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里帰りした猫又は錬金術師の弟子になる。  作者: 音喜多子平
第二章 岩馬
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残酷な現実


 そして今度は俺の掌の上にその鍵を乗せた。意図が全く分からずあたふたしていると、じっとしていろと喝を入れられた。


「で、朱がその上に掌をくっ付けてみな」


 言われるがまま朱さんは、俺の右手の上に左手を乗せてきた。


 すると途端に手の内が淡く光り出し、一瞬だけ熱くなったかと思うと鍵の感触がなくなってしまった。手を離してみると、やはり鍵だけが綺麗さっぱり消えてなくなっていた。


 朱さんと共に戸惑っていると、円さんはもう一度同じように手を合わせるように言った。言われるがままにそうしてみると、さっきと同じように手の内が光り出し、鍵の感触が戻っていた。


「合い鍵はこれ一本のみ。そして鍵は環と玄が揃わないと取り出せなくなった」


 なるほど。仕組みはよく分からないが、こうしておくことで各々が鍵を持つよりもよっぽど安全で秘匿性が保てるわけだ。


「修行なら揃ってやった方が良い。朱も朝の訓練は今後ここを使え、どうせ環も付き合うつもりだろ?」

「…まあな」


 どうやらこっちの考えはお見通しらしかった。尤も願ったり叶ったりの提案なので首は横には降らなかった。


 やがて息が整うと、訓練場を軽く掃除して店に戻ることになった。片付けが終わり、実践の部屋を出るところで俺は一つ聞いた。


「最後に質問していいか?」

「ああ」

「円さんが弱くなってるのって、あのローブが原因なのか?」


 返事はなかった。


 触れない方が良い話題であることは分かっていたが、どうしてもはっきりさせておきたいことがあるから、この際行けるところまで行くことにした。


「一撃も当てられなかった分際でアンタを弱いというのは気が悪いけどさ、この間の天聞塾の連中を相手にしてた時のプレッシャーも体のキレもない。最初はオレたちが相手だから手を抜いてんのかと思っていた…けど手合わせしたらそうでもないみたいだからな」

「円殿?」


 それでも口を開かない円さんに向かって、朱さんも恐る恐る声を掛ける。その声音に観念したのかどうかはわからなかったが、ようやく声が聞けた。


「結論を言えば、その通りだな。アレは肉体機能を底上げする式も使ってた。燃えちまったから格段に弱くなってはいる」

「やはりか・・・」

「けど今見せた通り、並大抵のことじゃ負けやしないさ」

「一対一くらいならそうかもしれないが、そんな正々堂々とした相手ばかりとは限らないだろう」


 俺らの心配をよそに、円さんは不敵に笑う。


「ふふふ」


 その様子に俺たちは少々怖くなり、顔を見合わせた。


「なんすか、その笑いは」

「俺にだって隠し玉くらいはあるさ」


 円さんは実践の部屋を出ると店の方へは向かわず、正面にある『思弁の部屋』と呼んでいた部屋の扉を開けた。


読んでいただきありがとうございます。


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