71話: ゲームセンター
ついにポイントが10万ポイントを超えました!
桁が上がったすげぇ!
いつも応援していただきありがとうございます!
『へえ、そんな事があったんだ』
『まぁな。細井が珍しく本気で怒ってたから、驚いたよ』
『あ〜、明里のことか……』
『だろうな』
あれから数十分後。俺とチーナは2人でショッピングモールに来ていた。
横手と話をしている間チーナには教室で待ってもらい、そのまま2人で足を運んだ……いわゆる制服デート。
以前から2人で寄り道することはあったから、まだ特別な感じはしないけど。
ともかく、まずは昼飯だ。沢山の椅子とテーブルが並ぶイートインコーナーを、ぐるりと飲食店が囲む形式のフードコート。
そこで、チーナはきつねうどん、俺はカツ丼と天丼を購入し一緒に席につく。
『こういう時カップルって、“あーん”とかするんだっけ?』
『そんなの見たことないし都市伝説だろ。まあ少なくとも、うどんで“あーん”は無理だな。シュール過ぎる』
『じゃあヨリの食べさせてよ』
『こっちだって一口サイズのものは……あ、あった』
『なんでお漬物を差し出してるのかな?』
などと2人でわいわい食事を終えてから買い物へ。
歩きながら、俺たちは自然と手を繋いでいた。
買い出し中の主婦たちや、男子同士、女子同士で遊ぶ学生を尻目に、チーナという美少女と連れ立って歩く。
特に今日は始業式の学校が多いらしく、高校生らしき集団が多いような気がした。
絶えず突き刺さる嫉妬の視線。
これは、なかなかどうして……
「妙な背徳感があるな」
胸に抱いた感想を、俺はポツリともらす。
学校帰りであることをアピールしながら、見せびらかすように男女2人で並んで遊ぶ。
これは、普通のデートでは味わえない緊張感だ。
『何が?』
俺の呟きに、リスのように小首をかしげるチーナ。
『制服デートのことだよ。いったい何が特別なんだって思ってたけど、意外と……』
『え、これってデートだったの? 夕飯の買い出しくらいの気分で……ってヨリが露骨に落ち込んでる!?』
『そりゃまあ、いつも来るときは買い出しだったし……』
『あそこにゲームセンターが! 行こう! デートっぽくしよう!』
そう言って慌ただしく俺の手を引くチーナ。
その先には、騒音と電飾で騒がしいゲームコーナーがあった。
UFOキャッチャー、メダルゲームにアーケードと、ショッピングモール付属のゲームセンターにしてはいろいろ揃っている。
ゲーセンか……いつぶりだろう。
今までは将来渡米することを視野に入れて節約していたが、オリバーさんの養子になってからは、「遊びにもちゃんと金を使え!」っと十分以上の生活費をもらっている。
ゲーム自体は嫌いじゃないし、久しぶりに楽しむのもいいな。
よっし、気を取り直して遊ぶか!
気持ちを切り替え、何か面白そうな物はないかと2人で練り歩いていると、ふとチーナが1つの筐体を指差した。
『ねえ、あれなに?』
『あれは……"太鼓の玄人"だな』
『どんなゲーム?』
ゲームコーナーの中でもデデンと存在感を放つペアの太鼓。
どんな寂れたゲーセンにもある、言わずと知れた超有名ゲームだ。
俺はその内容を、丁寧に説明する。
『流れてくる"カツ"と"どん"を集めて美味しい"カツ丼"を作るお料理シミュレーションゲームだ。料理中のBGMは好きな曲を選べるぞ』
『へえ。てっきり音ゲーだと思ってた』
『ノーミスでクリアすることを業界では"ドン勝"と呼ぶんだ』
『あ、どん勝は聞いたことある。これのことだったんだ……ねえ、やってみようよ』
五分後。ぴっぽお。
『全然違うんだけど! しっかり音ゲーだったんだけど!』
『ま、太鼓がある時点で料理は関係ないわな』
『もう、ヨリの嘘つき』
『その割に俺よりスコア高いのはなんなんだ……』
いつも思うが、俺ってゲーム下手なのかもしれん。
でも……
『……楽しいもんだな』
『うん。ヨリといると、いつも楽しい』
最近は仲のいいグループもできて、学校では集団で過ごす事も多い。アンチ俺メンツもほとんど駆逐された。
それはそれでとても過ごしやすく、ちゃんと学生してる感じがいい。
だがそれでもチーナと2人で過ごす時間は、何物にも変えられない大事な時間だ。
『恋愛禁止されたら、こんな風に堂々と遊べなくなっちゃうのかな』
チーナが次の曲を選びながら、ポツリとつぶやいた。
