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目覚めると最後の日だった

作者: els

何となく書いた物です。関東地方っぽい所をベースにして書いていますが実際の状況を取材している訳ではありませんので実際とは異なります。距離や時間・状況等は地図とGoogleマップを見ながら書きました。


20XX年長い眠りから目が覚めると地域住民には周知されていた最後の日の訪れだった。

近所の小学校に新型爆弾がセットされ、私の住んでいる地域直径300キロを焦土化する


爆心地特権で痛みも苦痛も感じずに死ぬことが出来る小学校施設への入場が許可されていた。

爆破当日、夕方6時から施設が開放され、古びた小学校施設への入場が開始する

扉の外では赤い産業党らしき人達が「生きる事を諦めてはいけません」と呼びかけをしているが、ほとんどの人達は聞く耳を持たず、施設内への入場をしていた。


施設内には既に小学校・中学校時代の級友達や同じ地域に住む親しい友人達の姿も確認できる。

施設の作りは昭和を彷彿させるような木造の大きな建物だ。

区画割がされていて、小さな子供達は優先的先に入場が許可されていたのか、出入り口付近は小さな子供達で埋め尽くされている。


事前応募制で家族の区画は決まっていて私と妻はそこに腰を下ろすと、私が来たのが見えたのか友人が声をかけてきた。

「おお!来たね、待っていたよ」


区画が決まっているはずなのだが、最後の日なのだろうか、各の区画を融通して入れ換え等が勝手に行われ知り合い同士で固まっている。


「みんなこっちに居るからさ、良かったら来なよ」


指さされた方向を見ると友人達が集まって最後の宴会のような物を始めようとしている。


「少し落ち着いたらそっちに行くよ」


そんな返事をして、自分の区画にシートを引くと寝転んで状況を整理する事にした。


なぜ私たちは死ななければならないのか?

なぜこんな状況になっているのか?


理解が出来ない。


横に居る妻はスマートフォンのゲームをしながら最後の時を待っている。


ここに来た人達の会話が聞こえてくる

「死ぬときは一瞬らしいね」

「何も考えずに死ねるのっていいね」

「あの爆弾が一瞬光って、俺達は蒸発しておわりらしいぞ」


隣でこんな会話がされている


やっぱりなぜ死ななければいけないのか理解が出来ない。


「あのさ、なんで死なないとなんだ?」

「ここに入る前にパンフレットがあったでしょ、そこに書いてあるよ」

妻からの回答は素っ気ない物で、彼女は再びスマートフォンのゲームを始めていた


区画から立ち上がりパンフレットを探しに行く。


入場したときに有ったパンフレット置き場には、既に1枚もパンフレットは残っておらず、見つける事は出来なかった。


再び家族の区画に戻り妻とここに居ない家族について話す事にした。


「息子はどうしたんだ?」

「家でゲームするって言っていたでしょう」

「娘はどうした?」

「彼女は遠方で就学中だから生き残るんでしょう」


「娘は生き残るのか?」

「彼女が決めた事だから良いのじゃないの?」


なんでこんなに投げやりなんだ?なぜ生き残ろうとしないんだ?


「ところで爆弾爆発は何時なんだ?」

「明日の0時って話だよ」


逃げる気になれば逃げられそうな残り時間だ


「なんで逃げないんだ?」

「事前説明で聞いているでしょ、今更逃げても無駄だよ、それにここが爆破されたらもう帰る家も無いのだし」

「娘が生き残る、彼女だけを一人にする訳には行かないだろう」

「でも、楽に死ねるなら今だよ」

妻はスマートフォンのゲームをしながらやる気の無い返答を続ける


今からここから150キロ以上離れて、理想を言えば山向こうに抜けられれば山脈が遮蔽物となって爆風などの被害に合いにくい。

交通状態はわからないが、今から家に帰り逃げる準備をして上手く山越えが出来れば逃げ切りだ


こうして制限時間6時間の脱出サバイバルが始まる。


■周囲からの反対と妻の説得

「おい久しぶりだな、最後の時だからあっちで一緒に飲もうぜ」

小・中・高と同じ学校に通った地域の友人に声をかけられた

「何でみんなこんなに落ち着いているんだ?」

「もう、焦っても仕方ないだろうよ」

「だってみんな死ぬんだろ?」

「ああ、死ぬな」

友人は表情も変わらずだったが、若干だが冷たい目をしていた。目には精気を感じられない。

「外で赤い産業党の奴等が生き残れと言っていたけどあれは何なのだ?」

「お前知らないはずないよな、あいつらはいい加減な情報を流しているだけだぞ」

「だからってみんな死ぬ事は無いだろう?」

「もういいや、俺はあっちで先に飲んでいるからお前も来いよ」


説明するのが面倒になったのか、友人は仲間の元に戻っていった。


「ママ、俺達が死ぬのも疑問だけど、子供達を残すのはマズイんじゃないのか?」

「子供が決めた事から大丈夫よ」


妻の反応がおかしい、教育優先主義の妻だったハズで、彼女は自分の子供が成人するまではしっかりと責任を持って育てると豪語していたのだが、子供達が決めた事だからと言って俺達が先に死ぬ事を認めてしまっている。


