2003年3月 SIDE SAKUYA
とーこは自分に自信がなさすぎる。
この前イベントに行ったときだって、俺にはとーこしか見えてなかったって言ってるのに、会場にいた、他のオンナに声をかけないかヒヤヒヤしたって言われてしまった。そんなに節操なく見えるのか、俺は。
正直、あのイベントの時、フロア全体を見渡したのは事実だ。けど、とーこよりいいオンナなんていなかった。とーこは、可愛い子が沢山居たって言ってたけど俺にはそれが判らない。もしかして惚れた欲目ってやつなのか?
確かに、俺は実紗と別れてから、気持ちの整理をして改めてとーこを真正面から見て、とーこをいいオンナだと思うようになってきた。
俺がオンナ選びで重視するのは歯並びと顎のライン。もちろん美人の方がいいし、スタイルだっていいほうがいい。けど、どんなに美人でもスタイルが良くても歯並びの悪いオンナと顎のラインが好みで無いオンナは論外だった。
とーこは正直、美人では無い。ただ、歯並びは完璧だし、顎のラインも綺麗で俺の好みだ。
それに小動物系の顔が、愛らしいと思うときがある。
事件に遭った一時期、無表情な顔をして言葉も空中を飛んでいたが、今は無邪気に笑い、言葉も豊かになっている。
それに、俺の心を知らないうちに癒してくれる。俺が欲しいと思う物を、全力で手に入れようと努力してくれる。
志憧だって、その一つだ。
俺たちには金が無い。でも、その金の無い中で最善の方法を考えて、志憧を探してきた。
とーこは俺の夢を叶える天才だ。
「ねぇ、さくや。」
「ん?」
「志憧くんが来たら、しばらくは、居間で寝た方がいいと思う?」
「なして?」
「淋しがったら可哀想でしょ?」
「淋しがったら、クンクン鳴くだろ。俺、眠りが浅くて絶対気付くから、大丈夫だべ。」
「でも、一緒に寝ちゃダメだよ。癖になるから。」
「判ってるよ。」
言ってはみたが、その誘惑に勝てるかは判らなかった。出来れば志憧とは一緒に寝たい。
「どうしても、志憧と寝ちゃダメ?」
「ダメ。」
「何でよ。」
「ベッドから落ちたら、志憧くんが骨折するかもしれないし危ないから。」
とーこの言う事はごもっともだった。確かに志憧の為だ。ただ、いつまで我慢できるかは判らなかった。




