24話: 伊織 Go for it
なんか、今回のサブタイ語呂がいい
※この物語はフィクションです
クラスマッチは、木金二日間に渡って開催される。
初日の今日行われるのは、男女バスケットボール、野球、女子卓球、二日目は、男女バレーボール、サッカー、ソフトボールだ。
各競技はトーナメント形式、抽選は朝のうちに行われた。
俺たちのクラスは順調に勝ち進み、男女共々バスケットボール決勝へと駒を進めている。
決勝の相手は、3年2組………澤井のクラス。
現在俺たちは、女子の前に行われる男子決勝のために、体育館でアップをしているところだ。
「にしても石田のやつ、本当に俺にボールを回しやがらねえ」
体育館端のリングでシュート練習をしながら、思わずぼやく。
そう、決勝に上がるまでの試合において、俺にボールが回ってくる事はほとんど無かった。
事前に立てた作戦通り、まず一番の実力者である石田にボールが集められる。
そのまま点に繋げられればそれでよし、難しいようなら他に回す。
その過程に石田のプライドが入りこみ、俺に回ってこないのだ。
正直イライラしている。
軍の奴らと遊んでいるときはストレスフリーに大暴れしまくっていることもあり、相手のマークに徹している今日の試合は、なんかもう、とにかく腹立たしい。
そして何より、澤井だ。
あの日澤井は、俺にクリスティーナを賭けて勝負を仕掛けてきた。
もちろんすぐに俺はすぐに拒否したし、まともに受け合うつもりも無い。
だが、澤井の連れていた女共や、総司や総司や総司のせいで、俺たちが勝負をしてるとかなり広まってしまっているらしいのだ。
チーナに説明して断ってもらうにも、さっさと澤井は帰ってしまうし……。
その鬱憤を晴らすように、ダムダムと目一杯ボールを床に叩きつける。
『ヨリ、ごめんね。私のせいで大事になっちゃって』
『気にすんなよ。て言うかお前も被害者なんだし、例え負けても何とかするさ』
壁際に体育座りして、先程から俺の様子を見ていたチーナが、申し訳無さそうに言ってくる。
無論チーナが悪い訳では無いのでそう返しつつ、俺はシュート練を再開した。
その時だった、
「「「きゃー‼︎ 澤井くーん‼︎‼︎」」」
「「「澤井センパーイ‼︎‼︎」」」
体育館内に、反吐が出るような黄色い声援が響き渡った。
もう一度言おう、反吐が出そうだ。
何だ?
声を上げたのは二階の見学通路にいる女子の面々。
その理由はもちろん………澤井の入場だ。
「やあみんな!今日も俺のプレー楽しんでくれよ!」
ファンサービスよろしく声援に答える澤井に、さらに白熱するオーディエンス。
「鏡に、負けないでねぇ!!」
「やっちゃえ澤井くん!!」
「やっちゃえ澤井先輩!!」
やっちゃえバーサ◯カーみたく言うんじゃねえええ!!!
イ◯ヤを馬鹿にすると言うのなら、俺だけじゃなく作者も許さんぞおおおお!!!!!!!
あれ、作者って何だ?
俺が無神経な観客に対して律儀に腹を立てていると、澤井が大声で俺にメッセージを飛ばしてきた。
「鏡!いるかい!今日はお互い全力を出して、いい試合をしよう!」
うっわ、きもっ。
澤井のせいで衆目に晒される俺。
はあああああああああああぁ。
盛大なため息をついたところで、決勝戦開始の時間になった。
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試合開始。
クラスマッチでは1クォーター10分の、第2クォーターまで行われる。
まず第1クォーター。
これは実際のところ、澤井の大暴れだった。
「ほらほら!ちゃんとディフェンスしないと負けるよ!」
10点、16点と得点を上げていく澤井。
確かに……強い。
身長だけなら米軍の奴らにも劣らない。
その恵まれたフィジカルにものを言わせたパワープレイで、ディフェンスを安易と突破してゴールに迫る。
また、得点された。
「きゃー澤井くん!さすがー!!」
「いえーい澤井せんぱい!!鏡なんか敵じゃないわ!」
得点する度に、澤井を喜ばせるような声援を送る女狐たち。
くっそ腹たつ!!最近初めて知った鏡さんを、よくそんなに貶せますねえ!?