「いや俺は娘・息子の事が心配だし、もう少し一緒に過ごしたいと思っているぞ」

「お姉ちゃんは成人しているし、息子も高校生よ、大丈夫よ」


いやいや成人でも大学生で19歳だし、息子は16歳だぞ。親なしでどうやって生きていくのだよ


「やっぱり、ここが駄目なら娘のところに行こう!」

「今更何を言っているの?爆心地から遠くなるほど死ぬのが辛くなるのよ」

「大丈夫、今からなら爆破範囲から脱出できるよ」

「まぁ最後がパパと一緒ならどっちでも良いわ」


妻は渋々ながら脱出移動に同意する


小中高時代の友人が再び声をかけてきた

「よぉ!落ち着いたかな?あっちでみんな待ってるよ」

幼なじみや友人達に脱出の話すと絶対に引き留められてしまう


「バックに入れたと思ったとっておきの酒を家に置いて来ちゃったなぁ・・」

「酒なんてみんな持参しているよ、山崎の25年とかあるしさ大丈夫だよ」

「いや、最後の日にと大金はたいて買ったウィスキーが有るんだよ、さすがに後悔したくないからさ」

「そういえばおまえの家はここから歩いて15分くらいの距離だったな」


友人は少し不思議そう表情をしていたが、俺が言う事を聞かない態度を取ると諦めたようだ。


「妻と一緒に一旦家に帰って酒持ってくるよ」

「おう!待ってるぜ、大金はたいた酒も楽しみにしているからな!」


こんな感じで小・中・高と共にした友人と最後の別れを告げる。



爆弾爆発まで5時間30分


■息子の説得

爆心地の小学校を出る時も周囲の人に無駄な事は辞めようと声をかけられた

外でBBQをしている見知らぬ人達や気の良さそうなオバチャン達からも声がけがかかる

赤い産業党職員だけが、ビラを配り一人でも生存者を増やすための活動をしていた。


職員の所に近づき、ビラを受け取る。

ビラには、なぜみんな死にたがっているのかの理由は書かれていないが、避難ルートや避難所が書かれた地図が印刷されていた。

「あなた方は逃げないのですか?」

「私たちの使命は生きたいと思っている人を一人でも助ける事です。最後の最後までここでビラを配り続けます」

こんな事を言っているが、この人達も最後は死ぬのかな?と思ってしまった。

「でも制限時間があるでしょう?」

「私たち赤い産業党員のことは気にしないでください、まずは自分の心配をしてください」

職員に挨拶をすると俺と妻は自宅へ帰宅する事にした。


早歩きで自宅を目指す、途中の道には小学校に来るために乗ってきた車が無法地帯化して駐車してあった

もう帰る予定も無いのだから、路上には車ががギッシリと詰められていて人が一人歩くスペースが何とかある程度。


「思ったよりも時間が掛かりそうだな」

「来た時はほとんど一番乗りだったからね」


まだまま小学校校庭に入る為に人々が続々と集まって来るので私たちは逆走するような形で歩く為、思うように進む事が出来なかった。

来る人来る人からは、なぜ逆走しているのか奇特な目で見られ、今更何処に行くの?と声をかけられる面もある。

知り合いに会った時は、足止めされ説得されるかのように小学校に戻ろうと手を引かれる事もあったが、

理由を説明し再び戻る事を約束して永遠の別れを告げるのだった。


「あの人達みんな死ぬんだよな」

「うん、そうだね」


別れ際の嘘が何となく心に刺さる。


何事も無ければ徒歩15分で付く筈の道のりが30分近くを使用しようやく自宅に到着した。


「息子達は何処にいる?」

「多分自分たちの部屋でしょ、覗いてみれば?」


「ママは荷物をまとめてくれ、30分以内に出発したいから衣装ハンガーにかかっている物を適当に2~3日分くらいと車中泊になるから毛布なんかも頼む」

「わかったわ、あとは炊事セットかな」

「ああ、キャンプ道具とか車に積んでおいていくれ」


そして子供達はと・・双子の兄弟で別室で部屋を割り当てている。家は二世帯住宅と言う物で、下の階には親父夫婦が暮らしていて、弟は親夫婦の空き部屋を使い、兄の方は俺達世帯の一部屋を使っていたので、とりあえず弟の方を呼びに行く。


