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第15話 混乱中です

主人公を寝っころがしては思い出させる芸の無い作者です。まぁ仕方ないね!(開き直り

これは2回目ですが、さてあと何回この手が通用するだろう


「ながれくんっ!」


 ビクっと体が震え、その反動と自身の声で目が覚めた。

 寝てたらしい。

 でも、ここはどこかしら。


 ふかふかで気持ちのいいベッド。

 この建物は木造りの小さな小屋のよう。

 小さな部屋には、ベッドと簡素な机や椅子があるだけ。


 いえ、待って。そんなことより。

 私は誰?


 私、私は、アナトーリア。

 いいえ、アナトーリアは仁奈がやってたゲームの悪役の女の子。


 私は、うめ……


『りあが起きた! かみさまー』

『えすとー! りあがー』


 小さな鈴のような声がいくつか響いて、そちらを見やると羽根をパタパタと動かす小さな妖精がいた。


 ピスキー。

 そう、この子たちはピスキー。

 エストがそう言った。


 エストって誰?


「起きたか、リア」


 そう、エストはこの子。白くて美しい男の子。

 少年は、ベッドの私の足元のほうへピョンと飛び乗って、足をぷらぷらさせながらこちらを見る。


「……ふむ、まだ意識がはっきりしとらんようじゃの」


 エストと一緒に、毛並みのいい動物たちが何頭か室内に入って来たようだ。

 黒い狼は首を伸ばして私の手をペロリと舐める。その背にエナガを乗せながら。


 朱い猫も、ウサギを咥えてベッドに飛び乗った。


『いきなり倒れっからビビったぞ、まじでドンくせぇなおまえ』


『それデ一番焦っテたのは火のサンですケドね。リアが起キルまで心配しスギて、いろんなトコロに放火するカラ……』


『うっせぇ黙れ』


 口の悪い猫がイフライネ。どこだかわからない土地の訛りがある狼がゲノーマス。


 ぜんぶわかってる。大丈夫。

 つまり私は、……アナトーリア。


「えええええええええええ????」


『おぁっ! なんだよビビらせんなよ』


 毛を逆立てて、尻尾をピンとさせながらイフライネが抗議する。

 でもそんなこと構っていられない。


 私は、アナトーリア?

 待って、仁奈がやってた乙女ゲーム、ええと、「百幾年~精霊と伝説の巫女~」。


 精霊……


 思わず、周囲の動物たちを見まわす。

 イフライネ。ゲノーマス。ウティーネ、そしてシルファム。そうよね、この子たちは精霊なのだわ。


 えっと、登場人物は……フィル。フィルディナンド。

 ビアッジョ、カロージェロ、ジャンバティスタ。うん、間違いない。


 乙女ゲームだ。

 

 異世界転生と言うのだったかしら?

 そういうのがアニメやライトノベルの間では流行ってるんだって、やっぱり仁奈が言ってた。


 まさかそれを私が体験するとは思わなかったけど。

 ここは乙女ゲームの世界なのだけど、それじゃあ、この世界は作り物なの? 例えば、私の記憶や思考パターンをAIに学習させて……

 いやいやいや、どこの酔狂がそんなことするの。


 乙女ゲームの世界だってわかったら、余計理解が追い付かなくなってしまったわ。


 待って、私、死んじゃったってこと? 梅津小雪は、あの事故で死んだの?


 じゃあ。

 じゃあ、流くんは?


 全身から血の気が引く。

 あの高校生は、笑顔が素敵な頑張り屋の高校生はどうなったの?


「アナトーリア?」


「いや……、ながれく……」


 どうしよう息ができない。

 あの子は、これからだったのに。やっと大好きなサッカーをまた始められるところだったのに。


 目の前が暗くなる。毎日顔を合わせられなくたって構わない、どこかで元気にしててくれたら。


「アナトーリア」


 ああ、思い出さなければよかった。

 何も知らないまま、()()()()()()の人間としてずっと生きていられたらよかったのに。


 深く息を吸うことができない、胸が痛い。

 浅い呼吸をハッハッと繰り返しても、どんどん苦しくなる一方。


「アナトーリア!」

「……ッ」


 これは過呼吸と言うんだろうか。

 頭がボーっとしてきたとき、私は突如柔らかなものに包まれた。


 柔らかくて温かなそれが、優しく抱き締めてくれているエストの腕だと気づくと同時に、彼のその甘い香りをもっと、もっとと求めて喘ぐ。


 エストが小さくシルファムの名前を呼ぶと、私の呼吸はより楽になった。

 たぶんシルファムが私の呼吸の介助をしてくれているのだろう。


 ゆっくりと呼吸を繰り返すうちに、少しずつ落ち着くことができたが、その間も、エストの小さな手は背中を撫で続けてくれる。


「ありがとう」


 どうにか落ち着いてお礼を言うと、肩に乗せられていた小さなあごが離れて、七色の瞳が私の顔を覗き込んだ。


 私の傍らで膝立ちになって、全身で抱き締めてくれるエストが可愛くて、可笑しくて、そして申し訳ない気持ちになる。


 心情を表に出さない練習をしてきたはずなのに、過呼吸を起こすだなんて、まだまだ未熟だと。



「まずは、風呂でもどうじゃ。その後で食事にしよう、準備させておく」


「お風呂、入りたい……」


 体も服も、泥と汗と草露まみれのまま一晩を過ごしてしまった。

 さっぱりしたいし、それに、少し頭の中を整理したい。


「お主が願えば誰かしら動く。のぅ、イフライネ」


『あぁ?? 俺? ……ったくしゃーねぇなー。行くぞウティ』


『あらあらー。ふふー』


 指名された朱い猫は、思いのほか素直に頷いて、ウサギを咥えてベッドからふわりと降りると、部屋を出て行った。


「あやつらに任せれば3秒で湯も沸くじゃろ。案内(あない)も着替えもピスキーにやらせよう」


 後に続くようにベッドから勢いよくぴょんと飛んだエストは、酒じゃ酒じゃーと言いながら部屋を出る。


 あの子はお酒を飲むつもりなんだろうか。

 神様だからいい……のかしら?


 エストの後ろ姿をなんとなく眺めていると、案内役と思しきピスキーが、『はやくいこー』と囁きながら私の周囲をひらひらと舞った。


これ書いてるとき、乙女ゲームの世界のアナトーリアのデータがバグって自我を持ったパターンで進みそうになりました。

でも私の脳でその方向の話を書くとありがちなホラーにしかならんかったです。


自我を持ったアニー「ね、ねぇエスト」

エスト「ここはエスピリディオン島。人々の祈りが集まる場所」

アニー「(目が合わないんだけど……)そ、それはもう聞いた」

エスト「ここはエスピリディオン島。人々の祈りが集まる場所」

アニー「あっ……(察し」

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アジア風ファンタズィーもよろしくおねがいしまーす!
i000000
― 新着の感想 ―
[良い点] なんだか可愛い登場人物ですね (*´▽`*)
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