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02 雪の女王は笑わない


「なぁなぁ、椿希ってどっち派?」

 

 翌朝。登校したばかりの椿希に対し、そんな質問を投げかけてきたのは、彼の後ろの席に座る山倉秋都やまくらあきと

 

 高校に入学してまもなく2ヶ月。

 椿希が通う高校は自宅から徒歩圏内に位置しているものの、偏差値がやや高い。

 そのためか中学の同級生は大半が違う高校に進学してしまい、中学卒業の段階で、椿希は高校生活の友達ゼロスタートが確定していたのだ。

 

 霞も同じ高校に通っているものの、『表バージョン』の霞は、椿希と話していたらボロが出そうだ、という理由で、物心がついたときから外では『ただの同級生』を完璧に演じきっている。

 そのため、2人が同じ中学校出身だということは知られていても、実は幼なじみだということは今も昔も誰も気付いていないだろう。

 

 人間関係を再構築しなければならなかった新生活初日。少なからず不安を抱いていた椿希のそれを打ち砕いたのが、他でもない秋都だった。

 

 

「今日はなに?」

 

 言葉足らずの秋都の問いかけにもいい加減慣れつつある椿希は、そう言葉を返しながら、ほとんど中身の入っていない鞄を机の上に下ろした。

 

「2大アイドル総選挙!我が校が誇る2大アイドル、どっち派かって話!微笑みの女神か雪の女王か!」

 

 椿希が通う高校には、高校1年生にして生徒からの人気を二分するアイドル的人気の女子生徒がいる。

 

 1人は椿の幼なじみであり、外面だけは人気アイドル級の微笑みの女神こと春岡霞。

 そしてもう1人が、雪の女王こと同じクラスの冬月真白ふゆつきましろ

 

 ストレートのロングヘア、170センチはゆうに超える身長に長い手足。猫のような瞳と薄い唇。可愛いというよりも綺麗という言葉がしっくりくるような彼女は、周りに媚びない孤高の存在で、彼女が笑っている姿は誰も見たことがないらしい。

 そんな正反対の2人が『2大アイドル』と呼ばれているわけだが。

 

「別にどっち派でもない」

 

 椿希の興味なさげな返答に、秋都は驚いたように目を見開いた。

 

「え、椿希ってもしかして人生2周目?前世でスーパー美人な嫁でもいた?」

「お前はなんの話をしてんの?」

「だって男ならあるだろ?好きーとまでは行かなくても、可愛いなとかそういうやつ?ちなみに俺は真白さん派!霞ちゃんも捨てがたいんだけど、真白さんのあの『低俗な男をゴミのように見る目』が堪らんのよ…!ほら、俺ってMじゃん?」

「知らねぇよ」

 

 親しみやすい雰囲気を纏う霞は、周りから『女神様』やら『霞ちゃん』と呼ばれているが、真逆の空気を纏う真白は、同級生のみならず上級生からも『真白さん』と呼ばれている。

 秋都は入学以降、ほぼ毎日真白に声をかけているようだが、今までまともな返事が返ってきたことはないと聞く。

 そんな性格と圧倒的なビジュアルが相まって、媚びない女に憧れる女子生徒と、特殊な性癖を持つ一部の男子生徒から根強い人気を誇っているらしい。

 

「あっ、真白さん来た!ちょっと挨拶してくる!」

 

 1人で教室に入ってきた真白の姿を認めるなり、秋都は大きな音を立てて椅子から立ち上がった。

 真白のもとまでたどり着いたあと、なんらかの言葉を発しながら頭を下げる秋都が見えたが、真白は今日も、下げられた彼の後頭部を冷めた目で見下ろしていた。

 

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