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23/111

23話: リアルで聞いたらやばいセリフ第一位

※この物語はフィクションです

 休みが明けて、月曜日。


 俺、チーナ、総司、秋本の4人は、いつものように総司の席の周りで4人で昼食を摂っていた。


 総司と秋本は手作り弁当。

 俺とチーナは相変わらずコンビニの弁当………ではなく、今日はアンジーの手作り弁当だ。


 ああ見えてアンジーは料理ができる。

 こっちに帰ってる時くらい母親らしい事をしたいと言って、最近持たせてくれるのだ。

 世話を焼いて俺の分まで作ってくれるのは、素直にありがたい。


 だがアンジーよ、いい加減お土産を消費しようとするのをやめろ。

 ドレッシングの代わりにマーマイトをかけるな。食えん。


 普通に弁当は美味しいのに、毎日適度に散りばめられている地雷に苦戦する俺とチーナ。


 今日も慎重に食べ進めていると、不意に秋本が口を開いた。


「あれ!?鏡くんとチーナちゃん、よく見たらお揃いのブレスレットしてる!」


 そう、俺とチーナがペアブレスレットを付けていることに気がついたのだ。


 こういうところ、やはり女子は目ざとい。

 いや、総司はどうせ気づいてたんだろうけど。


「まあ……な、チーナがバイト代でプレゼントしてくれたんだよ。普段の礼にって」


 嘘をつく意味もないので、簡潔に答えておくが、へぇ〜っと目をキラキラさせて見てくる秋本は、明らかに色々問いただしたい様子。

 実は朝から似たような視線をずっと感じているのだ。


 そんな秋本の興味にあえて気付かない振りをしていると、今度は総司が横槍を入れてきた。


「……落ちはあるんだろうな?もし惚気のろけ話で終わったら承知しないぞ?」

「落ちは無いし惚気けてねえよ!!」

『何の話?』

『んんんんん秋本がブレスレット可愛いねって言ってる………』


 こんな僕らは仲良し4人組☆


 今日も殺伐と食事に勤しむ。


 そこでふと、俺はある事が気になって総司に話を振った。


「なあ総司?3年の澤井って知ってるか?」


 バスケ部の連中がやばいって言っていた、澤井先輩について、本当に突然聞きたくなったのだ。

 虫の知らせか?


 まあ日常会話の切り口なんてそんな下らないきっかけばかりだし、話題提供にはピッタリだろう。


「澤井?そんなやつ知らんな。バスケ部の話なら秋本に聞けよ」

「知ってんじゃねぇか!素直に教えろよ!」


 話題提供何それ食えんの?とでも言うように流そうとする総司。


 だがこいつは、常日頃から人を煽れるように有名人の情報収集には余念が無い。

 この手の事は総司に聞けって教科書にも書いてある。

 知らないはずが無い。


 そんな俺の表情を見て、観念したのか面倒そうに教えてくれた。


「はぁ……3年2組澤井大輔。バスケ部のエースで相当女にモテる。その分女癖が悪い。今までに泣かせた女は8人と……」

「待った待った待った!叩いたら予想外に埃が出てきたちょっとストップ!」


 予想の五千倍ヘビーな話に発展してしまい焦る俺。

 なんだよ、ただ単にバスケ上手い先輩じゃ終わらねえのかよ。

 ていうかこの学校民度低すぎないか?

 まともなやつがいねぇ!


「そう言えば、私もしつこく声かけられた時があるんだよね」


 同じバスケ部である秋本が憂鬱そうに発言する。

 確かに秋本は可愛いし、同じ部活と言うだけあって声は掛けやすいだろうな。

 今の雰囲気からして断ったのだろうが、澤井先輩ってモテるんじゃないのか?

 少し気になったので聞いてみる。


「秋本は澤井ってやつがカッコイイとか思わなかったのか?人気あるんだろ?」

「あの人は背が高いだけだよ。筋肉だって、鏡くんに比べたら脂肪だよ」

「筋肉が脂肪ってどないやねん……」


 そういや秋本は筋肉フェチだった。

 かわいそうな澤井さん。アーメン。


「あの人は可愛い子にはすぐ声をかけてくるから、チーナちゃんも気をつけてね」


 話の流れで、チーナに話を振る秋本。

 その声音には、本気で心配している雰囲気が滲み出ていた。

 秋本は優しいのだ。筋肉フェチだけど。


『秋本が、澤井って先輩のナンパに気をつけろってさ』

『サワイ?分かった。気をつける』


 チーナに通訳してやりながら、弁当の残りをやっつける。


 やべ!マーマイト食っちまったまっず!