ボールも回ってこないし、マークマンも澤井ではなく他のメンバーを割り当てられた。
そもそもディフェンスなんて普段そんなにやっていない。
体格の良い奴の相手をし慣れてるってだけで、特段守りが得意ってわけじゃない。
むしろ、我の強い筋肉ダルマ共との得点合戦で鍛えた、攻めの方が好きだ。
ていうか、何で律儀に指示守ってんだ俺?
勝手に暴れてよくないか?
だがここで勝手やらかしたら、最近築きつつある信用をある程度犠牲にしてしまうかも知れない。
そんなモヤモヤした気持ちを抱えていると、第1クォーター終了のサイレンがなった。
現在の得点は、14対22。
石田も頑張ってはいるが、ディフェンスにうまく止められている。
それでもうっかり俺にボールを回さないあたり、さすがのプライドだ。
今から2分の休憩を挟んだ後、第2クォーターが始まる。
その貴重な休憩時間に、ついに俺は石田に噛み付いた。
「おい石田!ボール、俺にも回せ!」
正直、フラストレーションMAXだ。
これ以上お預けを食らうと、俺が狂戦士になってしまう。
だがそんな俺の怒りに対して、奴のプライドは相変わらずである。
「は?お前は今まで通り、守りやってりゃ良いんだよ!クリス賭けてるからって、好き勝手するんじゃねぇ!」
「賭けてねえし好き勝手やってるのはお前だろ!」
「鏡、悪いけどここは、バスケ部同士のチームワークに任せてくれないか?」
何とここに、高原も加勢してきた。
言ってることはまともっぽいけど、それ言外に俺を仲間じゃないって言ってないか?
相変わらず響く澤井を称える声。
話を聞かないチームメイト。
俺を敵視する石田と澤井。
こめかみに青筋が立つ。
ビーッと、後半戦開始のサイレンが鳴った。
また十分間、耐えなければならないのか。
いや、それが終わっても、負けてしまったら………
第2クォーターはこちらスタート。
高原がボールを持って動き始めようとしているのを、無気力にボーッと眺める………………その時だった、
「「「いおりいいいいいいいぃ‼︎‼︎ ごおおおおふぉおおおおおぉいいいいっっと‼︎‼︎‼︎‼︎」」」
体育館に、爆音が響いた。
澤井の応援団なんて簡単にかき消してしまうほどの、声援というにはあまりに力任せな轟音。
その原因は、観覧通路に並び立つ、見慣れた筋肉ダルマの集団だった。
「伊織いい!!なあに我慢しちゃってんのよお!!いつもみたく大暴れしなさいよ!!」
中心に立つのはアンジー。
「ヨリ、ガンバレー!!」
その横にはチーナ。必死に、声を上げて俺に声援を送っている。
そう、今俺は間違いなく、世界で一番応援されている。
「くっそ………やるしかなくなったじゃねえか。バカどもが」
その言葉が漏れた俺の唇には、総司もびっくりなほど不敵に歪んでいるのだろう。
まったくあいつらときたら、勤務中じゃねえのか?馬鹿やろう。
「は、始めるぞ!ほら石田!」
ショックから立ち直った高原がパスを出す。
だがそのパスが、石田に渡ることは無かった。
「悪いな、もらうぞ!」
「な、かがみ!?」
俺が奪ったからだ。
まさかの味方によるパスカット。予測できた者などいるはずもない。
驚く9人の選手を、俺はやすやすとドリブルで通過。
勢いそのままに俺は飛び上がって、ボールをリングに叩きつける。
バスケにおいて最も目立てる技、ダンクシュート。
だああああぁん!
ボールが叩きつけられる音と共に、俺は着地して振り返る。
そして、それをみて唖然としている阿呆どもに俺は手招きしながら、思いっきり冷徹な笑みを浮かべて、言い放つ。
「へええええいマあぁザふぁッかあああああああぁ!!!!Bring it!!!ブリンギいいいいいいいいいっっっっト!!!!!!」
撤退クソくらえ!!!
ああ、気持ちいいいい!!!
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伊織の最後の発言は「おいくそ野郎ども!かかってこい!」という意味です。
イ〇ヤは可愛い。異論は認めない。