まだいないの?
カンナとおしゃべりしていたらあっという間に下校のチャイムが鳴ってしまった。
慌てて職員室に音楽室の鍵を返すと、私たちは学校を後にした。
「でさー、瑞希もいい加減諦めてメンバーに入ってくれないかなー?」
カンナは2年のはじめからバンドをやっている。
しかもドラム!!
女の子なのに両手両足を駆使して激しく演奏する姿は私が見てもかっこいいと思う。
ただ、そのバンドには大きな問題があった。
「それで?他にメンバーは増えたの?」
「あう(´•ω•̥`)」
「まだ京くんだけなのね」
「うん」
京くんというのがカンナのバンド唯一のメンバー。
しかも担当はベースという。
さらに言うと彼のベースもめちゃめちゃ上手くて、カンナとの低音セッションは凄く迫力がある。
「私はそのままでもいいと思うよ。ライブでも盛り上がってたでしょ」
「ダメなのよー。あたしはもっとバンドバンドしたのがやりたいの!!」
「バンドバンドって、なにそれ」
「だから最低でもトリオ。せめて4人でカルテット。最終目的はフルオケまで行きたいわね」
「フルオーケストラにはドラムセットもエレキベースも入ってないけどね」
取り敢えず、ボケには突っ込んでおこう。
カンナは真面目な話の中でボケでくるから。
「じゃあ、何を入れればいいのよ」
「せめてギターかキーボードがあればねぇ」
「なんだって?」
「だから、せめてギターかキーボードが」
「なに?もう一回」
「だーかーらー、ギターかキーボードって。あーそうかー罠かー」
「引っかかったな!!そう、そのキーボードが今目の前にいるのよ!!」
「私は無理よ、そんな人前で演奏なんて」
「瑞希の腕前なら全然大丈夫よ」
「いやよ、恥ずかしい」
「再来月、学生バンドの合同ライブがあるのよー。だからお願い!!」
「大きいの?」
「けっこう」
「余計無理よー!!」