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里帰りした猫又は錬金術師の弟子になる。  作者: 音喜多子平
第二章 岩馬
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不気味な発見


「で、どっちからくる?」

「決めていいというのなら私から行かせてくれ。その分、環も休めるだろう」


 僕は大人しく先手を譲り、少し離れたところに座った。


 朱さんは少々強張った面持ちで円さんを見ていたが、当の本人はのらりくらりとしている。


「ところで本気でいいんだな」

「もちろん。玄も手を貸せるんなら思う存分にきな」


 その言葉をきっかけに朱さんの纏っていた気配ががらりと変わった。ビリビリと肌を揺らすかのような闘気が辺りを包んでいる。


 朱さんは六尺棒を薙刀を扱うかのように構えた。僕自身、武芸の心得はないが、それでも朱さんがかなりの腕前であるという事は本能的に感じ取っていた。


 だからこそ、余計に円さんの取った構えが不気味なものに思えたのである。


「むっ」

「なんだ? あの構え?」


 まるで柳の下に現れた幽霊よろしく、両の腕を軽く曲げて前に出し、手首をだらりとだらしなく垂れるかのような構えを取った。その構えせいか、円さんの纏う気配もどうしてか薄いものに感じられた。そこに居るのか居ないのかが正しく判断できなくなるような、そんな不思議な気配だ。


 そう感じていたのは朱さんも同じだったようで、中々攻めに転じられていない様子である。それでも一つ気合を発すると、雀に飛び掛かる猫のように真っ向から六尺棒を振り下ろした。


 朱さんから見ても、僕から見ても完璧なタイミングだった。しかし、円さんには届いてすらいない。まるで六尺棒が円さんの体をすり抜けてしまったかのような錯覚を覚えた。傍から見ていた僕でさえも戸惑いを感じたのだから実際に相手をしている朱さんの衝撃はそれ以上のものだっただろう。現に体勢が少しふらついている。


 その隙を円さんが見逃すはずもなく、一瞬のうちに攻守が入れ替わった。朱さんも中々どうして捌きが上手く、二、三手防御に転じたもののすぐに攻めに戻ろうと距離を取ろうしている。


 だが、円さんがそれを許さない。


 六尺棒を思いきり振り回せない程にべったりとくっついて離れない。両腕は蛇のように朱さんの手と棒とに絡みつき、翻弄されている。とうとう朱さんは六尺棒を諦め、徒手での応戦に切り替えた。


 そして、その瞬間。朱さんは地面に突っ伏していた。


 六尺棒を離した刹那、円さんの足払いが見事に決まったのを僕は辛うじて理解できた。


 朱さんは胸ぐらを掴まれ、もう片方の手では玄さんの反撃を阻止するかのように両袖を押さえられている。一呼吸のあと、自分の状況をようやく整理できた朱さんは漏らすように言った。


「…まいった」


 その声をきっかけに円さんは立ち上がり、朱さんを助け起こした。半ば放心状態であった朱さんは、ただただじっと円さんの事を見ているばかりである。


 僕は呆けている朱さんに変わって、六尺棒を片付け円さんを見据えた。


読んでいただきありがとうございます。

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