111話: お前ら、愛してるぞ
そして、十年がたった。
「ひっさしぶりだな……」
俺は十年ぶりに日本に帰ってきていた。
目的は、総司と秋本の結婚式に参加するため。
まさか、あの二人が結婚まで行くとはな……。
空港から外に出た俺は、照りつける太陽に目を細めながら、ひとりごちる。
そういえばこの十年、いろんなことがあった。
俺は夢を叶えて、米海軍に入った。
多言語を堪能に扱えることを認められて、今では、作戦地域に住む住民とのコミュニケーションを専門にする特殊部隊に配属されている。
アンジーは、何とリアムと結婚した。
もともと仲は良かったのだが、大学在学中急に「私たち結婚したから!」と連絡が来た時には、まあめちゃくちゃ驚いた。
総司はフリーで興信所を経営しているらしい。
花屋を切り盛りする秋本を手伝いながら、ニヤニヤと人の弱みを集めてるそうだ。
正義感でやってる同業者に謝れ。
細井は中学で体育の先生に、宮本も小学校の児童……先生になった。
喧嘩しながらも、なんだかんだ仲良くやっているらしい。
リリーは通訳者になった。
米軍にとどまらず、大きな会議やイベントなど、様々なところで活躍している。
あの容姿も相まって、たまにメディアで取り上げられるほどだ。
詩織は、五年前にララバイが解散し、それからソロの歌手兼女優、タレントとして成功してしている。
その人気は、アメリカにまで波及している。
どうやら、地球の裏側でも忘れることはできないらしい。
そして……、
『わああ、日本だああああ!』
俺が引きずるキャリーバッグの横を、小さな男の子が走り抜けて行った。
四歳くらいの、俺の腰くらいしか身長のない元気な子供。
『ノア走らないで。危ないでしょ』
そしてその子を叱る、鈴を転がすような声。
振り返ると、ノアと同じくらいの女の子を抱いて、チーナが嬉しそうに笑っていた。
チーナの腕に抱かれている子は、オリビア。
ノアと双子の兄弟で……俺とチーナ、チーナ・コックスの子供達だ。
『いーなーリビア、ママに抱っこしてもらって。はやくかわれよ』
『いや! ノアはパパにしてもらえばいいじゃん』
『なんだよけち!』
『こら二人とも。仲良くしないと、筋肉お化けが寝てる間に襲いにくるぞ〜』
喧嘩する二人に、俺は手をひらひらさせながら冗談めかして注意する。
『『う、ごめんなさい』』
このくらいの年は、お化けを登場させると途端に素直になるんだよなあ。かわいい。
『なあに? 筋肉お化けって』
俺が子供たちを脅かしていると、チーナが横でクスクスと笑った。
『それは……あれだ、筋トレがしたくてたまらないお化け』
『ヨリじゃん』
『はあ!? 俺そんなに筋肉愛してねえよ!?』
そして、四人であははと笑い合う。
なあ父さん見てるか?
俺は今、こんなにも幸せだ。
俺は家族を振り返って、ニカっと笑ってこう言った。
『お前ら、愛してるぞ』
皆様、これまでこの作品を応援いただき、ほんっとうにありがとうございました!
ぶっちゃけ練習のつもりで始めたこの物語がこんなにも愛してもらえるなんて、夢にも思っておりませんでした。いやまじで。
書籍化もコミカライズも完結も、私にとって初めての作品となり、どう頑張っても一生忘れられないことでしょう。きっとぼけ老人になっても「ロシア人……」とうわ言のように呟いているはずです。
途中、世界情勢うんぬんでモチベがプッツンになってしまったこともありましたが、皆様のおかげで何とか走りきることができました!
本当に、本当にありがとうございました!
さて宣伝です笑
4/17(土) 6:00 に新作第一話を投稿予定です。
タイトルは、
「千年の呪術師と祝福されし少女~奇才のアンチヒーローは、血統主義の世界で暗躍する~」
ずうっと書きたかった呪術ものです。私自身がただ単に呪術オタクなので……。
超硬派な呪術と、ざまぁを多分に含むアンチヒーローな作品になります。
ぜひ!!