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里帰りした猫又は錬金術師の弟子になる。  作者: 音喜多子平
第二章 岩馬
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錬金術師の隠れ家

 僕達はすぐに店から円さんの部屋へと移動した。


 約一週間ぶりに入ったが、何をどうしたらこうなるのかというくらいの散らかり様で、前にはあった足の踏み場さえもなくなっていた。玄さん初めてこの部屋に入ったのであろう、少し顔が引きつっていた。


 そんな僕らの事はお構いなしに、円さんは秘密の隠し部屋の鍵となっている絵の前に立って、例の呪文を呟く。


『錬金術はあらゆる世界の扉を叩く』


 裏でからくり仕掛けが動くような鈍い音が部屋の中に響いた。壁の一部が変わり、すぐに奥へと続く階段とそれを照らすランタン、重々しい扉が露わになった。


「これは…」

「こいつは俺の実験室の隠し扉だよ。今俺が言ったのが合言葉だ。この部屋の中でああ言えば、この扉が見つかる仕掛けだ」

「環くんは知ってましたか?」

「実はこの前偶然見せてもらいました。けど中は僕も知らないです」


 階段を下り、最奥の扉の前につくと先頭に立っていた円さんが徐に振り返った。その眼は冗談やお道化たような雰囲気は一切なく、人間であるというのにプレッシャーを感じてしまった。


「錬金術師は秘匿性を何よりも重んじる。この中で見聞きした一切を他言しないと誓えるか?」


 僕は力強く頷いた。それは玄さんも同じだ。


 その旨を確認した円さんはポケットから鍵を取り出し、重々しい扉を押し開けた。ここから先は僕も見た事がない。緊張感と期待感が混じって、自分でも浮足立っているのがよく分かった。


 廊下の先は行き止まりになっており、その左右に対称的な扉が二つあった。


 円さんは向かって左側の部屋に入って行く。この部屋の扉には鍵がかかっていないようだ。


 部屋の中はどこかの道場を思わせるような広い空間となっていた。中央から右側は正しく道場と例えたように板張りの床になっており、壁には木刀、木剣、六尺棒などが掛けられている。


 反対に左側はガラス張りの小部屋が設けられている。こちらは『錬金術師の工房』という言葉が最も似合うような様相だった。時代の掛かった机や棚にフラスコや試験官、ビーカー、奇妙な形の器具や金属などが置かれている。そしてどちらの部屋も円さんの私室と違い、埃一つない程に整理整頓されていた。


 天獄屋は空間が半分働いていない。


 つい先日聞いた言葉を思い出した。この部屋も術で作った部屋なのだろう。


「こっちの部屋は『実践の部屋』って呼んでいる。名前の通り、実践的錬金術を試したり、修練したりするのに使っている」

「もう一つの部屋は?」


 僕は入口の奥にあるであろうもう一つの部屋を指差して尋ねた。


「そっちは『思弁の部屋』だ。体を動かすことよりも理論構築やその暗記に使っている。書籍とか研究データの収納もしている。いずれ見せるさ」

「あの、実践的な錬金術というのは体術の事でしょうか? それなら朱に変わりたいのですが」

「いや、今は玄が顕現しているなら錬金術の技法を教えるよ。体動かすのは、それが終わってからだな」

「わかりました」


 僕らは小さな机の前に正座させられた。


 円さんは教師よろしく僕らの前に立って、講義を始めた。


読んでいただきありがとうございます!


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