「おい、ヒカル、いるか!」

部屋からは返事が無い

「入るぞ!」

ドアを開けるとパソコンの電源が入っているだけでヒカルの姿は見えなかった

「くそ、こんな時に何処に行ったんだ」


階段を上がり俺世帯にある兄のアキの部屋をノックする

「アキ!いるか!」

「ん・・何?」

「ドア開けるぞ!」

汚い部屋の中で兄弟そろってゲームをしていた。


二人ともどうしたの?と言う感じでこっちを見ている

「お前ら二人だったのか、ヒカルがアキと一緒に居るなんて珍しいな」

「まぁ最後の日だからさ、たまには二人でゲームしようかって話になったんだよ」


この二人双子の兄弟だが、仲が悪く普段は言い争いばかりしている。

小学校くらいの時はお互い仲も良かったが、中学校に入りクラスが離れるとそれぞれの友人関係を構築するようになり、高校い入るとほとんど会話も無くなってしまっていた。


「お前ら、ここから出るぞ!」

「えっ? みんな死ぬんじゃないの?」

「なんで死なないと駄目なんだよ」


「だってゲーム実況でもみんな死ぬからって今日はイベントが沢山企画されているよ」

「ガチャだって引き放題だし、さっきからレアキャラ育てるのに一生懸命だよ」

「デッキ編成でヒカルと相談したりしてな!」

「アキのカード引きは異常だよ」

「10連続スーパーレアだったしな」

「今から実況チャンネル見ながら、スキルの振り方を考えるところだったよ」


ああ・・もうゲームだけして最後を迎えるつもりだったらしい


「とりあえずここから逃げるから、早く準備しろ!」

「えーー面倒だよ。みんな死ぬんだよ」

「馬鹿言うんじゃないの!、お姉ちゃんだけ生き残るって、さみしいだろ!」

「だってサクラは自分で決めたから良いんじゃね?」

「そういう問題じゃ無い!、早く準備しろ!パパは死ぬつもりはないぞ!」

「えっ!お父さん死なないの?」

「ほら!とっとと出るぞ!準備しろ!」


しぶる二人を叩き上げ、30分以内に出発出来るようにとにかく蹴飛ばす。

スマホを取り上げ、準備が出来たら車の中でゲームしていて良いと言ったら、即座に応じて各部屋に戻り脱出の準備を始めたのだ。


8人乗りのワンボックスカーの後部座席を潰し、荷物を積み込んでいく

着替えが3日分、キャンプ道具セット・それに毛布類、いつもの旅行とは違い医療品やDIY用の工具類も積み込んだ。

そして空きスペースが無いように自宅にあった食料品類を可能な限り詰め込む。

一番場所を取ったのが水だった、飲料水用のポリタンクはBBQ用に持っていたがそれでも数が足りないだろうと、空きペットボトルに水道水を詰め込み車内に詰め込んだ。

普段からミネラルウォーターは購入していたので飲料用としてはそれを使えば大丈夫だろう。

こんな状況化では水の確保が出来るのか不安だったし、不安が解消されれば捨てれば良いだけのこと。


息子達は15分ほどで出発の準備を終え、そそくさと車の中でスマホゲームの続きをやっていた。

男の子なんてこんな物だろう


少し時間がかかってしまったが、出発の準備が整ったのだった


爆弾爆発まであと4時間30分


■親父達はどうしたのか?


車のエンジンをかけ運転中に2世帯住宅の親夫婦の姿が見えない事が気になり、親父達はどうしたのかママに聞いてみる事にした

「パパ本当に忘れたの?お義父さんとお義母さんなら半年前から旅行じゃない」

「えっそうなのか?」

「政府の方で、みんなで死にましょうってキャンペーン始めた頃があったでしょう」


言い方がストレートだな・・実際はもっとやんわりした宣伝だと思うけど


「あのときに馬鹿らしいからって会社辞めて二人で旅行に出掛けちゃったわよ」

俺自身この辺の記憶が全くない

「えっとそのキャンペーンって社会的な混乱はなかったのか?」

「パパも何を馬鹿な事とか言っていたじゃない、最初は大騒ぎよ、でもTVの宣伝やネット広告が全てその系の物に変わって、TVで放送される番組も死後の明るい世界みたいな番組ばかりになったの」


政府によるマインドコントロールのような物が始まったのか?


「1ヶ月もするとそれが普通になっちゃって、2ヶ月目にはあらゆる物が無料で提供されるようになったの、この頃からみんなの様子が死にましょうって方向に変わってきたわ」


全然記憶にない


「パパも毎日好きな物だけを食べるようになったし、仕事もとりあえず行ってるみたいな感じになっちゃったのよ」

「そんな事もあって、お義父さん達は馬鹿らしいからしばらく帰らないって旅行に行ったままよ」

親父達夫婦らしいと言えばそうなんだろう、老後は旅行して数ヶ月は帰らないからな!って会うたび会うたびにそんなことを言っていたのを思い出した。

「サクラはどうするんだ?」

「あの子は自由に生きるって言っていたわ、大学に行っている間は困らないって言っていたし」

「いやだって、俺達が死んだら学費とか生活費とかどうするんだよ」

「それも忘れちゃったの?、もう最後だからってお金とかみんな娘の口座に送っちゃったでしょ」


そうだったのか・・


「親父達とは連絡取れているのか?」

「メッセージアプリでお義母さんから時々連絡があるわ、今は山形の方の温泉に居るみたいよ」

よし、最初の目的地が決まった。

山形に居るであろう親父夫婦のところだ!


