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38話: ちぎっては……

「俺は、お前が詩織ちゃんを傷つけるのをもう我慢できない」

「俺もだ。鏡、覚悟しろよ」

「二度と詩織に逆らえないようにしてやる」


 佐々木、石田に続いて口を開く詩織ファンクラブの3人。

 こいつらの事は覚えている。

 確か結構過激派な連中で、俺の善悪関係なく真っ先につっかかって来ていた。


 一応、形だけは反論しておこう。記録してるし。


「詩織はいつも大袈裟に言ってるだけだ。あいつの不満は、一般的な姉弟に対するものとそう変わらない。お前らは勘違いしている」

「勘違いしてるのはお前だ!詩織ちゃんが優しいからって、いつまでも許されると思うなよ!」

「そもそも詩織だのクリスだのはどうでもいいんだよ!俺はてめえが気に食わねぇだけだ!」


 これは詩織ファンBと石田。


 ああくそ、イライラする。こいつらいつもこうだ。


 ギスギスと言葉を交わしつつ、距離を詰めてくる5人。


 そして俺と5人の距離が2メートルを切った時、ついに1人目が動いた。

 石田だ。


「おらああぁ!」


 金属バットを振りかざし、上段から叩き付けてくる石田。


 俺はそれを1歩引いて避ける。

 喰らったら骨折は免れないだろう。さすがにこれは受けられない。


 さらに他の奴らも、次々と武器を振るって殴り掛かる。

 どれも、まともに受けたら流石にノーダメージとは行かないだろう。


 俺は正確にそれらを躱しつつ、


「やめろお前ら!そんな物で殴られたら、ただじゃ済まないヨーォ!」

「うるせぇ!今更怯えてんじゃねえよおおぉ!」


 記録するために実況する俺。そしてそれを素直に受け取る石田and so on。


 俺が武器を前に手も足も出ないと思い込み、楽しそうにブンブン振り回してくる。


 これはダメ、これもダメ。


 正確に見極めつつ、俺は殴打を躱し続ける。

 そして佐々木が、鉄パイプを横薙ぎに振るってきた時……


 来た!


 まともに受けても問題ない、軽い攻撃!これを待ってたぜ!


 俺は可能な限り衝撃を殺しつつ、それを腹に受け止める。


 そして、


「わーあ!いたーい!」

「やめて〜!ヨリをなぐらないで〜!」


 精一杯痛がる俺に、チーナも援護射撃を放つ。



 最初の一撃、頂きましたァ!



 先に手を出した方が悪い理論。

 これは、正当防衛を成立させる上で非常に大切だ。


 つまり最初に殴られさえすれば、倍返しにされても文句は言われねえ!


 証拠がボイスレコーダーにきちんと残ってるかはわからないが、チーナにも協力してもらってるし、なんとか伝わるだろう。


 これで、反撃できる。


『ヨリ、気をつけてね……やりすぎないように』

『心配しろよ』


「おいおいどうした?これくらいで終わりだと思うなよ!」


 ようやく1発目が当たり痛がる俺を見て、佐々木が調子に乗る。


「なんだよ、大したことないな」

「このままタコ殴りだ」


 石田 and so on も気を良くし、にやにや笑いながら迫ってきた。


 たく、めんどうな事させやがって。いいぜ、これがお前らの選択だ。後悔するなよ?


「おらおら!次いくぞ!」


 再度佐々木が、両腕で鉄パイプを高く振りかざす。


 だが次の瞬間、俺は素早く懐に潜り込んで、振り下ろした"腕"を肩で受けた。


 きかないねえ!プロだから!


「えっ!」


 驚く佐々木。


 そのあごに、最小限のモーションで素早く掌底を叩き込み、膝で金的を打ち上げる。


「うぅっ!!」


 股を抑えて蹲る佐々木。


 これだけでノックアウトとは行かないだろうが、ひとまずこいつは放置だ。


 次に殴り掛かかって来たのはバットを振るう詩織ファンA。

 これは腕ごと手で流しつつ、軸足を蹴飛ばし横転させる。


「いってええぇ!」


 と太ももを抑えて転げ回るアホを置いて、詩織ファンB、Cも同様にさばく。


 一瞬で4人が地面に転がった。


 と言っても、詩織ファンAは既に立ち上がりかけているし、流石にこのくらいでは諦めんだろう。


 まあ、こんなんじゃ足りないのはこっちもだけどなぁ?


