2002年6月 SIDE TOOKO
お荷物を全部運び終えて、レンタカーを返してさくやの車で新しい家に着いたのは夕方過ぎになってからだった。今日が土曜日で良かった。明日一日休んでいられる。
「ラーメン、食べに行く?」
「おう。」
さくやが一番疲れただろうから、さくやの一番好きなメニューを提案した。この家の近くに、美味しいと評判のラーメン屋さんがあるから。
今日はさすがに疲れた。ラーメン食べてお風呂に入ったら、お布団だけ出して寝よう。
「お前って行動力あんのな。」
「そうかな。」
「これで、俺が帰って来なかったらどうするつもりだった?」
「それでも良いって思ったの。」
そんな事、何回も考えた。それでもいいって思った。さくやに必要なのは「帰って来られる場所」だと思ったから。何日も帰って来なくても、帰って来られる場所さえあったら気持ちだけでも違うんじゃないかなって思ったんだから。
「変なヤツ。」
「よく言われる。」
駐車場はまだ借りてなかったから、近くの駐車出来るところに車を停めて、新しい家に向かう途中で合鍵をさくやに渡す。
「これで、いつでも帰って来てね。」
「お。ヨーキーだ。」
さくやの関心はキーホルダーの方に行ってしまったけれど、それで良かった。
「さくやの鍵で開けてよ。」
それは、おまじないみたいなもの。さくやの鍵で開けたら、また、その鍵は使ってもらえるんじゃないかって。
新しい家は、新築でもなんでもないのに新しい香りがした。
ここで、さくやとの生活が始まる。
さくやが何日この家に帰って来てくれるかは判らないけれど、さくやにとっても、ここは「家」なんだ。いつ帰って来ても心地の良い空間であるようにしておこう。
さくやがいつでも帰ってきたいと思えるように。