■意外と荒廃していない世界

移動途中、コンビニに寄る事にした。

照明が付きっぱなしで誰も居ない。

駐車場に数台の車が止まっているが店内には誰もいないようだ

政府が無料で物を提供するようになった為、金目当ての強盗事件のような物が減ったらしいが、みんなが死ぬと言っている事で暴力事件のような物が増えたのだとか。


今日は最後の日なので、停車中の車の中では酒を飲んでいる人や外で堂々といちゃついているカップルの姿もあった。子供には見せられないな・・もう何もかも自由だ。


これらを警察が取り締まるような事も無いし道路は閑散とし、時々車が走っている位だ。


コンビニに入るとほとんどの商品が無くなっていた。

雑誌類は古い物が並んでいる。

死ぬキャンペーンが始まった事で、新刊がほとんど出なくなったのだろう。

酒類の棚はほとんど何も無い。

日用品の棚は少し空きがある程度で、多分ここで調達しても問題無かっただろう

飲み物類は少しだけ残っている程度、基本的にマズイ物は残るんだなと笑ってしまった。

食べ物類は転々と残っているだけ、これもマズイ物が残っている感じ。

お弁当類は生産が止まっているのか、全く無かった。


レジは封鎖され「ご自由にお持ちください・店主」の張り紙がしてあった。


まずくても食べられる物で保存が利く物を選びかごに詰められるだけ詰めると、コンビニを出発する。


次は行きつけのガソリンスタンドに寄ると

「いらっしゃいませ」

いつもの店員の声が聞こえビックリした

「現金でレギュラー満タンでお願いします」

「現金?レギュラー満タン入ります!」

店員は不思議そうな顔をしていた

「お客さん、買い物に現金は不要ですよ、政府から支払われますから」


酒を大金はたいて買った時と話した時に微妙な表情だった友人を思い出した。

そう、全ての物が無料だったのだ。


「そうだったね、久しぶりだし最後だから言って見たかったんだよ」

「ああ、なんとなく雰囲気出したいですよね」

「店員さんは小学校には行かないの?」

「ええ、もう凄く混んでいるって連絡がありましてね、最後は慣れた職場が良いかなと、それにお客さん来たらお客さん困るでしょ」

「凄いね、こんな日も働くんだね」

「お客さんはこれからどうするの?」

「家族でドライブしながら良い風景の場所で家族だけで最後を迎えようかなと思ってさ」

嘘なので心が痛む。

「人混みの中とか嫌いな人ですか?」

「そうだね、ごちゃごちゃしている所は嫌いかな」

ガチャっと給油機の止まる音がする

「レギュラー満タン入りました!」

「有り難う」

「それではまたのご来店おまちしております、いってらっしゃいませ!」


もう二度と来ることの無いガソリンスタンド、これが最後の別れとなり少しだけさみしい感じもしたが、笑顔の店員に送り出され、ガソリンスタンドを後にしたのだった。


カーナビの渋滞情報を確認するも、特に目立った渋滞は起きていないようだった。

しかし国道では暴走族やドリフト族達が、蛇行を繰り返していた為危険を感じ国道を通るルートを辞めることにした。大きな通りは無法地帯化していたのである。

もう警察の取り締まりは行われていない地域だ、最後の日はみんな自由なのである。


国道が使えないとなると他の道を使わなければならず、選択肢としては高速道路を使うルートとなる。

国道がこんな状態で、高速道路が平和とは思えないが、高速道路の側道を走り様子を見ることにしたのだ。


爆弾爆発まで あと4時間


■脱出ルートの選定

関越自動車を通り、関越トンネルを抜け新潟に入るルート

関越から上信越道経由し北陸道に出るルート

北関東道を通り、東北道に入り山形を目指すルート


現状はこの3ルートが考えられる。一度東京を目指すのは時間的に無理だからだ。


・北関東道を通り、東北道経由で山形を目指すルート

普段の旅行ならこのルートが最適だ、しかし同じような脱出組の渋滞にはまった場合、逃げ道が何処にも無くなってしまう。北関東道が爆心地半径150キロ圏内に丸かぶりな為危険なルートとなる


・上信越道から北陸道を目指すルート

無駄なルートであるが、関越トンネルを利用せずに日本海側へ抜ける為のルートだ。

速度は出せないが山と言う遮蔽物が沢山ある事から、たとえ150キロ離れられなくても、生き残れる可能性が高い。新型爆弾の衝撃にどの程度山やトンネルが耐えてくれるかが不安な所である


・関越自動車道を利用しそのまま新潟を目指す

山形を目指すルートとして、新潟経由で山形に入る事も考えられる。

ただしこのルート最長のトンネル関越トンネルを利用しなければならない。トンネル火災でも発生していたら絶望的な事態になるのだ。


3ルートを協議した結果、上信越道経由で北陸道を使い、新潟を目指すルートに決定した。


本庄児玉インターチェンジから関越自動車道に乗る。

ETCレーンを通過しようとしたが、ゲートが開きっぱなしで特に料金が取られるような事はないようだ。車載機も何も反応しなかった。


事故車などがありもっと殺伐としている状態かと思ったが、予想は外れ現在はスムーズに走行できている。


爆発まであと3時間30分、今からどこまで移動できるかが勝負だ。


高速道路を走行していると、下り車線側は時々車を見かけるが、上り車線側には車を見ることは無かった、これからわざわざ爆心地に突っ込んでいく車も無いのだろう。ガラガラの高速道路を飛ばしていくのだが、時々レーシングカーのような改造車が異常な速度で走っているのが見られ、走行車線を走っていれば害はなく彼らは関わりを持たないかのようにぶっ飛んでいく。


