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俺たちの進む道には  作者: 風 桜月
2002年6月
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2002年6月 SIDE TOOKO

「お前。髪、染めれる?」

 それはいきなりの質問だった。

「やったことはないけど、出来ると思う。」

「俺、髪染めたいんだけど、自分じゃあ出来ないと思うんだ。で、頼みたいんだ。」

「いいよ。やってみる。何色にするの?」

「シルバーアッシュ。」

「そんな色にして職場大丈夫なの?」

「俺の職場、煩くねぇから。」

 そういう問題じゃないと思う。シルバーアッシュってったら、オオカミみたいな髪色だ。

 本当に大丈夫なのかな?

 あたしの心配も知らず、さくやはドラッグストアでヘアカラーを選んでる。

「黒からすぐにシルバーには出来ねぇんだな。」

「一回色を抜いてからの方が、色が入りやすいみたいだね。」

 ヘヤカラーの後ろの説明書きを読みながら、二人で色々と研究する。

「じゃあ、一回金髪にするわ。で、その後シルバーにして。」

「髪、痛みそうだね。」

「そんなのいいんだ。格好良ければ関係ねぇ。」

 ブリーチとシルバーアッシュのヘアカラーの二箱をお会計してお家に帰った。

「じゃあ、頼むね。」

 職場で廃棄処分になったという白衣を着て、スタンバイOKのさくやに、染め方の説明を見ながらゴム手袋をする。

「じゃあ、いくよ?」

「お願いします。」

 ブリーチ独特のツンとした臭いで何度も咳き込みそうになりながら、さくやの髪を染める。説明書通りに染めると二十分くらいでクリームを髪に塗り終えた。

「髪にラップかけてみる?」

「そうだな。」

 お台所からラップを持ってきて、髪を包み込むように巻き付ける。

「何分くらい待ったら良いかな?」

「三十分くらい待ってみるべ。」

 キッチンタイマーをかけて、三十分待ってみる。タイマーが鳴って、さくやはクリームを流すためにお風呂場に行った。染めムラがないか心配だ。

 けれど、お風呂場から出てきたさくやの髪はどこからどう見ても金髪だった。

 さくやは全身鏡と手鏡を使って、くまなく髪をチェックしている。

「完璧。」

「良かった。」

「お前、髪染めるの上手いじゃん。」

「ムラになったらどうしようって思ってたんだよ。」

「上手い、上手い。」

「ありがとう。」

 褒められて、さくやの為になれたことが単純に嬉しかった。

「今日はこのまま金でいて、明日シルバーだな。」

「そうだね。これ以上やると、髪に負担かかりそうだもんね。」

 さくやは色が白いから、金髪がよく似合う。シルバーはもっと似合うんだろうな。

「サンキュ。」

「どういたしまして。」

 頬にチュってされてドキドキした。さくやはズルい。キスなんて何回もしているのに、こんな時に頬にチュってするなんて。


 次の日、さくやは金髪で仕事に行った。帰って来て「シルバーにしてください。」とあたしを呼んだ。

「金髪、怒られなかった?」

「柏木らしいって、笑われた。だから、明日はシルバーにしてきますって宣言してきた。」

「おおらかな会社だね。」

「仕事が出来れば、外見なんて関係ねぇんだって。」

 昨日と同様に、さくやは白衣に着替えて、あたしは取扱説明書で上手く染めるコツを見ながら準備した。

「では、いきます。」

「お願いします。」

 さくやの金髪がみるみる黒っぽい色に染まっていく。昨日同様ツンとした臭いに苦戦しながら、隅々まで染めて、頭にラップをかけて包み込んだ。

 キッチンタイマーをかけ、しばらく様子を見る。

「上手く染まるかな?」

「大丈夫じゃね?お前、髪染めるの上手いし。」

 たった一回成功しただけなのにそう言ってくれたさくやの言葉が嬉しくて、だからこそ失敗させたくなくて、何度もラップの間から髪色をチェックする。キッチンタイマーが鳴った頃には、あたしも自信を持って大丈夫と言える状態だった。

 さくやがシャワーでヘアカラーを落としている時はドキドキした。どうか上手く染まってますように。

 シャワーから上がってきたさくやを見て、その息が止まるくらいの格好良さに、改めて惚れ直した。

 ドライヤーをかけながら、全身鏡を見て「いいんじゃね?」と、さくやはご満悦だった。

「オオカミみたいだね。格好良いよ。」

 シルバーと言っても、見る角度によっては、グリーンっぽく見えたり、ゴールドっぽく見えたり、不思議な髪色になっていた。

「気に入った。サンキューな。」

「どういたしまして。」

 さくやがますます格好良くなって、ますますモテたらどうしよう。

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