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里帰りした猫又は錬金術師の弟子になる。  作者: 音喜多子平
第二章 岩馬
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金属の熟達

 妖気を何かに込めるという行為を意図的にやるのは初めての経験だった。けれども金属球に意識を集中させると、ぼんやりと玉が反応しているが感じ取れた。


 更に妖気を注入していくと、わざわざ触れなくともスライムのような粘度を保ちつつ金属球が変形していくのがわかった。


「あ、できた」

「私も」


 一旦、妖気の流れを止めた。金属球は解けかけたチロルチョコのようないびつな三角形になっている。


 チラリと円さんの顔を見る。すると驚きと戸惑いを合わせた様な、そんな表情になっていた。


「・・・まじかよ」

「「え?」」


 動揺の色を隠しきれぬまま、そう呟いた円さんは僕たちの顔を交互に見て続けた。


「なんで、できるんだ?」

「いや、言われた通りにしただけですから」

「普通の奴なら金属にエルガンを込める感覚を掴むだけでも数週間かかるんだがなぁ」


 そんなボヤキが聞こえてきた。思っていたよりも案外簡単にできたのはそうなのだが、特に難しさは感じなかった。なので半ばキョトンとしながら、そうなんですか、と言ってしまった。


「そうなんですか」

「でしたら、このまま次を教えて頂けませんか?」


 手ごたえを感じていないのは玄さんも同じようで、そんな事を言ってきた。僕も全く同じ事を言おうと思っていたので、玄さんの申し出に素直に乗っかった。


「ああ…それなら、こうして二又のフォークを作ってみな」


 そういってリンゴをつまむときに使うような小さな二又のフォークを瞬く間に作った。見よう見まねでやってみたのだが、今度は想像よりもずっと難しかった。


「あれ? 難しい」

「そうですね…形が保てません。どんどん崩れてしまう」


 僕らの苦戦する様子を見て、円さんは何故か満足そうに笑った。


「金属に加えるエルガンの量は多ければ多い程、柔軟になるし、加えたままなら当然形を維持するのは難しい。そこをうまく力加減するのがコツだな」

「なるほど」

「では、少しずつなら」

「ま、コツを掴めるかどうかだからな。時間をかければ、」


 と言いかけたところで止まった。僕と玄さんが円さんの言葉を遮ったからだ。


「このような塩梅でしょうか?」

「僕も、一先ず形にはなりました。」

「…何故できる」


 再び唖然とした顔になった円さんに対して、玄さんは最上級の笑顔で返事をした。


「円様がコツを教えてくださいましたから」

「…」


 その笑顔にやられたのかどうかは知らないが、円さんはそれからは形を支持する以外に余計なちゃちゃなどは入れてこなかった。僕らは淡々と集中し、言われるがままに金属を変形させていく。


最後に元通りの完全な球体に戻すことで、冶金術の授業は一旦終わった。体感ではあっという間の事だったが、実際には二時間が過ぎていた。

読んでいただきありがとうございます。


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