関越自動車道では上り車線側を走っている車を見かける事は無かったが、上信越道に入ると上り車線側にもちらほらほ車が確認出来た。


多分、上信越から関越に入り新潟方面か北関東道を目指す車なのかもしれない。

彼らが今後どうなるのかは、脱出組ならば生きて脱出する事を祈りたい。


上信越道は山岳地に作られた高速道路でアップダウンが厳し、そのため最大積載量近いこの車ではスピードが全く出なかった。

下り坂ではソコソコスピードが出るが、急な上り坂ではMAX80キロが限界だったのだ

エンジンはうなりを上げ、登坂車線を利用して高速道路を上っていく。


のろのろと走っていたら、やはり交通トラブルに巻き込まれる事ととなったのだ

最後の日であるので警察が機能していない。

ママも言っていたが暴力事件が多発しているとの事で、多分今の状況もその一つかもしれないのだ


VIPカーと呼ばれる派手な改造をした車が迫って来るのが確認できた。

ママと息子達に外から見えないように隠れる事を指示すると、シートを倒し、毛布をかぶり外からは俺一人が運転しているような状態を作る


一度VIPカーは併走しこちらの様子を見ている感じであったが、できるだけ顔を合わせないように無視するかのように走行を続ける


爆音を響かせ走るVIPカーは一旦加速し、同じ車線に入ると徐々に速度を落としていった


どうやらこっちの車を止めさせるらしい


限界まで車高を落としたVIPカーはタイヤがはみ出し、ハの字を切っている

マフラーのような鉄パイプからは爆音を響かせ、マフラーの意味があるのか不明だが

そのデザインから暴力的な何かを感じる

登坂車線終了の看板が見えたのを確認すると、俺はアクセルを全開で踏み込みハイブリッドカーの加速力を信じて一気にVIPカーを追い越す事に成功した。

VIPカーの直管マフラーでは低速トルクが全く出ず初期加速が悪い事を知っていたからだ。

おまけにギリギリまで下げた車高にハの字にはみ出したタイヤではタイヤと路面との接地面積がとれず、さらにサスペンションが正常に機能していない状態では、高速安定性が著しく低下するのである。


登りが終わり下りとなると、鈍足だった俺の車もソコソコのスピードが出るようになる。


やはりさっきの車が煽ってきたのだ。こんなところで止められて爆発に巻き込まれたのでは脱出の意味が全く無いからだ。


しかし相手の車は高級車と呼ばれ、大型エンジン5000CC、こっちは2リッターハイブリッドカー、根本的に勝負にならない

次に追い越されたら確実に逃げ場がなくなってしまうのだ。


しばらくVIPカーはこちらの様子を見ていたので、息子達に指示を出す

「アキ!ヒカル!、今ヤバイ状況だ、後ろの車がわかるよな」

「うん」

「あれを何とかしないと無事に逃げ切れない」

「お父さんどうすれば良いの?」

「座席の下に2Lのペットボトル入りの水があったよな、それを半分捨てて、中に小麦粉を詰めろ!」


食料品として積んだ小麦粉だ。本当はペンキ等が良いのだがそんな物は積んでいない

色がついて相手の視界を妨げる物が有ればそれでいい


窓から水を捨てた時点で、VIPカーはこちらの攻撃と見なしたのだろう

煽ってくる距離が半端なく近くなっていた。

幸いな事に高速道路と言っても少しだけ峠道のようになっているので、不安定なVIPカーではこちらの車を追い越すまではできないようだ。

「お父さん出来たよ! 2本作った」

「よし、ヒカルは後ろの席から鉄アレイを用意しろ!」

「うん、わかった」


車が上り坂に進入したらアウトである、なんで鉄アレイを積んだのかは・・まぁ何となくこんな自体を予想していたから、と言うと話が上手すぎる。

実際は重し代わりだ。キャンプ中に荷物が風に飛ばされないよに重しで固定する事が時々あるので、それように4個×3キロを積んであった。


「パパに鉄アレイを全部よこせ!」

「はい」


後部座席から鉄アレイが届けられる


急な下り坂効果で時速は160キロほどまでになっていた。

猛烈な勢いで煽ってくるVIPカー、ついにバンパーをプッシュされる状態になる。

車体重量がこちらの方が重い為、何とかバランスを保っているが、妻がもう辞めてと悲鳴を上げていた


後ろの窓を開け、タイミングを見る

VIPカーはハイビームで車線を半分ズラしながらこちらの車を煽り続けている

「アキ!今だ!」

アキは小麦粉入りペッドボトルを放出


時速160キロで投げ出されたペットボトルはVIPカーに当たり炸裂すると白い液体を車のフロントウインドウにまき散らす。


急に視界が奪われたVIPカーは減速していく、粘着している小麦粉は車のワイパーでも中々取る事が出来ないのだ!


