を突き飛ばして自分の身体を抱きしめ隠します。スカートは捲れ上がりパンツは丸見え。上の制服もボタンが取れてしまい下着がずらされて胸が露に…。恥ずかしさで涙が…。

 これが…エロゲ主人公のラッキースケベイベントですか…。

 うぅ…もっと早くに警戒すべきでした。

 こんな大衆の面前で胸を露出するなんて…。


『おい!。大丈夫か?。ヤマト!。って、レティアさん!?。』


 あ…。ヤクモさん…。

 これ…私の人生終わったんじゃないですか?。


『や、ヤクモ…さん。見ないで…下さい…。』

『………。』


 はぁ…。大好きな彼に変態だと思われてしまう…。そんなの嫌です…。けど、今の私には身体を丸めて大事な部分を隠すことしか出来ません。

 ゲームだったらCGで表現されている場面でしたね。まさか、こんな目に合うなんて…。


『レティアさん。大丈夫?。』


 そんな私の肩に制服の上着が掛けられました。ふわりと香るヤクモさんの匂い。安心できる…はぁ…落ち着きます。


『ヤマトは…大丈夫…みたいだな。』


 見ると、騒ぎを聞き付けたスズナさんとアンナさんに介抱されているヤマト君。


『ごめんね。失礼するよ?。』

『え?。きゃっ!?。』


 急に抱き抱えられた私の身体。

 目の前にはヤクモさんの凛々しいお顔。


『取り敢えず保健室まで運ぶから大人しくしていてね。』


 ヤクモさんは、アンリに目配せすると互いに頷き歩き始めました。

 この状況はゲームに無かった展開です。

 けど、ヤクモさんはいつも私を助けてくれる。

 イベントに巻き込まれた時には必ず現れて色々とフォローしてくれる彼にいつの間にかアンリも心を許した様子ですし。

 まぁ…夜になるとその日のヤクモさんとの出来事をアンリに話しているせいかもしれませんが…。


『レティア~。すまん!。役得だった~!。』


 ヤマト君のそんな声を聞いた気がしましたが今の私はお姫様抱っこされ、ヤクモさんの温もりを感じるのに精一杯なので無視しておきます。

 一応、舌をだし、ベーってしておきましょうか。


『災難だったね。レティアさん。』


 はぁ…。また助けてくれました。ありがとうございます。ヤクモさん。大好きです。


 ただ1つ、気掛かりなこと。

 それは…。

 今の階段で起きたイベントはゲームの…【レティアルート】…でしか発生しなかったイベントだった筈…ということです。

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