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俺たちの進む道には  作者: 風 桜月
2003年2月
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2003年2月 SIDE TOOKO

「イベント行くべ。」

 言いだしたのはさくや。志憧が来たら、当分、夜遊び歩く事もないだろう。それに、最近夜の街とは疎遠だ。

 雪も降ってるし、歓楽街まで出るのが面倒だって言うのも原因の1つだった。

 いつも面倒がるさくやの方から言ってきたから、よっぽど行きたいんだろうと思って、あたしは二つ返事で了解した。

 久しぶりに夜の街に繰り出す。イベント会場は女の子で溢れていた。

 適度に煩い音楽と、適度に混んでるフロア。どこを見回しても、さくやが1番格好良い。

 そんなさくやの隣に自分が居られることが嬉しかった。

 さくやは、あたしの手を繋いで壁側に移動すると、タバコを吸いながら周囲を見回していた。

「とーこ。こっち見てろ。」

「どうしたの?」

「いたるがいる。」

 声が一トーン低い。あたしはさくやがいたるさんに何かしてしまわないか気が気でなかった。

「おう。」

「桜夜さん、こんばんは。」

 そこには、こんな場にネクタイをした人が立っていた。

「真。久しぶりだな。」

「お久し振りです。」

「とーこ。こいつ、真。ネクタイがトレードマーク。」

「こんばんは。」

 真さんはメガネをかけて、真面目そうなイメージだった。どうしてさくやと仲が良いのか判らないほど接点が見受けられない。

「真。どこで飲んでんだ?」

「あっちです。」

「とーこ。行こうぜ。」

 それは、いたるさんからは遠く離れた位置だった。

 そこにいるのは大半がタチの人だと思う。でも、さくやより格好良い人は、見受けられない。ネコっぽい子も何人かいた。ネコの子の目に気合が入ったのが判る。

「真。紹介しろよ。」

「はい。まゆさん、です。」

 以前、さくやを忘れようと遊び歩いてたとき、アドレスを交換した一人だった。こんなところでまた再会出来るとは思ってもみなかった。

「あ、まゆさん。お久し振りです。」

「瞳呼ちゃん。彼女出来たんだ。」

 人前で「彼女」と言うのがなんだかくすぐったくて、軽く頷くと、さくやが「何?とーこ、知り合い?」と、横から言ってきた。

「うん。前、イベントで逢ったの。」

「ふぅん。」

 さくやはまゆさんを値踏みするように見て、害はないと判断したのか、真さんに他のメンバーの紹介を続けさせた。

「こちらが、仁さん。」

 いかにもタチだって判る人が座ったまま「宜しく。」とさくやに鋭い視線を向ける。

「それと、みきちゃんとはじめちゃん。」

「こんばんは。」

「宜しくお願いします。」

 多分、普段しゃべるよりワントーンは高い声でしゃべってるんだろうなって判る声で、あたしは全く無視された。さくや狙いなんだろう。

「俺はさくや。彼女のとーこ。宜しく。」

「彼女の」と言った途端、みきちゃんとはじめちゃんは明らかに落胆した表情になった。

 やっぱり、さくや狙いだったらしい。

 このフロア内でさくやは目立ってる。1番格好良いから。狙いたくなるきもちも判らないでない。

 みきちゃんだってはじめちゃんだって、可愛い。他にも可愛い子はフロアにいっぱいいた。あたしはさくやが酔った勢いであたし以外の女の子を口説き始めないかひやひやした。

「今日のイベント、レベル高いね。可愛い子多いもんね。」

「そうか?俺にはとーこしか見えないけど?」

 一瞬、何を言われたのか判らなかった。意味を理解するまで数秒かかって、顔が赤くなる。

「もう、さくや。冗談止めてよ。」

「本当の事だろうに。」

 そうは言われても、スタイルの良い美人の子とかがさくやの傍を通るだけでドキドキしてしまう。彼女たちは確実にさくや狙いだ。目を見れば判る。気合の入り方が違う。

「そういえば、まゆさんって、トリマーさんじゃなかったですっけ?」

 ずっと前の記憶だから、定かでなくて確認する。

「トリマーだけど。」

「トリマー?どこで?」

「自分ん家。」

「マジか。今度家にヨーキーが来るんだけどさ、トリミングしてくれない?」

「良いよ。割安でやってやるよ。」

「マジ。ラッキー。」

「えー、まゆさん。じゃあ今度メールしても良いですか?」

「良いけど、桜夜、いいのか?」

「おう。俺面倒だから、とーことしといて。」

「瞳呼ちゃん、口説いちゃうかもよ。」

「それは駄目。」

 即答して、さくやはあたしの肩を抱く。

「とーこは俺の。手ぇ出すなよ。」

「冗談だって。」

 まゆさんは笑って、フロアに踊りに行った。


 久々のイベントは楽しかった。踊るだけ踊って、疲れたら座れるところを探してまゆさんや真さんとしゃべった。真さん好みの女の子がいると、さくやが「声かけてきてやろうか?」と面白がった。

「ボクは硬派なんです。」

 真さんは顔を真っ赤にしながらさくやに抗議していた。

 あたしは、真さんの為に声をかけに行った女の子が、さくやに惚れちゃったらどうしようと気が気では無かった。そのくらい、さくやを見ている女の子は多かった。


 イベントはまだまだ続いていたけれど、終電に乗り遅れないように、あたしたちは途中で抜けて地下鉄駅に向かった。

 さくやはいつもよりは酔ってなくて、あたしの助け無しでも切符が買えるくらいだった。

「フロアの中で、さくやが1番格好良かったね。」

「だべ。」

 そんな言葉は言われ慣れてると言わんばかりの憎らしいくらいしてやったりの顔。

「そんな、さくやの隣に、あたしなんかがいていいのか不安だった。」

「何よ、それ。」

 明らかに、不機嫌になった声。さくやを見上げると怒ったような顔をしている。

「だってフロアには、可愛い子もいっぱいいたし。」

「関係ないね。」

「だから、さくやが心配だった。」

「何でよ?」

「だって、フロアの中で1番格好良かったから。フロア中の女の子がさくやに見とれていたよ。」

「意味判んねぇ。」

「さくやが酔っ払って、可愛い子、ナンパしちゃうんじゃないかとドキドキした。」

 するとさくやは切れそうに鋭い瞳であたしを睨み付けた。

「俺にはとーこしかいねぇって、どうして判らねぇの?」

 その言葉は怒っていたけれど、あたしを腰砕けにするには十分に魅惑的だった。

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