その表情にそこまで不安の色は見られないが、やはり少しは不安なのだろう。
確かに、万が一恋愛禁止の校則が通ってしまったら、デートにも相応のリスクが生まれるだろう。
だが……
『ま、いつもみたいにみんなで作戦を考えればなんとかなるさ』
『そうだよね。みんなで協力して……』
『総司を動かす作戦を考えよう』
『えぇ……』
『冗談だよ』
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その後もUFOキャッチャーやパンチングマシーンなど、いくつかゲームを楽しんだ後、そろそろ買い物するか……という雰囲気になりかけたところで、
『あ、最後にあれやろうよ』
っとチーナがある機械を指差した。
プリ〇ラである。
いや……無理だろ。
そんな陽キャの嗜み、半年前までぼっちかましてた俺が履修してるわけないじゃん。
そりゃ確かにカップルでゲーセンといえばプリクラってのは分かるけど、それはもうちょっとカップル慣れしてからでもいい。
『俺……プリ〇ラやった事ないから、やり方わかんねえぞ。ロシアにだって無いだろ?今度分かるやつに聞いてからにしようぜ』
『ロシアにもあるよ? すごく高いから滅多にやらないけど』
『……』
『青ざめてないで、ほら行こ!』
これ以上断る理由も思いつかず、スカートをはためかせながら引っ張るチーナに引きずられるようにしてプリ〇ラ機の中へ。
カーテンをくぐるとそこは凄まじい白光空間で、俺は思わず目を細めた。
「コンニチハ! 撮影モードを選んでネ!」
『え、なにこの子喋るんですけど。こわっ』
『すごいね。ロシアのよりずっと進化してる』
俺がげんなりしている間に、チーナはてきぱきと設定を進めていく。
美顔だの目の大きさだの訳がわからない俺は任せっきり。
そうこうしているうちに、設定され終わったプリクラさんが撮影のカウントダウンに入った。
「1枚目、いっくよ〜! さん、にい……」
「え、ちょ待てよ」
急に始まる3カウント。
俺がどんなポーズをとればいいかわからず固まっている俺の頬に、くすぐったくも暖かい感覚が触れる。
見ると、チーナが俺の胸に背を預けて、頭を俺の肩にもたれかからせていた。
頬に当たっていたのは、チーナの細く綺麗な髪。
え、そんなに密着して……
パシャッ!
「写真を確認してね!」
一瞬の出来事に頭がついていけないまま1枚目のシャッターが切られ、モニターにその画像が出力される。
そこには、身を寄せ合ってぎこちない表情をつくる、1組のカップルの姿があった。
『ふふ。ヨリ、ドキドキしてる』
俺の体にもたれかかったまま、頭だけ動かして俺の顔を見上げるチーナ。
超至近距離で見つめてくる彼女に、俺の爆速の鼓動は筒抜けだったらしい。
くっ………またいつもの不意打ちか。相変わらず俺が気を抜いた瞬間を弁えていらっしゃる。
でももう、俺たちは恋人同士なんだ。だったら俺だって……
「2枚目、いっくよ〜! さん、にい……」
『え、ヨリ?』
即座に鳴り始める2枚目のカウントダウン。
俺はとっさに思いついた行動……後ろからチーナの手をとって、その透き通るような頬に口付けをした。
唇に当たる柔らかい感触、ほのかな体温。想像の5億倍"活きた"感覚に、俺の心臓はスクエアアクセル。
一瞬にも永遠にも感じられる静かな世界を、シャッター音が切り裂いた。
パシャッ!
「写真を確認してね!」
モニターに、強張った表情の俺と、口を小さく開けて驚くチーナの姿が映る。
顔を離しても、俺の唇には微かに暖かい感触が残っていた。
やばい。勢いでなんかやってしまったけど、チーナ怒ってるんじゃ……。
『ねえ、ヨリ』
『なんでしょう……』
冷静になった瞬間内心焦り出した俺に、チーナが声をかけてくる。
しかし振り返った彼女の表情は、頬をわずかに赤らめつつも嬉しそうに見えた。
『この写真のヨリ、初めて人の血を吸うヴァンパイアみたいだね』
『それ……加工で色白にされてるだけだから』
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普通にデート回。詩織とばったりなシチュも考えたのですが、邪魔して欲しくなかったので不思議な力でご退場してもろて……。
ロシアのゲーセン事情は調べてもなかなか出てこなかったので、合ってるか微妙。
有識者の方たすけてぇ




