表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/111

21話: 田中

前回のあらすじ。


マーマイト



※この物語はフィクションです

「よし、じゃあ練習始めようか」


 指揮を執る高原。

 あーい、と返事をする男4人。


 今日は今から、クラスマッチの為の練習を、体育の授業時間を使って行うところだ。

 体育館では男女それぞれのバスケ組、グラウンドではサッカー組とソフトボール組が練習している。


 男子バスケ組のメンバーは俺以外に、高原、田中、田中、たな……あ、田中しか覚えてないわ。

 ただ、俺以外全員バスケ部所属だと言うことは知っている。

 全員身長は俺より高く、そこそこ鍛えてるっぽいが、軍の野郎どもに比べれば迫力に欠ける。


 まずは体育館の隅で、簡単な作戦会議が開かれた。


「多分、チームのほぼ全員がバスケ部で構成されているのは、うちのクラスと3年2組くらいだ。そこさえ倒せれば、バスケ優勝は俺たちだ」

「でもよ高原、3年2組にはあの澤井先輩がいるぜ」

「だよな石田。澤井先輩はやばい」

「ああ細井。あの人は、デカいし高いし、何よりうまい」

「大丈夫だ松田。俺たちなら勝てる!」


 ………………田中いねぇじゃん。


 ていうか、


「澤井って、そんなにやばい人なのか?」


 黙って聞いていた俺は、そう疑問をぶつけた。

 それに丁寧に答えてくれるイケメン(高原)くん。


「鏡はバスケ部じゃないから分からないだろうけど、澤井先輩は体育大学にスポーツ推薦も貰ってる、うちの部のエースだよ」

「ほう…」


 確かにやばそうだ。俺が頷いたところで、他のメンバー1人が早速俺に噛み付いてきた。


「だから鏡、素人のお前が出しゃばって足引っ張んなよ」

「……せっかくなんだから楽しませてくれよ松田」

「石田だ」


 あ、間違えたごめん。


「まあまあ、鏡もきっと活躍してくれるさ。運動できそうだしさ」


 たかはらぁ。お前もしかしていいやつか?


