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73話: 細井さんボンバー

次回は3日後くらいに投稿が目標です

 翌日木曜日の22時。

 今日は俺もチーナもバイトが早く終わったので、既に夕食やシャワーを済ませ、俺の部屋でのんびりしているところだ。

 いや、チーナはちゃんと自分の部屋でシャワーを浴びたぞ?


『あれから、細井くんはどう?』


 俺のベッドに横たわって漫画を読んでいたチーナが、ふと俺に尋ねてきた。

 あれというのは、宮本との件だろう。

 ベッドの縁に腰掛けていた俺も、いったんスペイン語の教本を閉じて横に置く。


『別段今までと変わった様子はないかな。宮本と話すときは少しぎこちない感があるけど』

『そっか。それに比べて、アカリはわかりやすいね』

『そうだな。宮本らしいっちゃらしいけど、細井は可哀想だな』


 気にしていないフリをしてる細井とは対照的に、宮本はガンガンその話題を持ち上げていた。

 今日の昼食でも、「昨日私何かしちゃったの?」っと、細井がいる前で堂々と聞いていた宮本。

 どうしても事の真相が気になってしかたないのだろう。

 無邪気というのは恐ろしいものだ。


『横手の件も何とかしないといけないってのに、面倒事は重なるもんだなあ』

『面倒って言ったら2人に悪いよ』

『とは言ってもなぁ。あの2人がもう少し考えて動くタイプだったら、こっちだって気を遣えるってもんなんだが……』

『まあ、うん……』


 思いついたらすぐ行動派の細井と、思いついたら行動完了してる宮本……。

 地雷2人がずんどこ駆け回るから、フォローも何もありやしない。

 まあ、今まで助けて貰ったこともあるし、できる限り協力はしたいんだけどな。


『そういえばヨリ、来月の話聞いた?』


 会話が行き詰まったところで、チーナが分かりやすく話題を逸らしてきた。

 仰向けの体勢からごろんとうつ伏せになりつつ、下から俺の顔を見上げてくる。


『来月?何かあったか?』


 何の事か分からない俺は、素直にそう聞き返した。

 学校で何かあるのか、それとも基地関係なのか、それすら分からない。


『ほら、他校の2年生と合同の異文化交流会』

『あ〜、そういや去年の2年もそんな事やってた気がするな。林間学校とかクラスマッチに比べて影が薄いイベントだから、忘れてた』


 言われて、やっと思い出す。


 異文化交流会。その名の通り、異文化圏出身の人たちと交流するイベントだ。

 留学生クラスのあるナショナルスクールなど、近辺複数校の2年生合同で毎年行っているらしい。

 外国人家族の多い、この町ならではのイベントと言えるだろう。


『んで、それがどうした?』

『その、会場の事なんだけど』

『会場? どっかの学校に集まるんじゃないのか?』

『そうなんだけど、そうじゃなくって……』


 歯切れの悪い返事を返すチーナ。

 いまいち要領を得ないな。そもそも、そんな事を取り立てて話題にしなくても……


『会場、ここ……らしいんだよね』

『ここ……って言うと?』

『アメリカ海軍基地』

『まじかよ……』


 交流会と米軍基地に何の関係があるって言うんだ?


 あ、基地内にあるハイスクールか?

 確かに、基地内に住む学生が通うここのハイスクールは、ここらでは外国人生徒の数がかなり多い学校だ。異文化交流にはもってこいだろう。

 1学年とはいえ、複数校集まるとなるとそれなりに広い施設が必要になるが、米軍基地ならそれも問題ない。

 だからって、一般人の入構を許可するなんて……オリバーさんならするな。


『やっぱり、まずい?』


 チーナが腕だけ伸ばして、俺の脇腹をつんつんしながら聞いてくる。


『いや、まあ……まずいかな』


 何がまずいかって、


・俺とチーナが基地内に住んでいて、なおかつ家が隣同士だという事

・俺にリリーやエマという美人な姉妹がいる事

・米海軍基地指揮官の息子だという事


 これらの隠していたことが、バレるかもしれないからだ。

 もしばれたら、いろいろな下心を持った奴らにチーナや俺が絡まれる可能性がある。


『気をつけてればバレることは無いだろうけど……』

『相変わらず、ヨリは悩み事のタネが尽きないね』


 そう言ってチーナは上半身を起こすと、後ろから俺の首に腕を回してきた。

 ぎゅっ……と、チーナの温もりと控えめだが確かな柔らかさが、俺の背中を包み込んだ。

 そして彼女は、小さな声で、優しく、俺の耳元で囁いてきた。


『そんなに難しく考えなくたって、きっと大丈夫だよ。横手さんのことだって細井君達のことだって、案外いつの間にか解決してるかもよ?』


 それは、俺の事を気遣っての言葉。

 確かに俺は、色んな事を小難しく考える癖が付いてるのかもしれない。


『そう……かもしれないな。もう少し、気軽にやってもいいのかもしれない』

『そうだよ。なんとかなるって』



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 数日後の放課後。

 あまり人が通らない別館への渡り廊下に、声が響いている。


「ねえ慎二くん! 私あの時何しちゃったの? 怒らせるようなことしちゃったんなら、謝りたいから教えてよ!」

「いや、宮本は悪くねえし、怒っても、ねえよ」

「だったら、どうして最近変なの? 絶対何かあるよね!?」

「それは……それは……お前の事が、好きだからだよ!!」




 …………………やべぇうっかり目撃してしまった。


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いやいや、普通の高校生が米軍基地入れるわけないやんって作者も思いましたが、面白そうなんでオリバーさんに権力フル活用して貰います。

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― 新着の感想 ―
[一言] 面白かったです
[一言] ヨリは見たw 今回も面白かったです!更新頑張ってください!
[一言] 友達が告白しているのをみた場合はぁ、そぉっと後ろを振り返ってぇなにも見なかった事にするのですよぉ~
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