2002年7月 SIDE TOOKO
身体の奥からジンジン痛む。
痛み止めが全然効いてくれない。
ひったくりに遭った瞬間の事を何度も思い出す。突然宙に浮いて地面に叩きつけられる感触。その後降ってくる雨。
息が苦しくなる。
どうしよう、眠れない。
痛くて寝返る事すら出来ない。
その時、背後からふんわり抱き締められた。
さくやは眠っていると思っていたからビックリした。
「眠れねぇの?」
もう日付をまたいでる。あたしはお休みだけどさくやは明日もお仕事がある。寝てなきゃならない時間だ。
出来るだけ平静を装って「ちょっと目が覚めちゃった。」
「嘘吐け。ずっと眠れてねぇクセに。」
本当はさくやの方を向きたいんだけれど右側が痛くてそうはいかない。
すると、さくやが起き上がってあたしの正面に来てくれた。
「痛いの?」
「うん、ちょっと。」
「辛いか?」
「大丈夫。」
ここで辛いって言ってしまったらさくやが心配しちゃうから、あたしは嘘を吐いた。
さくやが腕枕をしてくれた。それだけで、心に出来たささくれが治っていく気がする。
「よく頑張ったな。」
気が付いたら泣いていた。
どうしてか判らない。傷は泣くほど痛くない。けれど涙が溢れて止まらなかった。
「怖かったろ。」
怖かったし、痛かった。朝まで飲んでた自分が悪いから誰のせいにも出来なくて罪悪感だけが残った。だから、今まで泣けなかった。
さくやは傷に響かない背中をさすってくれた。
静かだ。時々あたしのしゃくりあげる声。その他は静かな空間であたしは落ち着くまで泣いた。
「ごめんね、さくや。」
「謝るな。泣いて忘れろとは言わない。けど、泣くのを我慢するな。」
泣いていいんだ。さくやの前でなら。
そう思った途端ホッとした。今まで張りつめていた神経がフッと楽になる。
その夜はさくやの腕枕の中、さくやが背中をさすってくれた記憶を最後に睡魔に襲われて眠った。怖い夢は、見なかった。




