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里帰りした猫又は錬金術師の弟子になる。  作者: 音喜多子平
第二章 岩馬
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忘られじ

短め。


 話が一旦切れたので、俺はふと頭に過ぎっていた疑問をぶつける。


「けど、円さんの戦闘スタイルは素手の格闘なんだろ? なんで刀を持ってんすか?」

「昔、両親に貰ったんだ。太刀は親父、懐刀はお袋からな」

「へえ」

「そう言えば、円殿の両親は?」


 俺も聞こうと思った事をそっくりそのまま朱さんが先に口に出した。円さんを取り巻く交友関係や妖怪は少しずつ見えてきていたが、思えば密な人間の知り合いと思えるのは先刻の梅ヶ原巡が初めてのケースだ。


 今は妖怪になってしまったとは言え、母上だっている。天獄屋には人間の絶対数が少ないとはいえ、だからこそ人同士の繋がりはありそうなものだが・・・。


 そんな事を思っていたら、予想に反して重い答えが返ってきてしまった。


「親父は四年前に死んだ。お袋は…実は顔も知らん、俺を産んで一年もしないうちに死んだらしい」

「そうであったか…すまん」

「いいさ。気にしてない」

「あれ? でも懐刀はお袋から貰ったって…」


 その時、円さんが少しだけ微笑んだ。誰かを頭の中に思い出して困ったような、それでいて嬉しいような、そんな顔つきになっていた。


「死んだのはあくまで産みの母親。懐刀はいわゆる育ての母親から貰ったんだ。親父の後妻ってこったな。そっちはまだ生きてるよ。もう別々で暮らしてるけどな」


 そこで再び話が途切れた。


 太刀と脇差を持つと来た通路を戻り円さんの部屋を通って店舗の方へと出た。俺と朱さんは予行とばかりに手を合わせて鍵を取り出して施錠してみた。これと言って不安は感じなかったので、一安心といったところか。


 刀を居間に置くと円さんは、


「さてと、今更店を開けるのも馬鹿馬鹿しい。どっか飲みに行こうぜ」


 と言った。


読んでいただきありがとうございます。


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