店員さん、あなたが神か
さてプリントを透明のファイルに詰め込みカバンにしまう。
配布物も全部しまう。
結構な量があったが私には念動もどきがあるので問題ない。
ちなみに私の超能力は半径10メートルまでしか100%コントロールできない。
10メートルを超えると段々とコントロールが効かなくなってくる。
2キロ離れるとギリギリ2%くらいしかコントロールできない。
出力が0〜2%か98〜100%の間でしか調整できない。
5キロ以上離れると100%の力か0%かの極端なコントロールになってしまう。
ちなみに加減ができない状況で空き缶なんかを浮かべて移動させようとすると
空き缶が圧縮されたり爆発四散したりする。
私の言うコントロールというのは出力の問題なのだ。
これで悲劇を何回も生んだため普段から自分の体を少し浮かせるという修行方法に至った。
昔はこのコントロールできる範囲が30センチだったのでこれはもう大変だった。
私が能力を使うとその部分が確実にぶっ壊れるのだ。
私偉いぞ!
それはともかくゲームを買いに行かないと。
流石に今日空を飛ぶような勇気はもうないよ。
ということで歩いて…浮かんでるけど、ゲームを買いに行くことにした。
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「げっ…天野…」
「せ、先生…ですか?」
なぜ乙女ゲームコーナーに宮本先生が…
しかも黒い帽子にマスクだと?!
怪しさ満点すぎる。
なぜ店員に注意されない?!
「あっ宮本さんじゃないですか!頼まれた売れ筋の商品取っておきましたよ『あなたは』シリーズ全部買うなんてなかなか宮本さんも隅に置けませんねぇ」
なんだと?!
宮本先生が乙女ゲーム好きだなんて…
「ちょっお前!生徒の前だから!」
「そういえば先生やってましたね…生徒さん?宮本さんの趣味バレてやんの、ハハハ…よっボーイズラブ!」
「違うわっ!」
「いい男ウホっ、とかいうでしょ」
「それネタだから」
まじかよ…引くわー。
「生徒さんに引かれてますよ」
「お前のせいだ……あぁ教員人生半分終わった」
「半分かよ!」
「どこか遠い場所に左遷されるのさ…はぁ元々はギャルゲーの方が好きなのに…黒田皇帝の声とかいいじゃん?しかも佐々田聖女も今回のゲームには出てるんだぞ?レアだろ!買うしかないだろ!」
「確かに!」
それは同意だ!わかる!すごいわかるよ!
「あの美声!」
「深みのある声!」
「「80過ぎのおばあちゃんだけど!」」
なんだ……
「「同士だったか」」
声優好きの同志に悪い奴はいないからね。
「いやーまさか佐々田聖女が出てるなんて…初耳なんですけど」
「それがねぇサプライズなんだと。引退作品らしいよ」
「「な・ん・だ・と!!」」
大問題だろそれ。至宝が一つなくなるんだぞ?!
「これは由々しき問題じゃないか」
「由々しき問題ですね」
どうしたものか…宮本先生と同じ体勢で同じことについて考えていることは大いに遺憾であるのだがこれについては仕方のないことだ。
佐々田聖女の難民が出るぞ…
過去作にプレミアがつくかもしれない…
「「今のうちに買っておくか…」」
「仲良しじゃないですか…そういうと思って過去作用意しておきましたよ」
「鎌田!「「あなたが神か!!」」
くぅ……想定外の出費…だがいい買い物をした。
「これから三食お茶漬けだ」
三食お茶漬けって…笑えるわ。
私にはその心配はないぞ!なにせ……
「私は実家暮らしなんで大丈夫ですね」
これが実家暮らしの利点ですよ!
実家の偉大さを感じる!
「天野…明日からお前寮生活だぞ?」
「…………仕送りしてもらいます」
盲点だ…寮暮らしということは自炊じゃないか。
寮暮らしといっても実質一人暮らしと変わらないらしいからね。
「働け……というかその反応だとまだ引越し住んでないな?」
「……」
午後2時…まだ……まだ間に合う。
「先生…それでは、頑張ってください」
「お、おう。お前もな」
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部屋の荷物を全て浮かべる。
そして布を掛ける。
そして街の中を奇異を見る目で見られながらも突っ切り私の部屋の中へ荷物を放り込む。
よし、引っ越し完了。
1時間ほどかかった。
というか佐々田聖女の作品買ったはいいけど半分ギャルゲーじゃないか。
まぁギャルゲーをやるのもたまにはいいかもしれない。
……ギャルゲーも結構面白い。
ぶちまけた荷物を浮かべて整理整頓する。
緻密な動きをさせるのはなかなか訓練になる。
正直自分で動いて手で並べた方が楽だ。
これもいつかの私が楽をするため…
整頓終了。
やり遂げた。私はやり遂げたぞ!
……服をキャストオフしたい。
けれどまだ自分の家でないという感じからキャストオフしづらいというジレンマ。
とりあえず掃除しよう。