トドメの鉄アレイを使う事は無く、最後の日と言っても人殺しまではしたくないのが心情だ。


ただ、このまま高速道路を使い続けるのは危険と感じ、次のインターチェンジで下道を使用するルートに変更し、碓氷軽井沢インターで上信越道路を降りる事にした。


さっきのVIPカーが復活して追いかけて来たら今回と同じ手が通用するとも限らないからだ。



爆弾爆発まであと3時間


碓氷軽井沢インターから国道18号を目指す。

有名な観光地軽井沢を通過するルートだ。

ホテルや別荘があるが、不思議と電気が付いている建物が沢山ある。

そう、ここでも最後の時を待つ人々が居るのだろう。


高級ホテルの部屋の明かりもほとんど点灯しているし、別荘地の明かりもシーズン中よりも多く見る事が出来る。

「こんな時も働いているのかな?」

「ホテル従業員とかは、ホテルで最後を迎えるのかもね」

「別荘で最後を迎えるって金持ちだからかな?」

「お義父さん達みたいに早々に判断した人達は別の所に行っていると思うから、もしかしたら本当の持ち主じゃないかもしれないわ」


そうか・・空き別荘なら最後に他人の別荘を勝手に借りてそこで最後を過ごすとか有るかもしれないし、事前に解放された可能性もあるよな。

「高台にあるホテルなら爆発も良く見えるんじゃないかな」

「お父さん、爆発まであと2時間30分だよ」

息子のアキからそんな一言が告げられた

車は現在国道18号を走行中。

渋滞は無いが、観光地だけあって路肩駐車が目立ち、こんな所で最後を迎える人達も居るようだ

雪が降る地域でもあり道幅は広いが、それでもスピードを出すことが難しい状態になっていた。

「少しヤバイかな・・」

するとカーナビの交通状態を示す表示に変化が現れた

「おいおい・・こんな時に」

「アキ・ヒカル、道の状況をスマホで調べてくれ」


高速道路の状況をスマホで調べて貰う事にする。これはカーナビの情報よりもより細かく正確に調べる事が出来るからだ。


「お父さん、上信越道一部閉鎖だって、更埴ジャンクションまで通行不可になっているよ」

カーナビの表示の×マークが表示され、高速道路が黒ライン表示に変化した。

「駄目か・・」

走行可能な経路を探し、最短の長野インターチェンジを利用するルートに切り替える

途中は峠道だ。この車でどのくらいスピードが出るのかわからない。


「ちょっと怖い思いをするかもしれないけど、スピード出すぞ」

「はーい」


浅間サンラインを走り、真田東部線・長野真田線にはいる。浅間サンラインは観光道路であり綺麗に整備された道路だ、夜の21時過ぎでは他に車の姿を見る方が珍しい。

田舎道が続き、このルートは正解だったかもしれない。下手に国道を使うよりも車の数も少なく平和な感じだった。

しかしその平和な感じも長野真田線に入ると豹変する。

難所と思われていた峠道なのだ。


車の速度は60キロも出せないのに、峠族と呼ばれるドリフトや峠道を攻めている車に遭遇したのだ。

平和な時で有れば彼らも道を譲り、一般人通行の邪魔になるような事はほとんどしないのだが、今日は最後の日なのか・自慢の愛車を道に並べ、峠道は一種のお祭り騒ぎ状態となっていた。


