2002年11月 SIDE SAKUYA
真紀ととーこが話に夢中になっている最中に、たけるが何気なく話しかけてきた。
「真紀は子持ちなんだ。」
「お前、そこまで手ぇ出したのかよ。」
「仕方ないだろ。惚れたんだから。」
確かに、仕方ない。俺だって人の事は言えない。実紗だって子持ちだった。
「今、離婚したてでさ。俺、子持ちは初めてだから、子供とどう接していいのか悩んでる。」
「子供、オンナ?オトコ?」
「女の子。四歳。」
「そりゃ、悩むわな。」
女の子は多感だ。四歳って年頃の子供に、性同一性障害を理解させるのも難しいだろう。
たけるは残念ながら外見的に完全にオトコには見えない。もしかしたら、その子を混乱させてしまうかもしれない。
「自然体でいくしかないんじゃね?」
一番当たり障りのない返事をしてみる。
「桜夜だったら、俺は男だって言うか?」
「それが、本当のことだろ。」
「だよなぁ。」
自信なげに肩を落としたたけるのところに真紀が戻ってきた。
「たける。あちらのお客さんからビール一ついただきました。」
たけるは途端、営業モードに戻って笑顔で「いただきまーす。」とビールを注ぎ始めた。
今なら終電の地下鉄に間に合う。急いで身支度を終えて勘定を済ませ地下鉄駅に向かう。
足元がおぼつかないくらい酔っぱらった俺を、とーこは一生懸命支えてくれた。
「さくや。こっち。」
自分では真っ直ぐ歩いているつもりなんだけれど、地面がグラグラ揺れて見える。
何とか終電に間に合って、ギュウギュウ詰めの地下鉄で終点駅まで乗って、そこからはタクシーしか手段がないから、仕方なくタクシーに乗る。
運転手に住所を伝えたのはとーこ。俺はもうほとんど寝てた。
「さくや。起きて。着いたよ。」
言われて目を覚ます。自分の身体が自分の身体じゃないみたいに動く。勘定を済ませたとーこが支えてくれなければ玄関までたどり着けなかった。
気がつけば服を全部脱いでパンツ一丁で寝てる自分。ハッとした。とーこがいない。
飛び起きて居間に出る。そこにはタオルケットにくるまってソファで寝ているとーこがいた。