 ちなみにだが、先程から話していて今回のチームに俺のアンチメンバーが一人いることが分かった。

 石田だ。

 それ以外の田中と高原と田中は、そこまで俺を嫌っている訳ではないらしい。


 ただ、高原は善悪の判断がだいぶ自分基準に寄っているため、場合によっては無垢な俺キラーに化ける。


 さらに俺を嫌ってる石田は、うちのチームで一番バスケがうまいと来た。

 となると、自然とボールが集まるだろうから、石田の采配次第では俺を好きにできる。


 はあ。せっかくやるならストレスフリーに楽しみたいのに、うまくいかないものだ。


 その後いくらか話し合いをした後、実際に練習を始めることにする。


 少し前から、体育館のもう半面を使って既に女子がバスケの練習を始めていた。

 今はパスラン……文字通り、走りながらパスを回す練習している。


 秋本とチーナも2人でやっているのだが……うまい。

 秋本は女バスだから分かるとして、チーナも相当運動神経がいいらしい。

 それは昨日基地での練習で見ていても分かった。


「おい鏡、女子ばっか見てないで始めるぞ」

「わーってるよ細井!」

「石田だ!」


 お前ら3人似すぎててわっかんねぇよ…。


 とりあえず俺達も練習を開始。

 レイアップや対面シュート、スクエアパスなど練習を続けていたが、一通り終えたあたりで、一旦休憩を入れる。


 今からどうする……っという高原達の相談を小耳に入れつつ、壁際に座って1人でスポドリを腹に流し込んでいると、


「おーい、高原くーん」


 体育館の反対から、秋本が高原を呼ぶ声がした。

 どうやら女子も一旦練習を切っているらしい。


 なんだろうか。


「どうしたんだ秋本」


 高原が秋本のところにかけていく。


 そのまま体育館の中心で少し話をした後、高原が俺たちを振り返って言った。


「みんな!今から男女で試合形式をするぞ!」


 なかなかに衝撃的な提案。


 確かに、男子だけではどうしても人数が足りず、実践的な練習は難しい。

 だが男子対女子というのも練習になるのだろうか。

 そう思いつつも合流して話を聞くと、どうも男女でチームを混合して試合をしようという話だった。

 まあ秋本の発案なら、そこら辺も考えていて当然か。


 だがそうなると気になるのはチームメンバー。


 そこは秋本と高原が相談し、以下のように決定した。


 A:秋本、チーナ、俺、細井、女子1

 B:女子2、女子3、高原、石田、松田


 グリフィン◯ーーーーーール!


 これは非常にやり易い。どうせ試合するなら楽しみたいからな。

 よくやったぞ秋本。

 ちなみに男子勢の名前は流石に覚えた。


「男子は、女子に触れるの禁止ね!それと、女子が取ったポイントは1.5倍するから、よろしく」


 活き活きとレギュレーションを説明する秋本。


「よっし!俺にボール集めろ!全部決めてやる!」


 意気込む石田。


『ヨリ!よろしく』

『ああ、頼むな』


 チームで軽く挨拶を交わして、練習試合が始まった。




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~





 結果として、俺たちは僅差で勝った。


 俺が徹底的に石田をマークしてやったら案外勝てた。

 やはり秋本とチーナがうまい。

 女子には女子しか触れないとなると、うまい女子にパスを回せば止まらなくなる。

 まあ俺の活躍としては地味だったが、石田の有無を考えれば大金星だろう。

 今は試合直後。そのままコートに残って試合の反省を始めるところだ。


「鏡くんうまいねぇ!やっぱり君を選んで正解だったよ!うん」

「恐縮です、監督」


 秋本が腕を組んで満足気にうんうんと頷いてくるので、俺も適当に乗ってやる。


『すごいねヨリ!結構身長差ある人を抑えてた!』

『もっとでかいやつといつもやってるからな。チーナもめちゃくちゃ点取ってたじゃねえか』


 そんな感じで、俺たちのチームはお互いを褒め合う。

 その中でも、俺を称える声が比較的多かった気がする。


 海水浴以降、アンチ組とはなんだかギクシャクしているが、それ以外の中立組は普通に接してくれるようになった。

 あの時、俺が切れたのが良かったのだろうか。割と我慢し続けていた俺に若干ヤキモキしていたのかもしれない。

 何にしても、幾分過ごしやすくなっていい。


 だが、今俺がよいしょされている事が気に食わない男が一人………石田が、声を上げた。


「おいおい、鏡は大して点取ってねえじゃねえか。クリスや秋本が活躍しただけだ。調子に乗ってんじゃねえぞ!」

「乗ってねえよ。それにお前も言うほど得点してないと思うんだが?」

「女子が多くて攻めにくかっただけだ」


 思わずため息が漏れる。最近やっと佐々木が大人しくなったと言うのに、また面倒なやつが現れた。

 ままならないもんだなあ。


「何なに石田くん、負け惜しみ?」


 そこへ、秋本が冗談めかして口を出す。

 本人としては責める気は全くないのだろうが、その言葉は石田に効く。


「なっ………。くそ。おい鏡、本番でお前にはボール回さねえからな!」


 体は大きいくせに、随分と小さい石田の発言を残して、今日の練習は切り上げられた。


宜しければブックマークや評価☆をよろしくお願いいたします!


男女混合バスケは大学の授業でやったことがあるのですが、女子がボール持った瞬間、男子が両手を上げて道を開けるという奇妙な光景が生まれます笑

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] さっさと1on1やっちまえw
[一言] マーマイト....茜....パンジャン....?
[良い点] よかった、名前覚えたんだ✨ 人と会話するのに、名前は大切ですからね! 名前覚えるのが苦手な私が言うんだから、 間違いないです(笑)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