道を塞ぐ若者に車を止められてしまう、跳ね飛ばそうかも考えたが、普通の青年だったので大人しく停車したのだ。

「オッサン、この先は俺達のチームが貸し切ってるから通れないぜ」

「そりゃ困るよ、長野ICまで行かないとなんだ」

「駄目だ、今日は最後の日だからな、警察も来ないし俺達の自由にさせてもらうぜ」

そう言うと、若者は車で道を塞ぎ車の中に戻ってしまった。


ここで引き下がる事は死を意味する。ルートを変えて長野インターまで行くには一旦町まで降りなければならないからだ。

武器になりそうな物は有ると言えばあるが、人を傷つけたくない。

そんな甘いことを言っていられる状況ではないのだが、出来れば避けたい事だ。


アキとヒカルに粘着テープを持たせ、さっきの若者が一人で居る事を確認すると

即席で作った唐辛子・わさび・こしょうなどを混合した液体を準備する。


若者の乗った車に近づくと、若者は不機嫌そうな顔で

「オッサン、まだ居たのかよ!早く帰れよ」

と強気な感じで言ってきた。


覚悟を決めて、窓から先ほどの混合液を若者の顔いブチまける。

「オッサン!何をするんだ!!!!」

若者が激しく抵抗するが、視界と呼吸を奪われ自由がとれない。

すかさず車のドアを開け、車から引きずり下ろすと、そのまま体重をかけ身の自由を奪う。

「ゲホッゲホッ!!くそー!こんな事して無事に済むと思うなよ!」

と言っているのだと思うが、彼は全く喋ることが出来ず、うーうぅーゲホゲホ言っているだけだった。


アキとヒカルに粘着テープで両手・両足を固定させ、口にも粘着テープをぐるぐる巻きにする。


彼の持ち物からスマホを取り出し、完全に破壊。

ママにワンボックスカーを運転させ、俺は若者の改造車に乗り込む。助手席には若者をぶち込み、いざ峠越えが始まった。


彼の改造車は昔のFRタイプだ。

ドリフト仕様なのかゼロヨン仕様なのか良くわからない、多分ゼロヨン仕様だったものをドリフト仕様にした物なのだろう、ラインロック機能が付いていたりして訳がわからない

試しにブレーキを踏んだ状態でラインロックスイッチを押して、機能を有効にする


フロントのブレーキが有効なままリアブレーキが解除されるんだな

もう一度ラインロックボタンを押すとリアブレーキが有効となる


つま先でブレーキを踏みながらアクセルを煽り、クラッチを繋ぐとリアタイヤが空転を始め摩擦熱で黙々と煙りが上がり始めたのだ。


これをヒントにある作戦を思いつく

こんなことをするのは久しぶりだ。上手く行くだろうか?


自家用のワンボックスカーだけで最初は行こうと思ったが、若者の車が一緒の方が安全にこの峠道を越えられると思い作戦を実行する事となった。


若者は隣の席で粘着テープでぐるぐる巻きにされ、身動きが取れない状況だ

暴れる青年だったが、呼吸が難しいのか徐々に大人しくなる。

彼の帽子を拝借し、できるだけ彼に似せるようにして彼の車を動かし始め

そんな車を運転しつつ地蔵峠と呼ばれる場所に侵入した。


峠道付近ではドレスアップされた改造車達が自分の順番を待つかのように待機中

そんななか俺達のワンボックスカーが車列を無視するかのように侵入。

クラクションを鳴らされたり、罵声が飛んできたりもしたが無視をする


ママが運転するワンボックスカーを先に行かせると、若者の改造車を行ったん止め、路上でバーンアウトを開始した。


白煙で真っ白になる峠道、フロントの制動力を徐々に緩めると改造車は白煙をまき散らしながらゆっくりと移動していく


「おう!あれはチキンの車だったよな!」

「あの野郎、下で道塞いでるはずだせ」

「あいつは車だけは立派で動かせねぇ腰抜け野郎チキンだったけどな」

「立派にバーンアウトしてるぜ!、本人かよ」


「まぁ奴にこんな事されたら、俺達も血が騒ぐな!」


二つほどのカーブを白煙まき散らしながらゆっくりを進む改造車

ドリフトではなくパワースライドと呼ばれる、なんちゃってケツ振り走行だ


ギャラリーをしていた連中は大いに盛り上がっている感じで、ママが運転するワンボックスの事など忘れているようだ。


彼らも真っ白に煙をまき散らす車に、俺が運転しているなんて事には気が付かなかったのだろう

ドリフト大会は一時中断された峠道を通過する10分間特に問題も起きず無事に通過することができたのだ。

若者の改造車は見えない所に停車させ、俺はワンボックスカーに乗り換えて長野ICを目指すこととなった。


爆弾爆発まであと1時間(現在爆心地から105キロ)


