あっ、それ浮くんだ。知らなかった。
「お邪魔します」
「お邪魔されます」
とりあえず輝くメッキのドアから玄関に入る。
大理石でできた高そうではあるが悪趣味ではないタイル。
木目が美しい木製のシューズクローゼット。
壁紙もシックな雰囲気を放ち床に敷いてあるカーペットも落ち着いた雰囲気で統一されていた。
なんだこのおしゃれ空間は……
「さて、いらっしゃいです。ちょっと散らかってるかもしれないですけど、どうぞです」
「あ、はい」
雫ちゃんがキラキラ光る靴を揃えて脱ぎダイヤモンドの鍵をシューズクローゼットの上に置いてあるこれまたお洒落なカゴの中に入れた。
その隣に当然のように金の延べ棒が置いてありここは雫ちゃんの部屋であるとやっと確証を得ることができた。
私も靴を揃えて脱ぎ、靴下……は脱いじゃダメだから履き直してリビングに向かう。
リビングに続くドアは普通のドアで、ガラスが中央にはめ込んであるタイプのものだった。
ガラスがダイヤモンドではないかと疑った私を責めないでほしい。
「あーポテチとチップスッターがあるけどどっちがいい?」
雫ちゃんが身につけた装備品(貴金属)を次々と外しながら私に聞いて来た。
うわっ……靴下の中にまで薄い金の板ってどうなの……は?えっ?ブラからもなんかでて来てるし金の粒を集めたパッドって痛いでしょう?!
えっとポテチかチップスッターのどっちがいいかっていう質問だったよね……考えられるかっ!
ふぅ、落ち着こう……とりあえずソファに座って……
「なんでパッドに金の粒?!」
やっぱり突っ込ませて!いくら砂みたいに細かくてサラサラしててもパッドにそれはないよ!絶対肩が凝るし!
「なんでって言われても……自衛手段としか答えられないですよ?」
雫ちゃんはそういうなりブラのパッドのようなナニカ(黄金の粒)を握った。
そして開くとそこには銃の弾が入っている入れ物が……ん?
「それ本物?」
「うん、45口径用です。弾もちゃんと入ってるです」
「あっはい」
幼馴染ながら今更知った真実!
雫ちゃんはもしものために防衛手段を年々増やしていたということか。
身につけた貴金属を次々と銃弾に錬金するつもりだったのかぁ〜、へぇ〜……。
つまり……雫ちゃんは貴金属依存症ではない?
「もしかして年々キラキラしていった理由って……」
「最近は機関銃を地面から作り出せるようになったのです」
「あぁだから……納得できないよ?!」
「えぇ!なんでですかっ!」
銃弾作るより本体作る方が材料使いますよね?
地面から銃出せるなら銃弾も出せますよね?
「一瞬雫ちゃんの貴金属依存症が治ったかと思った私を呪いたいよ……」
「べっ別にいいじゃないですかっ!ところでポテチかチップスッターどっちにするですか?」
ところでって……急だな。
私はチップスッターのモサモサ感がたまらなく無理だからなぁ。
パリパリしてる方が好きだし。
「ポテチで」
「チップスッターですね。了解です」
「ちょっとっ?人の話聞いてるのっ!」
ソファから立ち上がり勢いよくガラステーブルに手を突く。
やば……やっちまった……これ絶対ヒビ入ってるよ。
雫ちゃんはまだ気づいていないな……よしそーっと、そーと手をガラスから話そうそしてさらっとヒビを何かで隠そう。
そーっと……そーっと……ヒビ……ないね。
軽く指で叩いてみる。
硬い。すっごく硬い。引っ掻いてみようと思ったけど凄いツルツルだし傷もつかない。
ガラスでできた時計を見つけた……いや、輝き方が違う。窓は変に輝いてないからこっちはおそらく……ん?これ防弾ガラス?
ガラステーブルに黒革のソファ、モノクロで統一された部屋はカッコいい。
だけどさ……ソファに置いてあるビーズクッション中の中からなにやら硬質な音がするんですよ。
時計もキラキラ光ってるんですよ。
ガラステーブルのガラスがやけに硬いんですよ。
雫ちゃんが歩いてくる。その他にはビニール袋が握られていた。
「おまたせですね!ポテチですよ!」
「ねぇ雫ちゃん……あっポテチ持ってきたんだ!」
「そうなのですよ……あぁまたポテチ錬金しなきゃ……」
「錬金したやつかよ!食べるけど!」
「いえ?錬金したものは自分でしか食べないですよ?」
「ところでさ雫ちゃん。服着ないの?」
雫ちゃんは上半身裸でパンツ一丁に上から前の空いたジャージを着ていただけだった。
「着てるですよ?本当はスウェット派なのです。でも今日は洗濯中なのです」
ちっ……まだ雫ちゃんには裸族は早かったようですね。
でもいい兆候ですよ。このまま裸ジャージ、下着オンリー。パン1。そして裸族へ辿り着くのですから。
はっ……私はなにを……
話をそらそう。下着の話でいいかな?
「ところで下着ってどこのブランドのやつ使ってる?」
「え?下着のブランドってなんですか?錬金で使ってるので……はっ、脱ぎっぱなしでした……零ちゃんちょっと来てください」
なんだと?自作ブラだと!なんたる不覚……納得できるものがないなら納得できるものを作ればいいということか……
私、雫ちゃんに負けた……下着愛で雫ちゃんに負けたよ……
気を落としながらトボトボと雫ちゃんについていく。
自慢するならするがいいさ……私を馬鹿にして笑うといい……
「零ちゃん!あれとってください!」
周りを見渡すとどうやらここは寝室みたいだ。
ベッドは普通のもので……これ普通……いわゆるお姫様ベッドだけど普通か……
雫ちゃんが天井を指差していたので何事かと天井を見上げる。
「は?」
「早くブラとってくださいです」
なんでブラが浮いてるの?
へ、へぇ……最近のブラって天使のブラとか、つけてる感じが空に登るよう、とか言われてたけど本当に飛ぶんだぁ……知らなかったなぁ……
「ってんなわけないでしょう?!」
私の叫びが虚しく響いた