 俺が劇物をお茶で流し込んでいると、にわかに教室が騒がしくなった。


 誰か来たようだ。


 詩織か?またあいつなのか?もう食う場所変えようか。


 そんな考えが頭に浮かんだが、それは杞憂だった。


 入ってきたのは男だったのだ。

 190cmは超えてそうなひょろっとした長身に、染めた茶髪。

 軽薄そうな表情。

 彼についてきたのであろう、廊下から覗く各学年の女子勢。

 そこまで読み取った時、ふと別の候補が頭に上がった。


 いやいやまさか、そんなタイムリーな………


「さ、澤井先輩じゃないっすか!ちっす!」


 石田が頭を下げていた。

 確定ですやん。こいつが澤井か……。


 そんな澤井は、誰か探しているかのように教室をキョロキョロ見回すと、俺たちの方に目を止めて、嘘くさくニコニコしながら近づいてきた。


 やっべ。これめんどいやつぅ。


「やあ、君がクリスティーナだね。廊下で何度か見かけてたんだけど、あまりに可愛かったから、一度話がしたかったんだよね」


 そう言って近くの椅子に腰を下ろすサワーイ先輩。

 明らかにクリスティーナへのナンパ目的だ。

 いくらなんでもフラグ回収が早すぎるだろ……。

 口調がキザすぎて、デカい身長とのミスマッチ感が凄い。


「えっと、先輩だれですか?」


 少しでも意識を逸らそうと、俺はすっとぼけた質問を投げかけてみるが、それを聞き流して澤井はチーナに話しかけ続けた。


「俺は澤井大輔。ねえクリスティーナ、週末どこかデートに行かない?最近できた遊園地とかさ」

「えっと、その………こんにちは」


 相変わらず噛み合わない会話。

 ちょっと聞いてて面白い。


 だが流石は陽キャと言ったところか、安っぽい笑みを張り付かせながら、その後もしばらくチーナに話しかけている。


 だがその瞳には、隠しきれない劣情が宿っていた。


 こいつも所詮、ただの面食いだ。

 正直佐々木より気に食わない。

 あれはあれで一生懸命やっていたのに、こいつときたら、どうせ自分のものになるから余裕、とでも言うような顔をしている。


 俺は澤井を止めるため、再度口を開いた。


「澤井先輩。チーナが困ってるんでそろそろやめてもらっていいすかね?」

「困ってるって、ただデートに誘ってるだけじゃないか」

「どうせ伝わってないですよ。デートに行ったって言葉通じないですから、諦めてください」

「言葉なんて、愛さえあれば関係ないさ」


 愛が無いから関係あるんだよボケェ!っと言いたくなるが、さすがにそれは我慢する。


 俺がだいぶ引きつった笑みを浮かべていると、澤井が少し話の方向性を変えてきた。


「ていうか君は、何の権利があって邪魔をするんだ?君はクリスティーナのなんなんだい?」


 その返しに、思わず言葉に詰まってしまう。

 友達……隣人?いやいや保護者?


 どれも微妙だし、どれを選んでも反撃を許す。


 いっその事、こいび…………


「それはですねぇ」


 俺の頭がフリーズしかけていたところに、総司が口を挟んできた。

 まさか総司、手伝ってくれ…………うわあニヤニヤしてるぅ。これやばいやつぅ。


「こいつらの手、見てくださいよ。これがどういう意味か、分かるっすよね?」


 そう言って総司はチーナの手首を指差した。

 その先にはもちろん、俺とお揃いのブレスレット。

 これがどういう意味……………ってやめろそうじいいいぃ!


「な!んだと!」

「待て先輩誤解だ!いや陰謀だ騙されるな!」


 驚愕の表情をしている澤井に慌てて再考を促す。

 ってか、そんなに驚かなくても良くないか?傷つくよ俺?


「ちなみにですね先輩、こいつ、クラスマッチでバスケにでるんすよぉ」


 ウッキウキな子供みたいな表情で追い打ちをかける総司。

 だめだ詰んだ。完全にロックオンされた。

 それを聞いた澤井は、俺を値踏みするような不快な目を向けて、俺に名前を尋ねた。


「君、名前は?」

「清水そうj……」

「鏡ですよ先輩?」


 なすりつけ失敗。

 にしても、俺の名前を聞いてどうしようと言うのか。


 そんな疑問を持ちながら、澤井が続ける言葉を聞く。


「なるほどね。それじゃあ鏡くん、クラスマッチで僕と………」


 そこまで聞いて、なぜか凄まじい寒気がする。もしも、もしもあのセリフを言われたら、俺は発狂するかもしれない!



「僕と、クリスティーナを賭けて勝負しよう」

「ぅぷ、おぇぇ」



 破壊力、マーマイトの5倍。




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― 新着の感想 ―
いやシュールストレイミングよりも立ち悪い
2024/10/14 22:04 退会済み
管理
[一言] コメント欄見て納得しました。 なるほど、バカが目立つだけで、 全体の民度が低いわけじゃないんですね。
[一言] この学校の民度低すぎワロタ
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