2002年4月 SIDE TOOKO
あたしが面倒くさいことを言えば、さくやはきっとあたしを嫌いになる。
面倒くさいオンナだからと、二度と逢いたくなくなる。
その思惑は当たった。だから、ホッとした。
本当に、本当に大好きなさくやだから、あたしの事なんかで面倒な思いをさせるのは嫌だったから。
終始不機嫌そうなさくやがお店を出てから、あたしも斗亜さんといつきさんにお礼を言って直ぐにお店を出た。
もう、二度とさくやとは逢えない。なら、もう泣いても良いのかもしれない。
久々に外でタバコをつけて一口吸って息を吐く。
その瞬間、あのタバコの香りのするキスを思い出した。
唇を指で触ってみる。
不意に、涙がこぼれた。
あの強引な抱擁は遊びだったって、思うのが嫌だった。
あの甘い言葉が酔った勢いだって、判りたくなかった。
でも、もう知ってしまった。
だから、泣いていいんだ。
その場に立ち止まったら、胸が苦しかった。
息が、上手くできない。涙が次から次に出てきて止まらない。
あたしは、街中で立ち尽くしてしばらく泣いていた。
本当に大好きだった。
出逢ってからさくやに逢った日数なんてほんの数日。
そんなの、どうでもいい。
本当に大好きだった。
あの、誰も信じないと書いてある顔も、鋭い眼光を秘めた瞳も、細いけどしっかりした肩も、抱き締めてくれた腕も、握ってくれた手も、甘くてハスキーな声も、柔らかい唇も、全部全部。
さくやはもういない。
あたしは、これからどうやって生きていったらいいのか途方に暮れる。
大げさかもしれないけれど、さくやはあたしの人生の全てだった。
さくやから、電話もメールも来ない。さくやと逢うこともない。
どう生きていけばいいのだろう。
涙が、止まらなかった。




