2002年5月 SIDE TOOKO
初めて抱かれた夜、さくやがこんなに情熱的だとは思ってもみなかった。
車の中という限られた空間で、あたしはお互いの身体が融けてどっちの身体か判らなくなるような気がした。
「お前が、愛おしいよ。」
耳元で囁かれた言葉が、頭の中に残ってる。
車の中で、少しボリュームを落とした音楽を聴きながら、さくやもあたしも黙っていた。
さくやの左手だけがあたしの右手の上に乗っている。
「俺の勝手かもしれないけど、お前、もう他のタチには付いて行くな。」
さくやが、このあたしに嫉妬した?ビックリしてさくやの方を向くとブルーのライトに照らされたさくやの顔は怒ってるように見えた。
「判ってる。俺の勝手だ。だからお前は守らなくていい。けど……。」
「ごめんなさい。もう、しない。」
さくやの言葉が最後まで言い終わるより先に、謝った。
「さくやのいない世界で、生きていこうとしたの。だから馬鹿な事したけど、今はさくやがいるから。もう絶対にしない。」
繋いでいる手が、強くなる。
「俺さ、ずっと思っていたんだ。お前が他のタチに盗られたら、そいつぶん殴りに行きかねないって。」
「それって、嫉妬してくれてるの?」
「判んねぇけど、多分、そうなんだろうな。」
「とーこなんかにも、嫉妬するの?」
すると、繋いでいた手をぐっと引っ張られて体勢を崩したところを抱き締められた。
「とーこなんか、じゃないだろ。」
「だって……。」
「とーこだから、だろ。」
さくやは、ズルい。言って欲しい言葉を言ってくれる。しかも今は酔っぱらってない。本心からだって思ってしまう。
しばらく不自然な体勢で抱き合って、キスをして離れた。
「とーこは、さくやの心の中に、少しはいるんだね。」
さくやはタバコに火をつけながら「当たり前だろ。」そう言って煙を吐いた。




