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里帰りした猫又は錬金術師の弟子になる。  作者: 音喜多子平
第二章 岩馬
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実物提示教育


「さて。まずは簡単な説明をしておく。つい先日も錬金術の歴史を話したが、そのおさらいだ。錬金術は基本的にはヨーロッパで飛躍的に進歩したが、その前身はギリシャを中心に栄えていた。更にその前、つまり大元の歴史は古代エジプトにまで遡る。錬金術の英約はAlchimieという。この語形は〈el-kimya〉というアラビア語だが語根からいえば、これはギリシア語だ。Kimyaはギリシア語のケム【Khem=〈黒い土地〉】から派生したもので、『黒い土地』っていうのが、すなわち当時のエジプトを意味する言葉だったって訳だな」


 立て板に水の勢いで、流暢に錬金術の基礎的な知識を唱える。僕としては此の世にいるうち間、耳に胼胝ができる程まで聞かされてた話だから苦ではない。玄さんとしても、円さんがおさらいといっているのだから既に教わって事なのだろう。


「さて、ここからが本題だ。錬金術の発祥はエジプトだっていうのは、その通りなんだが、当時のエジプト流錬金術は、今風に言ってしまえば冶金術なんだ」

「冶金術…というと金属を加工したりする、アレですか?」

「そうだ。その他の採取、精製も含めてな…とここまでは一先ず頭の片隅にでも入れておけばいい。話を要約して、今からやることをまとめると・・・」


 円さんは言いながらポケットからビー玉を二回り多くしたような金属の玉を取り出した。そしてそれを一つずつ、僕らに手渡してきた。


「錬金術の基礎は金属を自由自在に操るところにある。そこで手始めにこいつの形を自由に変えられるようにする。それが今日から始める錬金術の修行だ」

「これは?」

「何の変哲もない、ただのステンレス鋼さ。クロムとニッケルの合金鋼で、錆びにくい特徴がある。現代社会では欠かせない金属の一つだな」


 受け取った金属の玉を握ってみる。確かに何の変哲もない金属の塊だった。爪を立ててみても、握りしめてみても容易に形を変えられないのは明白だ。


「こ、これをどうするんですか?」

「だからこれの形を自由自在に変形させろといっている」

「まさか素手で…ですか?」

「当然だろ」

「えぇ…」


 チラリと玄さんの様子を伺った。やはり僕と同じように困ったような顔を浮かべて手の平の上で金属の玉を転がしていた。


 そしてそんな僕達の様子を尻目に円さんは、先に実演をして見せてくれた。両手の指で玉を抓むと、ガムでも伸ばすかのように変形させ、あっという間に延べ棒に変えてしまった。


「それを素手でも行えるのが錬金術師ってことだろう」

「すご」


 棒状になっていた金属はすぐに板のように薄くなり、それからも筒、箱、器、果ては躍動感あふれる鶴の形へと、円さんは息もつかせぬ速さで金属の形を変えていった。


 実は手品でしたと言われても納得するくらい鮮やかな手つきに、少し感動してしまった。


読んでいただきありがとうございます。


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