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旨い飯

「あっ、やっと降りてきた。もう。二人とも何してるんだよ」


 階段を降りる蒼司朗と陽菜埜の前に、制服姿にスポーツバックを足下に置いた陽菜埜が立っていた。不満そうなむくれっ面で。


「ごめん。ごめん。軽くお説教をね」


手を合わせて謝る陽菜埜。咲良は仕方ないなという表情をしながらも、一瞬此方を見てくる表情には含みがあった。


「私、時間無いから先に行くからね」


 咲良は荷物を手に持ち、玄関に向かい歩いて行く。


「はいはい。行ってらっしゃい」


「うん。行ってきます」


 靴を履き、スポーツバックを肩にかけると足早に玄関から出て行った。


「あの子は何も知らないのか?」


 咲良を見送りながら蒼司朗はポツリと呟く。


「変には思ってるでしょうね。でもソウちゃんの芯の部分は変わらないって、あの子も分かってるのよ」


「買いかぶられても困るぞ」


「はいはい。分かってます。取り敢えず朝ご飯を食べましょ」



 案内されたダイニングルームに入ると、食卓の上には朝食が並べられていた。

 焼き鮭、野菜炒め、目玉焼き、ウインナー。陽菜埜はご飯を茶碗によそい蒼司朗に手渡し、コンロに置かれた鍋から、お椀に味噌汁をよそいながら、


「嫌いなモノとかある?」


「別に無い」


 記憶の中にある食事は酷いものしかなく、こんな文明的な食事は初めてだった。

 緊張しながら箸を手に取ると、焼き鮭に手につける。

 

(うまい)


 素直にそう思った。一口食べて、たがが外れ、貪るように食べ始めた。

 しかし、テーブルマナー以前に箸の使い方も知らない為、茶碗におかずをおいて、握り箸で文字通り掻き込みながら食べていた。


「…なんだよ」


 陽菜埜はそんな蒼司朗の様子を優しい目で見てきた。


「自分の作ったものを美味しそうに食べてくれるとそれだけで嬉しいの」


「…そうかよ」


「そうだよ」


 子供扱いされてるようで釈然としないが、蒼司朗にとってこの朝食はカルチャーショックを受けるほど旨かった。

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