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里帰りした猫又は錬金術師の弟子になる。  作者: 音喜多子平
第二章 岩馬
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錬金術の研究


「ま、ここまで出来るようになるにはもう少し時間がかかる。手始めにこの球が転がらなくなるように凹凸を付けるのを目標にすればいい」

「それで・・・具体的にはどのようにすれば」

「それも今から説明する。その前に【金属の定義】は知っているか?」

「いえ」


 僕らは息ぴったりに首を振った。錬金術の知識はそれなりに持っていると自負しているが、それ以外の事に関して言えば大した事は知らない。


「だろうな。現状、科学的な定義は五つある。常温で固体であること、塑性変形が容易で展延加工が可能なこと、不透明で金属光沢があること、電気と熱をよく伝導すること、そして水溶液中でカチオンとなること」

「…」


 正直言ってチンプンカンプンだった。そもそも妖怪に科学的なことを説明することの何と滑稽な事か。玄さんはさらに戸惑っていたが、それでも朱さんと違って青ざめてはいない。


 円さんは人差し指を立て、更に付け加えた。


「ところが錬金術の定義では更にもう一つある」

「もう一つ?」

「『エルガン』を加えると柔軟化するということ」

「「エルガン?」」


 耳慣れない言葉に僕と玄さんの声が重なる。


「科学的には解明されていないエネルギーの総称を錬金術師はそう呼ぶんだが・・・漫画とかでよくあるだろう? オーラとかチャクラ、霊力、気、魔力、マナ、エーテルとか言われているようなエネルギーのことだ。わかるだろ?」

「まあ、何となく」

「名前はなんでもいいんだが、ともかくそのエルガンを加えると全ての金属は粘土みたいに柔らかくなる性質を持っている。そうすれば素手でも形を変えたりするくらいは訳ない。それはさっき見せた通りだ」

「そのエルガンはどうやったら扱えるのですか?」


 円さんは一つ咳ばらいをした。


「問題はそこだ。エルガンは体内に宿っている自前のものをそのまま使う方法と、体外から一旦取り入れてそれを放出する方法の二つがある。大多数の人間はそのどっちもができないから、体内外のエルガンを操作する修行から始めなきゃならない…けど妖怪は違う」

「え?」

「お前らは妖怪は、妖気が使えるからな」


 その言葉に僕は一筋の光明を得た様な、そんな顔になっていた。


「妖気でもいいんですか?」

「勿論さ。金属は妖気妖力にも反応する。だから同じ初心者でも、人間よりかは一歩進んで修行がスタートできる」

「どうやって妖力を加えればいいんですか?」

「そればかりは実際にやって覚えるしかない。錬金術は『術』と名が付いているからな、れっきとした技術なんだ。学問なら必ず答えが存在するが、技能は体で覚えるしかない。口だけで自転車の乗り方を教えられないのと一緒さ」

「でしたら…」

「ひとまずはやってみますか?」


 僕と玄さんは揃って金属の玉に手を伸ばした。

読んでいただきありがとうございます!


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