2002年6月 SIDE SAKUYA
髪を染めたら、いかついなりが、尚更いかつくなって、別に喧嘩売ってる訳でもねぇのに、道を歩いてたら、自然と道を譲られたりした。
このなりで『FIVE』に行ったら、先輩、何て言うだろう。
興味もあって、俺は休みの前の日に『FIVE』に向かった。
「おー桜夜!その髪、どうした?」
予想通りの反応に俺は気をよくした。
「ちょっとイメチェンです。」
「いいなぁ。それ、どうやってやんのよ?」
カウンターに座って、頼む前からビールが出てくる。俺は先輩にこの髪の作り上げ方をレクチャーしていた。
「俺もやろう。」
「いいっすね。先輩なら似合いますよ。」
先輩は見た目がいかつい。きっと銀髪は似合うだろう。夜の商売だから髪色云々で煩く言われることもないだろうし。
「お前、昼間の仕事で、よく文句言われないな。」
「俺の職場、仕事が出来れば、外見は煩くないんすよ。」
「お前向きって事か。」
「そうっすね。あ、先輩、一杯どうぞ。」
「お、サンキュー。」
先輩もビールを注いで乾杯した。
「次に桜夜が来る時は、銀髪にしてるからよ。」
「楽しみにしてます。」
俺より銀髪の似合うヤツはいないって心のどこかで思ってる。けど、先輩の銀髪姿は正直楽しみだった。
「それより、桜夜。まだ、瞳呼と逢っているのか?」
いきなりの直球な質問に、まだ酔ってないせいか顔を作る暇がなかった。
「いや。いいんだ。逢ってても。」
先輩はいつきさんがグラスなんかを洗ってて聞こえないうちに話してしまおうとしているのか、声のトーンを少し下げた。
「あんなことがあって、俺たちで別れさせたけどよ、正直、俺は桜夜がどっちを選んでも良いと思ってる。ただな……。」
そこで、いつきさんがカウンターの方に戻って来たから話は一旦中断した。そして、いつきさんがテーブル席の方に酒を運んでる隙に、先輩はまた口を開いた。
「もし、瞳呼を選ぶなら、守り抜いて欲しいんだ。俺、アイツの事、妹のように思ってるからよ。」
その言葉は重々しくて心に響いた。




