新任教師と転校生
「突然ですが、クラスの担任のフーロ先生が急遽大事な用事ができたため学園を休まれることになりました。」
「・・・。」
副担任のエルミアからの突然の報告を聞かされても生徒たちは先生を惜しむ声はなかった。
普通なら突然の報告に対して生徒たちは経緯を聞くところだが、残念なことに生徒たちは誰1人としてフーロ先生のことに興味を持っていなかった。
「あんな無能な教師の授業を聞くくらいなら他のことに時間を使う方が効率的。」
「いなくて精製するぜ。」
逆に生徒たちから見てフーロという教師はダメな教師としか思っておらず、むしろ居なくなって嬉しいと思っている生徒の方が多くいる。
教室からは生徒の声が絶え間なく聞こえている。
ここはイーボンでも1.2を争う魔法学校○○学園。
全校生徒10000人越えるこの学園では日々イーボンの未来を背負って立つであろう生徒たちが、今日まで国の中心で働いている多くの卒業生のようになろうと勉学に励んでいる。
エルミアが副担任を務める2年Ⅰ組の生徒たちもその1人で、クラスは入学試験で学内順位トップの成績を収めた生徒が集結しているエリート集団だ。
学園側からすると、彼らは全員金の卵で大切に育てて将来のイーボンの中心となってもらいたいという思いでいっぱいなのだが、・・
「」
今年に限っては優秀かつ問題児の生徒が多く先生たちも手を焼いていた。
HR中の今に至っても殆どの生徒がエルミアの話を聞かず周りの生徒と話したり、遊んだりと自由な時間を満喫している。
そんな生徒を1年間根気よく見てきたエルミアだったが、さすがにもう彼らが手に負えない状況になった。
「え~っと。それで、フーロ先生の代わりは今年度から我が校の教師となった新任の先生が担当されます。授業もその先生が行なうので注意してください。」
(学園長は大丈夫って言ってたけど・・)
エルミアは生徒たちの態度を見て新任の先生がこれからやっていけるのか不安がよぎった。
~~学園長室
「学園長、やはり新任の先生にⅠ組の担任を任せるのは荷が重すぎます。」
「そうです。下手をすればフーロ先生の二の舞になりかねません。」
学園長室では新任の先生の配置に論議が起こっていた。
新任の先生に問題児のクラスを任せるわけにはいかないと多くの教師が反対の意を示していた。
「問題ない。彼は私の教え子でとても優秀な生徒だ。きっと問題児のクラスを良い方向に向かせてくれるよ。」
~~
(心配だな。この子たち手加減を知らないから。)
大半の教師が不安になる中、学園長のオズワルドは心配しておらず、結局、教師たちがいくら反対してもオズワルドが考えを変えることはなく今日を迎えた。
「それじゃあ、新任の先生を紹介します。先生、入ってきてください。」
教室のドアが開くと生徒のある1人が空間魔法を使い黒板に置いてあった黒板消しをドアの入り口上に出現させた。
「先生、あぶない。」
気づいたエルミアもすぐに声を出して注意を促したが、すでに遅く黒板消しは入ってくる先生の後頭部に着地した。
「よっしゃー!」
「ドッキリ大成功。」
「男子ってバカばっかり。」
「先生、大丈夫ですか?」
「いや~、危なかったですね。間一髪でした。」
先生の後頭部にあったと思われた黒板消しは当たる直前に防御魔法で自分を覆ったことで回避することに成功していた。
これまでこの方法が失敗したことがなかった為か生徒たちは驚き、エルミアはホッとした様子で手をなでおろした。
「今度からはこのようなことはしないようにしてくださいガジュ君。」
「はい。」
「皆さんも次にこのようなことをしたらお仕置きをするので注意してください。もし、先生と勝負したいなら先に行ってください。私は逃げも隠れもしません。」
この時この場にいる全員が「これまでの先生とは違う」と理解した。
見た目は温厚そうに見えるが、それに騙されてはいけない。
175cmくらいの細身の体で今の一連の動きを見てもただ物ではないと推測できる。
気が付くと、先ほどまでと異なり静かになり、生徒たちもおとなしくなっていた。
「ではまず、先生の自己紹介をします。私の名前は、ハノイ。ここに来る前は魔法師会に所属していました。」
「魔法師会!!」
エルミアと生徒は"魔法師会"という言葉を聞き驚愕した。
魔法師会とは、イーボンが保有する現在の最強の魔道部隊を指す。
「この度、念願かなって母校で教師という職に就くことになりとても嬉しいです。これからもよろしくお願いします。」
「それでは、授業を始める前に転校生を紹介します。」
「皆さんもすでにご存じだと思いますが、この度、国王両陛下がこの学園に入学されることになりました。両陛下は皆さんと同い年で是非一緒に学びたいというご要望があったそうなのでこのクラスに入ることになりました。」
「アメリ―テです。宜しくお願いします。」
「カルマだ。宜しく。」