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西部での日々 10

 モリナは不思議な存在だ。

 めちゃくちゃ可愛い。

 性格も良いし、この一年でそばかすも消え、体つきもますます女らしく磨きが掛かってきた。

 どれだけ抱きしめてもすぐ引き寄せたくなる。


 そうだな、美人と言うと……いや美人だよ? 間違いなく美人なんだけど。

 ターゼントのアンナさんとかオーレとか、んー、シンファさんとかルシアさんとかさ。


 ああいういかにも美形、みたいな人達と比べたら、まあそれは敵わないけど。


 いや違う違う。

 タイプが違うな、うん。

 可愛らしさはモリナの圧勝。

 ついでに若さも圧勝。




 ……ゴホン。

 女神様、今のは聞かなかった事にして。

 告げ口は無しな。


 まあ、とにかくなんで俺がこんなにもモリナに夢中になってるか、俺も随分自分を分析してみた。


 いや言いたくないよ?

 言いたくないけど、自分を知る為には必要だし。

 で、まあ。


 考えてみた訳だ。


 最初の出会い。

 その時は別にどうって事も思わなかった。

 あ、マジで告げ口無しね。


 で。

 えーっと、オウルの町ね。

 あそこで最初に意識した訳だ。

 ちょびっとだけね。

 俺、大人だったし。別に格好つけてるとかじゃな……いや。はいはい、分かった分かった。



 そんで、夜な。

 モリナなー、十五にしてあんなに大胆だとはね。

 ギャップっていうの?

 子供っぽい、素朴な田舎の良い子、みたいに思ってたのがさ。

 あんな風に迫られたら、ねえ?


 グラッと来ちゃうじゃん?


 え?

 ……うっせーな、分かったよ。

 良い体してんなーって思ってたよ。

 満足か。

 あっそ。


 ただそれだけじゃないぞ。

 ほんとにさ、あの時のモリナは……こう、何て言っていいか分かんないんだけど。


 助けて欲しいって言ってるみたいな気がして。

 多分、合ってると思う。

 なんで俺? とは思ったけどね。




 だってそうだろ?

 正直言うと俺、モテた事ないし。

 冷めてるとかさ、ガキだとか目つき悪いだの何だの、そんなんばっかりだったしさ。

 

 だからさ、最初は思ってた訳よ。

 処女捨てたいだけなんじゃねーの、って。

 そんでさ、マジかーなんて思ったり。


 ん?

 いやそりゃまあね。

 十五歳は流石にねえ。

 ラッキーですませるにはちょっと重いだろ?

 


 待て待て、男は皆そうだって。

 ヤレんならヤリたいって、絶対そうなんだって。

 


 じゃあ何でって……だから歳がさ。

 

 

 モリナがまだ男を知らないってすぐ分かったよ。

 うん、それは分かるよ子供じゃないし。

 だからかもしれない。

 

 こう、計算が無いっていうか。

 それは俺には衝撃的というかさ。


 ……今でも思い出せるよ、うん。


 精神的な部分かー、そうだなー。

 まあそこもあるよね。

 無垢な存在が無防備に飛び込んできてくれる嬉しさっていうか、温かみっていうの?


 そういう奴。

 後はそうね、やっぱり状況もあったよね。


 密室じゃん?

 夜にさあ。

 濡れてたのもポイントだよね。


 性欲なんか普通でしょ。

 有るに決まってんだから。

 なんで?



 いやじゃあもういいよ。

 十五歳だからとか考えなかった。

 すげーそそる女が居た。後腐れなくオールオッケー。手ぇ出した。それでいい?



 待て。取り消す。

 そうじゃない。

 今だって俺はモリナの体以外にも失いたくないものが一杯ある。


 笑いかけてくれる顔も、俺を頼ってくれる所も、無邪気な所も、素直で正直で優しくて。


 全部大事だ。



 ……うん、それも否定はしない。

 最高に良い女だよ。

 奔放であけすけで。

 綺麗な肌も細い腰も形の良い胸も、声も息もその全部に俺は夢中だよ。


 だって別に悪い事じゃないだろ?

 とにかく全部さ。

 

 ああ、好きだね。

 その若さも含めてね。

 手放すなんて考えられないよ。



 歳取ったら俺だってそん時ゃもうジジイじゃん。

 それ意味ある?


 え。

 何言ってんの?



 モノって流石にそれは失礼じゃない?

 だって人間はみんな……向こう?


 モリナは俺をどう思ってるかって?

 いや惚れてるでしょ?

 どこにって本人に聞けよ。


 俺? 俺は……そういやどこなんだろうな。

 モリナは俺の何を好きなんだろうな。

 それは分かんないや。

 勘違いかもね。


 子供だしね。

 あ、もう成人したか……







 白く光る存在。

 俺は女神と呼んでいたがきっと違う。

 懺悔や言い訳の為の都合の良い存在。

 

 子供の俺、成人前の俺、今の俺。


 グチャグチャに姿を変えながら一人で喋っている。

 とても他人には聞かせられない内容だ。

 特にモリナには。

 

 まだ喋り続けている。

 下種な内容はもういい、聞き飽きた。

 静かにしてくれ……









「……何だこの夢」


 目が覚める。

 まだ暗い。夜中に目が覚めたようだ。

 隣で寝息を立てるモリナをそっと窺う。

 

 可愛いな。


 その寝顔に幸せを感じる。

 そっと触れるか触れないかの加減で抱きしめる。

 顔に、首に、体に口付けし、シーツをかけ直す。


 おやすみ、モリナ。

 大切にするよ。 



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