ありがとう、見つけてくれて
それから、すぐにカンナと京くんに謝りにいって。
逆になんだか慰められて。
夜になって、朝になって。
鹿鳴くんはいつも通り大人しいけど、廊下ですれ違う時は挨拶するくらいにはなって。
でも、あれから、鹿鳴くんは新しい歌をアップする事は無かった。
そしてあっという間に、一週間がたっていた。
カンナは相変わらずバンドに誘ってくるし。
京くんは相変わらず無口だし。
鹿鳴くんは相変わらず内気なままだった。
晩御飯を食べてお風呂からあがった私は、いつものようにパソコンを起動して、お気に入りのチャンネルをチェックした。
すると。
「鹿鳴くん、新しい曲アップしてる!!」
急いでクリックする。
タイトルは、『オリジナル』
カバーとかじゃ無くてオリジナルなんだ。
多分初めてなんじゃないかと思う。
ドキドキしながら再生ボタンを押す。
アコースティックギターを持った鹿鳴くんが写っていた。
それよりも驚いたのは。
「マスクしてない・・・」
素顔のままの鹿鳴くんが、モニターの中で歌いはじめた。
シンプルなギターに乗せて、鹿鳴くんの綺麗な声がスピーカーから流れてくる。
それは。
ありがとうって
沢山の人の中から
ボクを見つけてくれてありがとうって
ボクの声を聴いてくれてありがとうって
ボクの歌を好きになってくれてありがとうって
途中から、涙が止まらなくなった。
鹿鳴くんは一週間、この曲を作ってたんだ。
曲が終わってか、どうしても抑え切れなくて鹿鳴くんにメッセージを送った。
『聴いたよ!!
見つけたよ!!
感動したよ!!
好きだよ!!』
そう送信して、それでも足りなくてカンナに電話した。
「今から行くから!!!!」