0ー2話 一瀬さんの理由と事故の詳細
後書きに裏設定を入れています。
「響お兄ちゃ〜ん‼︎目が覚めたんだね‼︎」
朱里が抱きついてくる。今の俺にはほとんど力がないから、ベッドにいなかったら受け止め切れなかっただろう。
「あぁ。朱里心配かけてゴメンな。あと、いろいろありがとう」
そう言って朱里を撫でる。もし犬の尻尾があったら千切れそうなくらい振るだろうというほどに喜んでいる。
「本当だぜ響、すげぇ心配したんだからな」
「そうよ。これに懲りたら、ワーカーホリック止めなさいよ」
「お2人共少し言い過ぎなのでは…………」
恭哉葵に少し辛辣な言葉をもらい、一瀬さんがやりすぎではないかと止める。
「その話なんですけど、兄さんはこれ以上働けないと思います」
仄香が申し訳なさそうに言う。
「どう言うこと仄香?」
「えっと兄さんは事故であたり所が悪かったらしく、神経が切れてしまって、下半身が使い物にならなくなってます。その上に、体力もかなり落ちているので、バイトすらできないと思いますよ?」
その言葉に年長組4人が言葉を失う。一瀬さんなんて顔色が蒼白だ。俊介と朱里は知っていたようだった。
「そ、そんな、私のせいでもう働けないだなんて……………」
蒼白な顔で、そんな言葉を漏らした。それより一瀬さんのせいってどう言うことだ?
「一瀬さん、それってどう言うこと?」
「3年前の事故の時ね、私その場にいたの」
そこから事故で何があったか一瀬さんは、ぽつぽつと話してくれた。
あの日、日も完全に暮れて、一瀬さんは部活後の家路についていたようだ。家近くの交差点の横断歩道を歩いていたら、急に横から光が射したらしい。
何かと思って見ると、猛スピードで大型貨物トラックが迫って来た。恐怖で立ちすくんでしまい、動かなかったそうだ。
そこに丁度通りかかった俺が来て、一瀬さんを突き飛ばしたらしい。一瀬さんはそれで助かったのだが、代わりに俺が撥ねられた。
そのトラックの運転手は居眠り運転していたらしい。とても迷惑なことだ。
一瀬さんは助けてもらったことのお礼を言いたくて来たらしい。
しかも一瀬さんは週一で見舞いにも来ていたようだった。
「私のせいで、ほんと、本当にごめんなさい」
涙ぐみながら謝ってくる。
「一瀬さんのせいじゃないよ。俺が自分で動いたことなんだし。それよりお見舞いありがとうね」
本当に悪いのは居眠りしていた運転手だし、お見舞いも本当にありがたかった。
「う、うん。響君、こちらこそありがとう」
顔を赤らめてお礼を言う一瀬さんはとても可愛いかった。
それから、恭哉、葵、一瀬さんと話した。俊介、仄香、朱里は積もる話があるだろうからと一旦部屋を出た。
どうやら3人は同じ国立大学に通っているらしい。恭哉は教育科、葵は保育科、一瀬さんは医学科らしい。
後の2人はなんとなくわかるが、恭哉がその道を選んだのは意外だった。そのことを恭哉に言うと、「悪かったなバカで」って言ってきた。意外に思ったのそこじゃないんだけどな。
それにしても働けないのなら、
「これから何して過ごせばいいかな」
「ん?ならゲームすりゃいいんじゃね?」
「え?」
恭哉が勧めたのはリハビリじゃなくてゲームだった。
裏設定:
その1
響君はワーカーホリックで平日に2つ、休日に5つバイトを掛け持ちしてました。
その2
実は響君、朱里と俊介、仄香は血が繋がっていません。親の再婚相手の連れ子でした。
以降も裏設定入れるつもりです。