13.そして森へ帰ります
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最終話になります。
結果として、ゼロスの杖は物凄く役に立った。
まずオルフが光魔法の“祝福”を使ってドラゴンの弱体化を図った後にポーションをイッキ飲みして光の剣を取った。
そうしてアキレウスと2人で時間稼ぎをしている間にゼロスが杖を使って宙にとんでもなく精緻な魔方陣を書いた。
(あんなの誰にも真似できないだろうとフィオナはドン引きだった。)
その軌跡は金色に光輝いて、ゼロスが魔力を注ぎ込むと“祝福”の上位互換になる“光臨”…光を呼び降ろして闇の魔力を一掃する魔法が発動した。(フィオナも気持ち程度貢献した。)
闇の魔力は圧倒的な光の魔力に何重にも封じ込められた末に浄化されて、空間の歪み共々この世界から消滅した。
限界まで動いた身体は重たくて、休んでいる間にすっかり夜になった。
空には何事もなかったかのように星が輝いているけれど、辺りに目を向ければ王城の中は瓦礫の山になっている。
一番城の中に詳しいアキレウスが厨房から酒と食糧を持ってきたので、そのままダラダラと食事になった。
ゼロスは少し離れたところでドラゴンに肉をやっている。
フィオナはふと気になって隣に座っているオルフを見た。
「…オルフは、これから…どうするんですか?」
オルフはもともとロゼッタ王国の騎士だから、この辺りに住んでいるのだろう。
国王はあんなことになってしまったが、状況を考えればオルフが咎められることもないような気がする。
フィオナがすっかり元通りになったボソボソ声で聞くと、オルフはえ?と言って固まってしまった。
「…ここには、もう…知り合いも、いないし…私は…森に、帰るけど…」
フィオナの兄弟はまだどこかに居るのだろうが、今更会いたいほど親しい人もいない。
さっさと森に帰って引きこもりたい気持ちでいっぱいである。
フィオナがかなりの時間をかけてそう言う間、オルフは何も言えずに口をパクパクさせていた。
フィオナがどうしたんだろうと不思議に思って首を傾げると、オルフが急に身を乗り出してきてフィオナの両手を握った。
「…フィオナは私を置いていくんですか?」
「…はい?」
フィオナはオルフが急に迫ってきてビックリして目をパチパチさせた。
目の前のオルフの顔は酷く哀しそうに歪んで、見る見るうちに涙が盛り上がってきている。
―――なんで泣く?!
逆に固まってしまったフィオナは唖然と頭一つ上のオルフの顔を見上げていた。
「そんなの、駄目です。フィオナに捨てられたら…私は、生きていけません。」
―――え、まって?置いていくとか捨てるとか何の話?
…確かにオルフには助けてもらったけれど、その前に助けた記憶もあるけど…拾ったら犬じゃないんだからいつの間にそんな重い責任を課されたの?!
頭の中でぐるぐると考えている間にもオルフの顔はどんどん近付いてきて、必死の哀願が続いている。
「…嫌なところがあるなら直します。私に出来ることなら、何でもします。死ねって言うなら今すぐ死にます。だから、お願いだから、私を捨てないで…」
――――近い、近い!そしてめちゃくちゃ人聞きが悪い!!
オルフがポロポロと泣いている。
フィオナと離れたくなくて。
まだ初めて会ってから一月もたっていないというのに、いつの間にこんなに距離が近くなってしまったのか。
――――そして私も、離れがたく思っている。
…拾った犬には責任を持たなくてはいけない、ということだろうか?
