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俺たちの進む道には  作者: 風 桜月
2002年11月
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2002年11月 SIDE SAKUYA

 たけるの店には幸い実紗と来た思い出は一度しかない。先輩に呼び出された時に実紗はここで俺の為に『I Will Always Love You』を歌った。その時の事を思い出す。実紗と付き合っている間、逢った回数は少ない。とーこと逢っている回数の方が多いくらいだ。けれど、その一回一回が大切だった。我儘で振り回されていた。けれど、愛していた。

 いろいろな感情が渦巻いて、俺はあまりしゃべらなかった。

 俺が無口になると、見た目が怖くなることは自覚していた。たけるもとーこもあまり俺に話しかけてこなかった。それが有り難い。

 こういう時に空気を読んで放っておいてくれるのがこの二人のいいところだと思う。

 幾分酔いが回ってきて、歌いたくなってきた。

 店には他の客も入り始めて、たけるも接客に追われ始めたから、俺はとーことの会話の代わりに歌うことにした。

 飲んでも喉はイカれない。俺が歌うと店中の客が聞き入っている感じがたまらなく気持ちいい。今日の選曲はどうしても失恋の曲に偏った。

 電話の時には、冷静に別れられたと思っていた。

 電話の後には、とーこの方が先に泣いたから、失恋の痛みを感じる暇がなかった。

 今、じわじわと実紗と別れた痛みを感じている。

 どうしたんだ、俺。俺は完全に混乱していた。

「珍しいな。とーこ。歌うの?」

「うん。」

 たけるがとーこと何やら話し合っているのも耳に入らなかった。

 すると、客が多い時には珍しく、とーこが歌い始めた。とーこは音痴って程ではないが歌は上手い方ではない。けど、一生懸命歌っている。これはSPEEDの曲だ。

 とーこは俺の方を向いて歌っている。まるで、店の客なんて一人もいないかのような錯覚に陥る。

「あなたの為に生きていきたい。」

 それは、歌詞だ。けれど、とーこの真っ黒な意思を秘めた瞳で真っ直ぐ見つめて言われたら、本気にしてしまう。

 とーこはこれが言いたくて、この曲を選んだんだろうか。

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