私たちとバンド組まない?
翌日。
カンナたちが練習で使っているスタジオに、鹿鳴くんがいた。
いたと言うか、連れてこられた。
というか、強引に引きずられてきたんだと思う。
「あ、あの・・・」
スタジオに入った時、彼は小さな声で何か言おうとしたけれど、その声はすぐに途切れてしまった。
カンナは
「気楽にしてって」
と、満面の笑顔で言うとドラムのセッティングを始めるし。
京くんは極度の無口で、私でさえ何か話しているのを見たのは数回しかない。
私はというと、スタジオ内に置かれた長椅子に、鹿鳴くんと並んで座っているのでドキドキしっぱなしだった。
しかもカンナは勢いに任せて鹿鳴くんのLINEアドレスを聞き出し、この4人でグループチャットまで作ってしまったのだ。
(ナイス!!カンナ!!)
私は心の中でガッツポーズを決めた。
それにしても。
何か話したいな。
でも、何を話せばいいのか分からない。
でも、無言は無言でなんか辛い。
そんな、1人で悶々としている私をよそに、2人の用意は出来たようだった。
そして
音が爆発した
いきなりハイテンポで繰り出されるドラム、そのテンポにぴったりと合わせられた京くんのベースライン。
「すご・・・」
隣から小さい、でも熱のこもった声が聞こえた気がした。
演奏は、始まりと同じように唐突に終わった。
余韻も何もない、ぶった切られるようなラストではあったが、それがこの2人の演奏にぴったりだった。
たっぷりと汗をかき、スポーツドリンクを手にしたカンナが疲れた様子も見せずに駆け寄ってくる。
「どう?だったかな?」
鹿鳴くんの感想を聞きたいな。
カンナはそう付け加えた。
「凄かったです、本当に」
小さくもハッキリと答えた。
「良かった!!じゃあここならが本題なんだけど」
「本題?ですか」
「私たちとバンド組まない?」