「…わ、わかった。…わかったから。」
フィオナが苦笑しながらそう言うと、感極まったらしいオルフはぐちゃぐちゃの顔のままでフィオナをその腕の中に抱き込んだ。
仕方がないのでフィオナが背中に手を回してポンポンと叩いてやるると、オルフはフィオナの肩に顔をつけて泣き続けた。
「ありがとう…フィオナ…大好き…」
「ちょ…まって、何か…」
真っ赤になったフィオナがなんとか解放されようともがきだしたけれど、絶対に離したくないオルフのその腕は力強すぎてびくともしない。
「うわー…ガチの泣き落とし、初めて見たわ。」
「私はオルフェオが笑うのも泣くのも今日初めて見ましたけどね。」
ゼロスとアキレウスが半ば呆れながら話しているのが少し向こうから聞こえてきた。
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「…たまごが焦げてる。」
眠そうにテーブルに伏せていたゼロスは顔だけを上げて置かれたオムレツを一瞥すると、オルフを睨み付けた。
「すいませんちょっと焦げちゃいました。」
「…ゼロス様…子供みたい…」
オルフはにこにこと笑いながら謝ると、聞いていたフィオナがため息混じりに呟いた。
あの後、フィオナとオルフはアキレウスに後を任せて逃げ…ゼロスと一緒に城へ帰って来た。
なので、後の事は知らない。
不安材料もなくなったのでもう少し落ち着いたら遊びに行くのもいいと思っているけれど、そのまま忘れるかもしれない。
城に帰ったオルフはゼロスに頭を下げて、ここに置いてもらえることになった。
現在フィオナの指導の下に家事を仕込まれている。
(魔法で家事ができるのはこの城にすむ条件なんだそうだ。)
「フィオナさあ…そいつの味方しすぎじゃない?」
「…ゼロス様が、くだらないことばっかり…言うからですよ…」
「はあ。こんなに大きくなるまで育てたのになあ」
「…育てられては、いません。」
フィオナは朝食のスープを並べながら器用につん、と向こうを向いた。
「40過ぎての反抗期…」
ゼロスがボソッと言うとフィオナがぎろっと睨んだ。
「そうか、フィオナは私より年上なんですよね。」
オルフが無邪気に言うと、空気が固まった。
年上というか、世代が違うというか、時代が違うというか…
フィオナは怖いもの見たさで恐る恐る訊ねることにした。
「…オルフは、何歳ですか?」
「21歳です!」
うわー…という何とも言えない空気が流れた。
――――私が追放された時点では赤ちゃんか…
オルフだけがにこにこと笑っている。
「フィオナ、魔法使いになっといて良かったな。さもなきゃ犯罪だよ。」
「…私の年は…もう、忘れました…」
遠い目になりながらそう言って、朝食を食べはじめる。
フィオナの作る魔法で完璧に管理された料理とは違っているけれど、少し焦げたオムレツも野菜のスープもこれはこれでおいしい。
食事を終えると、オルフが洗い物魔法に挑戦しはじめた。
挑戦を続けているけれど、まだ光属性以外の魔法は難しいようだ。
結局オルフは普通に洗い物をはじめたので、フィオナも横に並んで食器を乾燥させながら棚にしまうことにする。
「…まあ…ゆっくりやれば、いいと思います。」
フィオナはなんだか楽しくなってきて、少し笑っていた。
不思議そうにフィオナを見るオルフにゆっくりと口を開く。
「…時間は、いっぱい…あるので。」
オルフが目を見開いた後、弾けるように笑顔になった。
そのまま隣にいるフィオナに飛びついてくる。
目に見えないしっぽがブンブンと振られているようだ。
「フィオナ、大好きです!」
「…それ…毎日、言ってませんか?」
頭の上に顔を擦り付けられているフィオナが赤くなりながら呟く。
「本当の事なので何度でもいいます!」
オルフはキッパリ言って、フィオナを掴まえているその腕に力を込めた。
包み込まれている腕や背中からオルフの暖かさが伝わってきて、フィオナはなんだか胸を掴まれたようにぎゅっと苦しくなった。
だから、色々と見えないように、ぎゅっと目をつむる。
「…私も…好き、ですよ。」
――――それを聞いたオルフは、驚いたのか少し固まったような気がした。
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この後21時におまけを投稿して、完全に終わります。
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