二段目 狼男
「ハァハァ、ごめん待たせた!!」
「大丈夫だよ、それよりも花子さんにでも会った?」
「え、なんで分かるの!?」
「何年の付き合いだと思ってるの?」
「それもそうだね」
「それで、トイレの花子さんってどんな感じだった?」
「えーっと、かくかくしかじかイチキュッパ省略」
「へぇー怪異社会も大変なんだね」
「ねぇ〜!」
「それじゃ、私はこっちだから」
「知ってるよ、じゃあね感無」
「バイバイ見霊」
新入生も入学し、春も終わり頃
私こと、怪異谷 見霊
霊感を持て余している高校二年生は、
少し肌寒い日暮れ親友であり唯一の友達
幽霊 感霊と別れ、一人で帰路を辿っていた。
ウワウォォォォン
狼の遠吠え?いや、流石にないか
でもここら辺で犬飼ってるお家いたっけ?
【人狼】
昼間は普通の人間が、夜間に狼に変身し人間や家畜などを襲う。主に満月、今となっては月明かりによって
狼に変身したり、自我が有ったり無かったりと
様々で、創作物のお話しでは凛々しいイケメンである
ことが多い。
目の前の道を左に曲がれば家が見えるという所で
2m程ある人影が右側にある公園から現れ、
自分の前に立ち塞がる。
意味が分からず立ち止まっていると時間ともに
月明かりに照らされてその姿が見える様になる。
「イケメンだ」
最初に放った言葉は、相手からしたら意味が分からないだろう。しかし私は自他ともに認める面食いだ。
しかし恋愛対象とは違う、顔が好きなのだ。
相手がイケメンな事はこの際どうでもいいが
霊感関係無く思ってきた。
目の前にいる約2m程の男は狼男、人狼と呼ばれる類い
だった。
「えーっと、褒めて下さるのは嬉しいですが道に迷って
しまって、というか怖くないんですか?」
「いやぁ、さっきも貴方と種族的には違う同類に
会いましたから」
「一日に二回も!?ご愁傷様です」
「あっいや、確かに珍しいですけど偶にあるんで」
「所で何処に向かってるんですか?」
「ここなんですけど…」
「成田空港!?!?」
「そうですそうです、はい」
「待たせてる人とかって」
「いますけど、」
「何処で待ち合わせしてるんですか?」
「成田空港に午後8時です」
現在午後6時56分、家から車を使って約20分
まだ大丈夫ではあるんだけど………
「あの、変身って解けますか?」
「30分はこのままですかね」
10分は余裕があるのか無いのか?道に迷う位だから
「その相手とは連絡取れますか?」
「取れるので、少し電話してみますね」
「どうでしたか?」
「彼は同じ出身の東ヨーロッパで同じワーウルフで
私が彼に面倒を見てもらってる感じでね
タクシーで30分後に着くからその公園から動くなって、
君には感謝しているよ無事に何とかなりそうだ」
「いえ、そういや自己紹介してませんでしたね
私は怪異谷 見霊です」
「私はウィリアム・ジョーズだ、改めてありがとう見霊」
「いえいえ、こちらこそ貴重な体験でしたからウィリアムさん」
「お礼といってはなんだが、次に日本に来た時は
君の願いを一つ叶えて見せよう、出来る範囲で」
「出来る範囲で、ですかフフッ」
「そうだねハハッ」
こうして私はウィリアムさんと別れ、直ぐ近くの家に
帰るのだが、こっぴどく叱られ道に迷った外国人の
手伝いをしていた長い説明をさせられるのだった。