107話: パジャマは下から脱ぐ派
予想以上に、皆さんがロサ○ゼルス決戦ご存じで面白かったです。
家に帰り、シャワーを浴びて制服に着替える。
「う、さっむ」
この時期にシャワーはそこそこ苦行だが、汗をかいたままでいるわけにもいかず、かといって湯を溜めるのも面倒くさい。
ふとスマホを見ると、チーナからメッセージが入っていた。
”朝ごはん作ってるから、支度出来たら来て”
普段朝食は俺の部屋で二人で摂る事が多いのだが、アンジーが日本にいる間は、チーナの部屋で三人で食事をするのが恒例になっている。
俺はささっと身支度を済ませて部屋を出ると、チーナたちのいる隣の部屋に入った。
ガチャリ。
リビングに入ると、寝間着姿のまま対面キッチンに立つチーナが目に入る。
アンジーは見当たらない。
まだシャワーでも浴びているのだろう。
『おはようチーナ』
学生カバンをテーブルの横に置いて、チーナに声をかける。
だが、予想に反して返事はなく、チーナはもくもくとフライパンを見つめている。
『おい、チーナ?』
『え? あ、ヨリ。来てたんだ、おはよう』
『おう』
ただ気付いていなかっただけのようで、もう一度声をかけるとやっと顔を上げた。
『もう少しでできるから、待ってて』
その言葉の通り、部屋には甘く焦げ付くいい香りが漂っている。
この匂いは……、
『改めておっはよーう! お、今日はフレンチトーストですねチーナシェフ!』
シャワールームから出てきたアンジーが、メニューに気付いてチーナに抱きつく。
『危ないアンジー、今火使ってる』
『ごめんごめん。今日もおいしそうね』
『うん、昨日から漬けといた』
そんなやり取りをしつつ、食卓に朝食が並べられていく。
フレンチトーストの他にも、サラダやゆで卵など朝の定番メニューがいくつか用意されていた。
全員が席に着いたところで、皆ナイフとフォークを手に食べ始める。
『そういえば二人とも、勉強は順調? 来月はSATとTOEFL最後のチャレンジよね、伊織はまあ心配いらないかもしれないけど』
『チーナも問題ないだろ。もともと数学は成績よかったんだし、ここ最近は英語ばっかやってたから、だいぶできるようになってる。な、チーナ?』
『……え、あ、うん』
『そう。まあ分かんない事があったら聞きなさいな。わたし勉強できるから。あ、それとね……』
っと、アンジーはトーストの最後の一切れを飲み込むと、
『来年度から私、出張とかなくなってこの基地常駐勤務になるから、よろしく』
っと、割と大事なことを報告してきた。
『え、そうなのか!?』
『ま、来年からアメリカに行っちゃう伊織には関係のない話ですけど~』
そう言って、俺にだけわかるようにウインクしてくるアンジー。
「今がチャンスよ」と言わんばかりの仕草。
いや今パス出されても、まだ何も決めちゃいないんだが……。
俺は逆に閉口するも、せっかく作ってもらった機会を無駄にするのも悪いかと思い、何かチーナに聞いてみようかと口を開く。
『チーナは……』
『……じゃあ九月からは、一緒に暮らせるんだね。騒がしくなりそうで、楽しみ』
だが同時にチーナも反応し、ほほ笑んでそういった。
その表情を見て、俺の心がぐらりと揺れた気がした。
やっぱり、チーナは日本にいたいんじゃないか?
例えアメリカの大学に行ったとしても、日中は俺とは別行動。
知らない環境で、独りになるのは間違いない。
それにアンジーと暮らせるとなったら、俺がいなくなって寂しいと思う気持ちも……。
『伊織? どうしたの?』
ネガティブな思考の沼にはまっていたところ、急にアンジーに声をかけられて、我に返る。
『いや、なんでも』
見ると、チーナは既に朝食を食べ終え、食器を流しに運んでいるところだった。
アンジーも、食後のコーヒーに口をつけている。
『あ、チーナ。片付けは俺がやるから、着替えとけよ』
『……え!? 何!?』
『だから、片づけとくから、先に着替えて来いって』
『えっ。あっ、ああ、うん。お願い』
言われてチーナは食器を置くと、セーラー服の置いてあるソファの近くへ歩いて行き……そこでズボンを脱ぎ始めた。
『伊織も、早く片しちゃいなさい。遅れちゃうわよ』
『いや、俺はもう支度できてるからゆっくり……ってちがああああう!』
俺が急に大きな声を上げると、アンジーとチーナがびくっとこちらを向いた。
『ヨリ、どしたの?』
『どうしたじゃねえ! 俺いるんだからここで着替えんな!』
言われてチーナは、はっとした表情を浮かべ、自分の下半身へゆっくりと視線を向ける。
そこには、完全に床に落ちた寝巻のズボンと、上着の裾では隠し切れない薄ピンクの布地。
『あ、いや、その、あの……』
その体勢で固まったまま、リンゴのように顔を真っ赤にして言葉をひねり出すチーナ。
よっぽど動揺しているのか、隠すでもなく意味のない言い訳を必死に探している。
もじもじと擦り合わせられる細い腿。
その周辺に途方もなく視線を引き寄せられてしまう。
……が、全力でそれを振り切り顔を背けると、
『い、いいから早く部屋に行って着替えろって』
よくやった俺の中の紳士いいい!
『う、うん』
チーナは制服をひっつかむと、急いで自室へ。
バタバタと走り去る音と、どこかをぶつけて『いたっ!』と叫ぶ声。そして、脱ぎ捨てられたズボンだけが残された。
『え~、あんたたち、まだその段階だったの?』
『下世話か⁉』
『まさかまだちゅ~もしてないとか』
『したわ!』
『へえぇ~』
『うるっせえニヤニヤすんな!』
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チーナ、貴重なサービスシーン。