長野ICから上信越道に再び乗ると、あとはひたすら日本海側を目指し北上するしかもう手立てが思いつかなかった。


現在時刻23時、あと1時間でどこまで行けるか勝負となる。

高速のゲートは閉鎖されたままだったが、かまわずゲートを突破した。

最後の日だから多めに見てくれよなって感じ


高速道路は真っ暗で車のヘッドライトの明かりだけで走行している

落下物が合っても多分よける事は出来ないだろう。

そんなこともあり、時速80キロ程度に抑えて走行するしかなかった。

高速道路にのり30分ほどで妙高高原を通り過ぎる

いくら山岳地と言えまだここでは危険だ。

爆心地から130キロ、ギリギリ安全圏かもしれないが、標高が高いので衝撃波の影響や爆風の影響をモロに受けるかもしれないからだ


真っ暗な道、時々落下している大きな枝やゴミ類に動物の死骸など

普段の高速道路ならほとんど見る光景ではないが、これが閉鎖した理由なのかもしれない。

多分通常の保守業務が行われていないのだろう。


こんな中を高速で走行するのは自殺行為かもしれないが、爆弾爆発まで残り30分、できるだけ遠くに逃げなければならないのだ。


色々な不安要素もあったが、無事に北陸道上越ジャンクションに到着する事ができたのだった。


爆弾爆発まで残り5分


ここから新潟へ行くルートを取るのを辞め、一旦石川県方面にルートを取る。


そう爆発の時に衝撃波などがどのように作用するかわからないから、一旦春日山トンネル内で待機する事にしたのだ。


トンネルが崩れてしまってはどうにもならないが、遮蔽物が合った方が幾分マシだろう

トンネル内は通常通り照明が点灯し、同じ事を考えているであろう車が既に停車していた。


すると他の車から人が降りてきた

俺は手元の鉄アレイを握り警戒するが、見た感じ普通のオッサンだ。

「あんた達関東から来たのかい?」

「そうですけど、何ですか?」

「いや何でも無いんだけどさ、関東の人達も大変だなって思ったのよ」

「えっ?どんなことで大変なんですか?」

「関東の人達は最後の日とか言っているでしょ、俺達から見たら関東最後の日なんだよ」

「えっ?」


爆発の時間となった。


東の方の空が巨大な雷のように一瞬明るくなる。

閃光が発生したと思ったら、かなり時間が空きドーンと爆発音が聞こえた


感想を言えば大きめな花火の音って感じ


その後しばらく静粛が続くが、やがて周囲を切り開くかのような衝撃が走った

山頂の木々が揺れ、通常とは違う地鳴りが響き渡る

体感したことの無い突き上げるような地震が発生し、地面が揺れ続いた。

深夜であるが、月の光で照らされた雲が円形状に吹き飛ばされるような形に変化し、上空の気流の乱れがここからでも確認出来る。


月明かりだけなので詳細はわからないが、ドクロ雲のような形が形成されているようにも見え


そして遅れてくるように爆風が通過したのだった。

幸い新潟方面は山脈にガードされ、衝撃波・爆風の影響はほとんど受けない感じとなるが、吹き飛ばされた大木であろう木々が爪楊枝のように吹き飛んで空を舞っているのが見えた。


次に熱風が周囲を襲った、熱くて火傷するような温度ではないが、深夜としては考えられない位の熱風が吹いてきたのである。この熱風はしばらく続き、現在も吹き続けていた


そして関東があると思われる方向は夕日が落ちたかのように真っ赤な空となっている。

おそらく群馬側の山の木々は破壊され燃えさかっているのだろう。


冬に新潟が豪雪なのに関東はほとんど雪が降らないのと同じで、新潟群馬をまたぐ山々に守られたような物だ。


一時間ほど経過すると振動や爆風は落ち着き、関東の方向は夕日のように真っ赤なままだったが、次の行動に移る事にすると、さきほど声をかけてきたオッサンが再び声をかけてきた。


「あんた達何処に行くんだい?」

「これから山形・東北と北へ行ってみたいと思います」

「そうか大変だな、ここで会ったのも何かの縁だ、俺はこういう者だ何か合ったら連絡くれ、力になるよ、まぁ元気でな。」


名刺を手渡されると、オッサンは石川・富山方面に行ってしまった。


「お父さん、スマホ使えなくなったよ」

「関東が無くなったのかもな」

「復活するかな?」

「お前ら学校とかどうするんだろうな?」

「吹っ飛んじゃったよね、わからないよ」


その後、名立谷浜SA・ICを目指して移動を開始したのだった。

ここまで来ると普通に人々の行き来があった。

サービスエリアも普通に営業しているし、関東では全て無料だったのに、ここまで来ると貨幣制度がきっちり復活していた。


俺の車のナンバーを見て変な顔をする人が時々居たが、特にケンカになるような事はなく、しかも平和な状態で拍子抜けした。


時々同じ管轄のナンバープレートを見る事もあったので、同じように避難脱出組なのかもしれない。

SAのフードコートでは公共放送が流れている。

ただ、関東地方の爆発の情報は一切流れず、今朝あった爆発の原因は自然災害による物との情報になっていた。

あれだけの爆弾だったので、電波障害や一部山の通信施設が破損したり等の害が出ていのかもしれない。

TV放送も今のところ公共放送だけな感じだが、公共の場のTVチャンネルを変える訳にも行かないので、放送されている番組を眺めながら朝食を取る事にした。


放送のテロップには大規模通信障害が発生中のメッセージが流れているので、周囲にスマホで情報を収集しているひとの姿も無かった。


こりゃ娘や親父に連絡を取るのは無理かな。

早く無事を伝えたいが、現状通信手段がない

娘や親父達からすれば俺達はさっきの爆発で死んでしまっていると思われているから早めに連絡は取りたい。

「パパ、一応メッセージアプリにメッセージ送っておいたから、通信回復したら送信されるのかな?」

「いつもと違うからどうなんだろう?一応色々試しておいて」

「うん、わかった」


息子達はゲーム中か・・こんな時でもゲームは動くのだな


「お前たちのゲームは普通にできるんだな」

「ここの無料Wi-Fi使ってるから、さっきからネット上の友達と普通に遊んでるよ」


えっ!、通信が普通に出来るのか?

そうか、電波を使う携帯電話ネットワークは混乱して通信不可になっているが、無料Wi-Fiはこのサービスエリアの親機経由だ。親機自体は光ファイバーケーブル等の有線通信設備なのかもしれない!


スマホの設定をサービスエリアの無料Wi-Fi接続に切り替えメッセージアプリを起動する

「ママ、オンラインになったぞ!」

「本当だわ、私のゲームも動くわ!」

いやそこじゃないって・・


「あっ、お義母さんから返信メッセージが届いているよ!」

早朝にもかかわらず母からメッセージが届いたのだ

無事を喜ぶメッセージとともに現在滞在している旅館の場所が送られて来た。


「娘はまだ寝てるな」

「あの子は気にしないからね」


とりあえず距離的に親父達と合流だな、その後、娘の所へ。


仮眠を取り夜明けと共に山形方面に向かう事にしたのだった。



最後までお読み頂き有り難うございます。

短編ですのでここで完結です。


この内容で続きが気になる方がいらっしゃいましたら、いいね・評価して頂ければ

別作品としてキャラや背景設定を見直して連載出来る形にするかもしれません。


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