28話: 俺のテーマ
前話が何の影響もないと言ったが、あれは嘘だ
(`・∀・´)キリッ
詳しくは後書きで
※この物語はフィクションです
10月中旬。
チーナが日本に来てから約2ヶ月がたった。
チーナは随分日本語が上達して、簡単な会話ならできるようになってきている。
そうなると、今まで遠慮していた割とまともな連中達も興味を持ち始め、休憩時間の今もチーナは数人の男女に話しかけられていた。
と言っても、入学当初のような無秩序な連中ではないため、俺は近くに控えて困った時に手助けする程度にしている。
「へえ、クリスって、バスで学校に来てるんだね」
「うん。自転車……は、遠い」
「言葉覚えるまで大変だっただろ?」
「ん……すぐ慣れた」
考えながらゆっくり話すチーナに、簡単な言葉を選んで話すクラスメート。
うんうん、ちょっと文法間違えることもあるけど、だいたい会話が成立している。
成長したなあ……。
親心のような気持ちを抱きながら、肘をついて見守る俺。
「そういえば、チーナってどの辺りに住んでいるの?」
「ええっと……」
今回の言葉も理解できたようで、ふーんと少し返事を考える。
そして言葉をまとめたチーナは、ゆっくりと喋り出した。
「ヨリと……同じ家」
「待てチーナあああああぁ!」
少しの間違いで大きな波紋を呼ぶ、何ともコスパの良い誤解が緊急発生してしまった。
「え、鏡、仲良いなとは思ってたけどさすがにそれは……」
「違うんだ細井!同じアパート!同じアパートな!?」
「??」
満足気なチーナの横で、必死に誤解を解こうとする俺。
そんな慌ただしい時間を過ごしていると、担任の橘先生がガラリと戸を開けて入って来た。
「みなさ〜ん。ロングホームルーム始めますよ〜」
今日は、割と大事な決め事が控えているのだ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
林間学校。
この学校の2年生にとって、最も大きなイベントの一つ。
二泊三日の合宿の間に、登山やカレー作り、天体観測に仮装大会など、各種アクティビティが開催される。
メインイベントは、希望者によるスカイダイビングだ。
通常、林間学校でスカイダイビングができる高校なんてまず無い。
しかし、林間学校が行われる自然の家の近くにはスカイダイビングの施設があり、そこの経営者と理事長との間には個人的なコネクションがあるらしく、色々と便宜を図って貰っているようだ。
もちろんスカイダイビングは希望者制で、高所恐怖症などがある人などは渓流下りも選択出来る。
『ヨリは、スカイダイビングにするの?』
『当たり前だ!あんな楽しいアクティビティ、逃す事はできん!』
『じゃあ、私も』
机をくっつけながら、チーナが聞いてきたので、俺は力を入れて答える。
ちなみに今、教室は6人ごとのグループで机を合わせて、ある決め事をしようとしている所だった。
この6人組は林間学校における班分けだ。
この班で、スカイダイビングや天体観測を除く、多くのイベントに取り組む事になる。
俺の班は、
俺、高原、細井、チーナ、藤田、宮本の男女3人ずつで構成された。
細井は先日のクラスマッチでチームメイトだったあいつだ。
それと、藤田は身長高めの黒髪メガネ女子、宮本はロリっ子ロングヘアー(推定身長139cm)。
3人とも俺とは普通に接してくれるし、細井とはあれ以来少し仲良くなった。
ちなみにチーナと一緒なのは偶然ではなく、指示が伝わらないことで問題が発生するのを避けるため。
それ以外は男女バランスを取りつつ、くじ引きで決まったメンバーだ。
「それじゃ仮装大会のテーマ、話し合おうよ」
高原が司会を買って出て、話し合いを始める。
今回決めるのは、仮装大会の服装。
仮装大会と言っても、キャンプファイヤの周りでトリックオアトリート言いながらお菓子を交換する程度のものだ。
ハロウィンが近いから、ついでにやっちゃおうくらいのイベントである。
ただ、あまり無秩序にならないようにとの配慮で、班ごとにテーマを統一し、先生に許可を貰う事になっている。
「じゃあ、誰か提案のある人はいる?」
「はい!はい!俺に言わせてくれ!」
意見を募集する高原に、細井が元気よく自己主張。
6人しかいないのに手なんか挙げて、元気だなぁ。
「じゃあ細井。よろしく」
「ふっふっふ!俺イチオシのテーマは……」
細井はそう言って腕組みをし、勿体ぶるように発表した。
「俺のテーマは……ケモ耳だ!!!」
「………け、けも?」
高原の目が点になっている。いや、藤田や宮本もそうだ。
チーナは意味が分かっていない。まあケモ耳なんて俗語、知るわけないわな。
にしても、ケモ耳かぁ。
そういや細井、ちょっとオタクな部分があったな。
驚く俺たちに、細井は拳を握り力説し始める。
「そうケモ耳だ!俺たちの班には可愛い女子が3人も揃ってる上に、みんなロングヘアー!クリスはネコ、藤田はキツネ、宮本はリス!こんなにも逸材が集まっているのに、ケモ耳以外の選択肢が有り得るのか!」
「その場合俺たちはゴリラ、サル、マントヒヒになる訳だが、異論は無いな?」
体育会系3人のケモ耳は、可愛さ余って醜さ百倍。
取れる選択肢はせいぜいサル目。
キャンプファイヤの隣で、世界の陰と陽を体現することになるだろう。
せいぜい、イケメンの高原なら見れなくはない程度か?
そこで声を上げたのは、ロリっ子JK宮本さん。
見た目に違わず高く可愛らしい声で、小首をかしげながら提案した。
「じゃあ、男子は調教師役するとか?」
「PTAに突き出されるぞ、先生が」
「うさぎがイナイ!?」←チーナ
「覚えた言葉を無理して使わなくてよろしい」
女子を調教する男子の図。
3アウトぶっ飛ばしてコールド負けだ。
それとチーナ、うさぎなら俺はやらんぞ?
「なんだよ否定ばっかりして。それなら鏡も意見出せよお」
ちょっと不貞腐れる細井。
これは正当性のある抗議だと思わないでも無いが、まあいいだろう。
俺とて林間学校は楽しみなのだ。
仮装のテーマくらい、もちろん考えてある!
「ふっ。いいぜ、俺のテーマは……」
「テーマは?」
さあ、俺の完璧なプランにひれ伏すがいい。
「全員で………ミリコス!」
「かさばる」 ←細井
「重くないか?」 ←高原
「可愛くなーい」 ←宮本
「まだケモ耳のほうがいいわ」←藤田
「普段着じゃん」 ←チーナ
全会一致で否決………クゥン。
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うさぎがいない!?の伏線回収