「かがみいいい!」


 っと叫びながら石田も殴り掛かってくるが、動きが素人過ぎて欠伸が出る。


 距離を詰めて脇腹で手首ごと押さえつけ、同時に膝を石田の腹に叩き込む。


「お、うぇ……」


 いいのが入った。

 流石の石田もその場にへたりこみ、腹を押さえてうめく。


 情けないな。軍の野郎どもはこんなもんじゃないぞ。


「くっそ!なめんなよ」


 苦しそうな佐々木の声が耳に入る。振り返ると、何とか膝をついて立ち上がろうとしていた。

 俺は歩み寄ってその足を蹴飛ばし、うおっ!っと再度転げる佐々木の腹に蹴りを沈める。


「顔だけは勘弁してやるよ」


 後ろから詩織ファンA、Bも立ち上がって武器を奮ってくるが、先程のダメージもあってノロい。


「う!」

「おえ!」


 軽く捌いてそれぞれ腹パン。


 立ち上がらせてはぶち転がし、余裕があればそこに追い討ち。


 それを何回か繰り返していくうちに、5人は這いつくばってうずくまるだけで、俺を見上げて睨みつけるだけとなっていた。


 その目はまだ、俺への憎悪を湛えている。

 俺はしゃがみ込んで佐々木の髪の毛を鷲掴みにして、乱暴に視線を合わせる。すると、佐々木にしては気丈に声を捻り出してきた。


「鏡てめ……調子に乗れるのも今のうち……だぞ」

「なんだなんだ?まだ何か出来るってのか?」


 こっちはまだまだやり足りないんだ。今までの仕打ちに対して、この程度では割に合わん。お前らがまだやれるってんなら……いいよこいよ。


「いいぜいいぜ、さあ立ち上がってこいよ!俺は丸腰だぜ?5人で武器持って囲めば、普通に考えて負けるはずねぇじゃねぇか。ほら、が〜んばれ。が〜んばれ」


 喋っているうちに煽りたくなったので、手を叩いて応援とかしてみる。


「へ……後で、後悔しろ」


 俺の献身的な励ましは届かず、苦しそうに声を絞り出すだけで立ち上がりはしない。


 なんだろう。こんなにも情けないやつばかりだと、1周回って悲しくなってきたな。


 なんとなく冷めてしまった俺は、立ち上がって佐々木を見下ろす。

 いいや、もう眠らせてしまおう。


「く……せんぱ……あとは……おねがいしま……」


 俺がそう考えた時だった、


「おい鏡!動くな!」


 後ろから男の声が響いた。

 振り返って目に入ったのは、チーナの肩に手を置く大柄な人影。



 そこには、外道にもチーナを人質にとる澤井の姿があった。


 澤井はチーナの首元に両手を置き、俺を睨みつけている。

 チーナは緊張した表情だ。


「澤井…せんぱい!」

「来てくれたんすね」

「かがみ…終わったなぁ?」


 石田その他が、這いつくばりながらも歓喜の声を上げる。


 なるほど。佐々木にしては頑張って噛み付いて来たと思ったが、澤井の接近に気付かせないためか。

 油断した。


「おい先輩。チーナに手出すってことは、どういうことか分かってるんだよな?」

「うるせえ!俺はお前のせいで人生をぶち壊されたんだ!スポーツ推薦は取り消し、今更勉強したって間に合わねえ!どうしてくれるってんだ?」


 クラスマッチの時とは、口調も目付きも随分と変わっている。

 だが、こっちの方がしっくり来るな。


 にしても、逆恨みにも程があるだろ。なんで俺のせいになるんだ。お前の女癖が悪いだけだろうに。


「いいか鏡!今から目の前でクリスティーナを犯してから、てめえをぶっ殺してやる!自分のやった事がどれほどのものか、ゆっくりじっくりわからせてやるからなぁ!!!」


 ……なるほど。あいつがチーナの口止めをどうするつもりなのか気になっていたが、痴態を記録して脅そうって魂胆だった訳か。

 てことは………ここに来てるな。



『よしチーナ、やれ』

「オケ」

「があああああああああああああぁ!」




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チーナが何をしたのか。ヒントは32話

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― 新着の感想 ―
[一言] こんなのと一緒にされる米軍隊員が さすがに可哀想。
[一言] ロ、ロシアの赤きサイクロンか? それともピ、ピカチュ○か? ↑ 一発で変換されましたw
[一言] があああ!ってみるとアームロックを掛けたゴローちゃんと それ以上いけないの店員を幻視してしまうw
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