80話: Σ(゜口゜;)//
こんにちワン
チーナと名刺を交換した直後、
「こっちの様子はどう?」
っと、横手が俺たちの会場に入ってきた。
生徒会長である彼女は、問題が起きないよう各会場を巡っているのだろう。
まあ、遅いんですが。
「遅いんだよ横手。俺たちが困ってるときにどこにいやがった」
「また騒ぎを起したの?」
「俺のせいじゃねえよ」
「その……今回は、私も、片足をかついでて……」
うーん惜しいチーナ。「片棒を担ぐ」もしくは「片足をつっこむ」だな。
それだとただのレスリングやで。
「そういえば開会のセレモニーでも、随分勝手してたじゃない」
おいおい、相変わらずの女尊男卑思想だな。
「どう考えても、俺が勝手できる範疇を超えてただろ。軍の奴らにはめられたんだよ」
「大人がそんなことするわけないじゃない。偉い人の息子ってことで、わがままを通したんでしょ」
「俺にそんな権力はない」
「そんな証明できないこと言われたって、信じられないんだけど」
こいつ、どこまで俺を悪者にしたいんだ。
横手の態度に、俺は心中で閉口する。
だがそもそも、どうしてここまでひねくれているのだろうか。
同年代の男子を子供と決めつける考え方は、思想というより思い込みが激しいような気がする。
何かきっかけでもあったのか?
俺がそんなことを考えている時だった。
「会長! ああ、やっと見つけた。会長、大変です!」
息を切らしながら、副会長である斎藤が部屋に入ってきた。
どうでもいいが、なぜか斎藤は同学年の横手に敬語を使っている。
「斎藤くん……なにかあったの?」
「あっちの会場で、うちの生徒が他校の生徒と喧嘩しています! 急いで仲裁しないと!」
いやいや、それくらい自分でどうにかしろよ。
「はあ……それくらい自分でどうにかしてよ……」
おおっと、珍しく気が合うじゃないか。
「それで、喧嘩してるのは誰? 何があったの?」
「喧嘩をしてるのは、3組の細井です」
…………ばかがあああああ!
「わかった。仕方ないからいくわ」
「すまん横手、俺もついてっていいか? 相手が留学生なら通訳もできるし」
「そうね。お願い」
頼むから、あまり大事にしてくれるなよ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「だから、こんなとこでナンパしてんじゃねえって言ってんだろ!」
「べつに、名刺を交換していただけじゃないか!」
「20分以上かけてか!?」
はい手遅れです。大問題待ったなしですね!
俺たちが到着したときにはすでに、細井は他校の黒人生徒(日本語うまい)へ掴みかかっていた。
この部屋を担当している教師陣は全員女性。
取っ組み合っている二人とも体格はいい方なので、力づくで止めることもできなかったのだろう。
焦りの表情を浮かべつつも、少し離れて声をかけることくらいしかできていない。
そして、そのそばには……、
「どうしてこーなったー!」
っと、頭を抱える宮本の姿があった。
「あ~、だいたい状況わかったわ」
これは、他校生からしつこく声をかけられた宮本を細井がかばいに割り込んだ結果、こじれてこうなったのだろう。
「だいたいなんだよお前! 小さくてかわいいねキティって! 小さいってだけがこいつの魅力じゃねえんだこのロリコン!」
「 Σ(゜口゜;)// 」←宮本
「人の事言えるのか!? まあ、日本人はみんなロリコンなのよって誰かが言ってたしな!」
「 Σ(゜口゜;)// 」←宮本
おーいやめとけ。当の本人がダメージ受け続けてるぞ。
まだ流血はないものの、これ以上ヒートアップするとまずい。
細井の気持ちを考えたらやらせてやりたい気もするが、結局いい結果には行き着かないだろう。
俺は隣に立つ横手に、解決を促すことにする。
「それで、どうすんだ横手」
「えっ……ああ、そうね。止めないとね」
ん、気のせいか? こいつ今、二人の喧嘩に見とれてなかったか?
「とりあえず、大人の男性に助けを……あ、あそこに軍人さんがいるじゃない。鏡くん、ついてきて」
見ると、確かに部屋の隅から様子を見守る二人の軍服の姿があった。
あれは……、リアムとイーサンか。
横手は俺を引き連れて、その二人の方へ向かおうとする。
確かに、半分手が出ている喧嘩を止めるには男手が必要だろう。
だが……、
「横手、あの二人をあまりあてにしない方がいいぞ」
「どうして? 大人なんだから、対処してくれるはずでしょ?」
「いや、よく見てみろよ」
っと、俺は一旦横手を引き留め、軍服を指さす。
そこでは……、
『いやぁ、若いっていいなぁ!』
『やっぱ男の子はこうでないとなあ』
「……ほらな」
「なんとなく……楽しんでるのは分かった」
横手だって、そこそこ英語の成績はいいのである。
「表でろやこらぁ!」
「僕はそこの彼女と話したいんだ! 邪魔するな!」
「:( ;˙꒳˙;):」←宮本
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